クリスマス 4年目 《12月24日深夜~25日朝》
『……ん?またここか。』
無駄に広い部屋。冷えたコンクリの床。周囲三方を鉄格子が囲う。
見慣れた、いつもの場所だった。
『なら夢か。』
それにしては、いつもより意識がハッキリしている。視界がとても明瞭だ。
『……あれ?』
そういえば、いつもより目線が高い。見える景色の角度が違う。
慌てて自身の体を見れば、俺は俺だった。いつもの服を着た、俺の身体だった。
しかも、俺はその場に立っていた。手足に枷は無いし、鎖に繋がれている事もない。
『……どういう、事だ?』
一体、何が起こっている?
(ねぇ。)
突如声が聞こえ、俺はバッ!とそちらを振り向く。
声はすぐ隣からだった。
背丈は小学生低学年くらいの小さな少年。白髪の髪に青白い肌。辛うじて身に付けてある、ボロボロの薄汚れた服。そこから伸びる手足には案の定、枷と鎖が絡み付いている。
(メリー、クリスマス……。……どう、ぞ。)
少年が俺に差し出す手には、とても小さなクリスマスプレゼントが乗っている。
『お、おう。……どうも。』
俺は少年から、その小さなプレゼントを受け取った。
青いラッピングに赤いリボン。俺の手のひらに収まるサイズだ。
(……♪)
少年は、俺にプレゼントを受け取ってもらえた事が嬉しかったらしく、満足そうに笑む。――いや、顔は前髪に隠れて見えないのだが……なぜか、嬉しそうに笑っている事は分かる。
――と。
『……あっ。』
突如、世界に風が吹く。砂嵐が背景を掻き消そうと荒れ狂う。
この場所に、窓なんて無い。風が吹くわけがない。
だが、ここは夢の中だ。何が起こっても不思議はない。
現に今、砂嵐が俺と少年の間を引き裂こうとしている。
『……ありがとな。』
轟音の中、俺の呟いた言葉は届いただろうか?
ほとんど何も見えない視界の中で、少年が微かに頷いた様な気がした。
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「……夢か。……夢だな。」
朝日の差し込む中、俺は目を開けた。
見慣れた天井。明るい日差し。
大きな窓の外は、相変わらずの雪世界。
「ん?」
ベッドから体を起こした俺はふと、手に何かの感触がある事に気付いた。
固く、角のある感触。形は箱のような立方体。
正体を確認するべく、それを見た俺は驚いた。それはあの、夢で見た少年からのプレゼントだった。
「なんでだ?」
疑問に思いつつも俺は、青い包装紙を丁寧に剥がす。
現れたのは灰色の箱。蓋を開ければ、中で何かが煌めいている。
スッとぼやける意識。思考に霞がかかる。
綿毛のようにフワフワとした“ソレ”。
色は赤。だが以前の『赤』とは違う、煌びやかな『赤』。
自然、俺は箱の中で煌めく“ソレ”に手を伸ばす。
……以前にも感じた、とても懐かしい感覚。
摘まむようにそっと、俺は優しく“ソレ”に触れる。
“ソレ”は俺の指の腹を撫で、そして溶けるようにふっと消えた。
……?
「空っぽじゃねーか。」
灰色の箱を開けた俺は首を捻る。期待して開けた中には、何も入っていなかった。
「まー、夢だもんな。」
俺はその箱を、乱雑に放り投げた。




