魔王様はご乱心中
人間が生まれるよりも早く魔族は生まれた。魔族の中でも魔力量が多く他の魔族とは明らかに違う者が魔族の王、魔王と言われた。
魔王が死んでも新たな魔王が誕生し、
即位する。昔からそれは変わることはなかった。
先代の魔王も例には漏れず変わることはない。だが、新しく即位した魔王は少し変わっていた。
今代の魔王シファルドは今までの魔王達が娶らなかった人間を妃にしたのだ。そもそも魔王の子供が次の魔王になるわけではない。
新たな魔王は勝手に生まれるからそんなことは必要はなかった。
シファルドが娶った妃は聖女と呼ばれる 、魔族とは正反対の光に適する人だったが魔王の熱烈なアタックにより相思相愛になる。
そんな二人の間にルアティナと名付けられた美しい娘が生まれる。
魔族の子供を産んだことによって妃は
亡くなったが、母の代わりに魔王は娘を可愛がった。
魔王の容姿は長い艶のある黒髪に白磁の肌、ルビーのような双眸と彫刻で作られたような美しい顔立ちと肉体。
神に愛された容姿を持つシファルドにルアティナは瓜二つだった。
シファルドは娘をこれでもかという程
溺愛した。前の残酷な姿を知っている
忠臣たちはかなり引いていたが。
聖女の故郷、妻の生まれた国にルアティナを送る時のシファルドの泣きっ面は魔王の威厳のへったくれもなかったのは言うまでもない。
魔法でルアティナを穴が空くぐらい見ていたある日、事件は起きた。
「お、俺の可愛いルアティナが!」
「今度はなんです?」
呆れた目で魔王を見てるのはシファルドが生まれたときからの忠臣バアル。
いつも娘が関わると人が変わる主の姿にバアルは慣れてしまった。
もはや死んだ魚の目のバアルの肩を乱暴に揺さぶりシファルドは叫んだ。
「くそ男がぁぁ!」
「私にいってんですか!?」
「あいつぅぅ!」
「だから誰だよ!」
話が噛み合わない魔王に忠臣は思わず叫ぶ。何を言いたいのかさっぱり分からない。
落ち着かせた魔王が語るのはルアティナが嫁いだ先の国がどうもやらかしてくれたらしい。
魔族は元々残酷で残忍な性格をしている。例には漏れずシファルドやバアルも残酷な魔族だ。
「ここは一つ俺がブレスでも撃って・・・」
「あんたがブレス撃ったら焦土になるわ!」
「だめなのか?」
「さては、ルアティナ様に良いとこ見せたいだけじゃ・・・」
「お前はエスパーなのか?!」
「そうだったんかい!!」
頭を抱えたバアルにもう一人の忠臣、
軍団長を務めるアーサーは笑いながら「なんとかなるさ!」と言う。
魔王は口は笑っているのに目がマジである。フフフフと笑う魔王にアーサーもつられて殺る気まんまんだ。
そんな二人を見る宰相のバアルは今度こそ天を仰ぐ。
破滅への道は着々と進んでいた。




