婚約破棄されました
軽くウェーブがかった黒髪に白い肌、ルビーのような双眸を持つ美しい少女は深くため息をついた。
彼女の前に立つのは、二人の男女。
金髪に青い双眸の男は人間にしては整っている方だ。もう一人の女は顔立ちは可愛いらしいが愉悦で目と口を歪めているせいか残念に思う。
「ルアティナ・ナーヴィス!貴様は
このミリーを虐め、侮辱したな!そんな女に王妃は勤まらん!」
「怖かったですぅ!殿下~」
「・・・」
指を指された少女ルアティナは一瞬、
目の前の男女を真顔で見たがすぐ視線を逸らした。
そんな少女の態度に気を良くしたのか
男はそのまま捲し立てていい放つ。
「貴様とは婚約破棄し、ここにいるミリーを私の妃とする!」
「嬉しいです!殿下ぁ!」
「・・・」
感情のない目でルアティナは二人を眺めていたが耐えきれなくなったのか、
口元を抑え震えていた。
彼女らの周りには他に招待された貴族たちが大勢いたが、その内の一人が失神した。
失神したのはこの国の王妃である。そんな王妃を支えた国王も顔を真っ青にしていた。
それに気づかない言い出しっぺの男女二人は抱き合いながらルアティナを睨み付けて言った。
「貴様を家ごと国外追放する!その穢れた姿を二度と私の前に見せるな!」
「その通りだわ!」
これからの楽しい未来に胸を踊らせる二人は気づかない。
二人の周りの人びとの顔が真っ青な事に、ルアティナの赤い双眸が獲物を狙う捕食者のごとく、ぎらついていたことに気づかなかった。
彼女から溢れる殺気に気づいた人びとは王妃のように失神していった。