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国家認定PMCヴァルハラ  作者: 神代零


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6/10

第六話 「無登録PMC」

 横浜港中央倉庫区域。


 午後十時二十七分。


 銃声が断続的に響いていた。


 コンテナ群の間を、黒い影が高速で移動する。


 ヴァルハラ戦術第一班。


 全員が無駄なく動いていた。


「右クリア!」


「前方階段!」


「熱源反応二!」


 通信が飛び交う。


 蓮司は先頭で倉庫内部へ突入した。


 巨大な鉄骨倉庫。


 積み上げられた軍用ケース。


 天井クレーン。


 そして――武装員。


「接敵!」


 敵が発砲。


 火花が散る。


 蓮司は即座に柱陰へ滑り込み、反撃。


 二発。


 一名制圧。


 アヤが側面へ回り込む。


「左制圧完了!」


 その動きは速い。


 だが。


 敵も素人ではなかった。


 ヘルハウンド。


 国際非認可PMC。


 世界各地の紛争地帯で活動する武装企業。


 違法武器。


 非合法契約。


 政府非承認戦争。


 そして国家監査拒否。


 彼らは“自由”だった。


 だから危険だった。


「社長!」


 第二班通信。


「中央倉庫内、爆発物を追加確認!」


「数は!?」


「最低十二!」


 蓮司の目が鋭くなる。


 港を吹き飛ばす気だ。


 この規模なら物流網だけでは済まない。


 日本経済そのものへの攻撃になる。


「起爆装置は」


「遠隔式です!」


「クソッ……」


 その時だった。


 倉庫上層部。


 鉄骨通路に、一人の男が現れる。


 黒い戦術コート。


 長身。


 銀髪。


 異様な静けさを纏っている。


 そして胸元には、黒狼の徽章。


「……見つけたぞ」


 男が笑った。


「国家認定PMCヴァルハラ」


 蓮司が銃口を向ける。


「お前が指揮官か」


「そういう君は」


 男は両手を広げる。


「監視された傭兵の王か?」


 空気が張る。


 ヘルハウンド指揮官。


 その目には明確な嘲笑があった。


「滑稽だな」


「国家に鎖を付けられたPMCとは」


 蓮司は冷静に返す。


「鎖があるから秩序になる」


「違うな」


 男は笑う。


「武力は自由だから価値がある」


「国家監査?」


「報告書?」


「許可制度?」


「くだらん」


 その瞬間。


 周囲の武装員たちが一斉に銃口を向けてくる。


 だが蓮司は動じない。


 むしろ静かだった。


「……だからお前たちは駄目なんだ」


「何?」


「国家監視を拒否した武装集団は、PMCじゃない」


 蓮司の声が低くなる。


「ただの山賊だ」


 空気が凍る。


 敵武装員の目が変わる。


 だが。


 銀髪の男だけは笑っていた。


「面白い」


「なら見せてみろ」


 男は両腕を広げる。


「国家の犬が、自由な武力に勝てるのかを」


 次の瞬間。


 爆発。


 倉庫側面が吹き飛ぶ。


 衝撃波。


 炎。


 崩れる鉄骨。


「社長!」


 アヤが叫ぶ。


「敵増援です!」


 外周から大量の車両音。


 ヘルハウンド本隊。


 完全に包囲されていた。


 その時。


 蓮司のイヤーピースへ、新しい通信。


『こちら内閣国家安全保障会議』


 低い女の声。


『獅堂蓮司』


『本案件を国家危機認定する』


 蓮司の目が細くなる。


『ヴァルハラへ国家特例武装許可を発令』


『港湾区域の制圧権限を委任する』


 つまり。


 国家が正式に。


 PMCへ戦場指揮を委ねた。


 銀髪の男が笑う。


「はは……!」


「ついに国家が民間企業へ戦争を依頼したか!」


 だが蓮司は静かだった。


 そして。


 冷たい声で言う。


「違う」


「国家が秩序を守るために、我々を使っただけだ」


 蓮司は銃を構える。


 その姿はまるで。


 現代に蘇った武士のようだった。

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