陽の光の下で [レオン編]
原作小説完結巻(第3巻)発売記念SSです!
小説家になろう=レオン編
カクヨム(蒼月個人)=ビクトル編
カクヨム(公式連載)=シスラン編・ヴェルヘルム編
pixivノベル=アルフェルド編
各サイトで記念SSが更新されていますので、よかったら読んでみてくださいね!(*´∀`*)
今私は城の敷地内にある芝生が生えている庭で敷布を敷き、その上に座っている。そして隣には……。
「セシリア姉様、凄く気持ちのいい天気だね」
そう言って天使のような微笑みを私に向けながら、レオン王子も座っていたのだ。
何故こんなことになっているのかと言うと、ニーナの『天空の乙女』就任と共に城に移り住みようやくここでの生活にも慣れ始めていた私のもとに、レオン王子がやってきて見せたい物があるからと誘われたからだ。
「確かに気温も丁度いいですし、風も心地よくて本当にいい天気ですね」
「うん!」
「それで私に見せたい物ってなんでしょうか?」
「あ、そうだった! あまりにも気持ちがよくて忘れてたよ」
テヘッとした表情で笑い、一緒に持ってきていた木箱を手に取る。私は不思議そうにしながらそれを見つめた。
「それは?」
「ふふ、これはね~」
レオン王子は楽しそうにしながら、木箱を開ける。その中はいくつかの枠で仕切られ、それぞれに手のひらサイズの美しい鉱石が入っていたのだ。
「相変わらず綺麗ですね」
色とりどりの鉱石に目を奪われていると、レオン王子がその中のひとつを取り出した。
「実はこれね、こうして陽に透かすともっと綺麗なんだよ~。ほら見てみて」
レオン王子に鉱石を手渡され、私は言われた通りに陽にかざしてみる。すると色が変わって見えたのだ。
「うわぁ~凄く綺麗です!」
「そうでしょ? だけどこっちのはもっと凄いよ」
そう言ってレオン王子は別の鉱石を手渡してきたので、それを陽にかざしてみた。
「あ、中に別の石が入っていますね!」
「面白いでしょ?」
「はい!」
「ふふ、喜んでもらえてよかった。まだまだいっぱいあるから、ここで寝っ転がって一緒に見ようよ!」
「え?」
「駄目かな?」
「うっ……」
悲しそうな顔でじっと見つめられ、言葉を詰まらせる。私は小さくため息をつくと頷いた。
「いいですよ」
「やったー!」
そうして私達は横になり、鉱石を見ながら楽しい時間を過ごしたのだ。
◆◆◆◆◆
少し肌寒さを感じ目を開けると、薄暗くなり始めた空が見えた。
「えっと……私、何をしていたんだっけ?」
そう呟きながら体を起こそうとして、何か重さを感じる。
「?」
なんとか動ける範囲で体を起こし視線を向けると、レオン王子が私の体に抱きついたまま眠っているのが見えた。
「なっ!?」
私は驚きの声をあげ固まっていると、レオン王子が身動ぎしながら目を覚ましたのだ。そして私の顔を見ると、ふにゃりと笑った。
「セシリア姉様おはよう」
「……っ」
そのあまりにも可愛い姿に、思わずときめき息を詰まらせてしまった。そんな私をレオン王子は不思議そうにしながら首を傾げる。
「セシリア姉様?」
「な、なんでもないです! お、おはようございます」
「変なセシリア姉様」
レオン王子は私を見ながらクスクスと笑い出した。
「……私達あのまま寝てしまったのですね」
「そうみたいだね」
そう言いながらも、レオン王子は私の体から離れる素振りをみせない。
「えっと……レオン王子、そろそろ離れてもらえませんか? これでは起きることができませんので」
「え~どうしようかな?」
「レオン王子?」
「だってセシリア姉様の体、柔らかくて気持ちがいいんだもん。正直離れたくないな~」
レオン王子はそう言うとさらにぎゅうっと抱きしめてきた。これが幼子なら可愛いと言って抱きしめ返していたかもしれないけど、レオン王子はもう十五歳。この世界では成人済みの男の子なのだ。
もしこれを他の人に見られたらまずいことになると気がつき、今さらながらに焦る。
「レ、レオン王子、誰かがくるかもしれませんのでこれ以上は……」
「え~大丈夫だよ。僕達が仲がいいのは皆知っているんだからさ…………むしろ見せつけて婚約が解消されれば……」
途中から顔を俯かせ小声で呟いていたので、何を言っているのか聞こえなかった。だけどなんだかいつものレオン王子とは違う雰囲気に、無意識に体が震える。するとレオン王子がはっとした顔で私の方を見てきた。
「セシリア姉様、もしかして寒いの?」
「え? ええ、そうですね。少し肌寒さを感じていま……くしゅん」
急に寒気を感じくしゃみが出てしまった。
「セシリア姉様!? すぐに離れるよ!」
レオン王子は焦った表情で起き上がる。そしてすぐに私を立たせてくれた。
「風邪をひいたら大変だから、すぐに部屋へ戻ろう!」
そうして私の部屋までレオン王子が送ってくれることに。ただその間もずっと私のことを心配し、体調が悪くなっていないか何度も聞かれたのだ。
「レオン王子、部屋まで送ってくださりありがとうございました」
「この後は体を暖かくして、無理はしないでね」
「はい」
「……セシリア姉様、僕が無茶を言ってごめんね」
レオン王子はしゅんとした顔で謝ってきたので、私はにっこりと笑顔を向ける。
「無茶などとまったく思っていませんよ。むしろ今日は凄く楽しかったです。また今度も誘ってくださいね」
「セシリア姉様……うん! まだまだ僕の鉱石コレクションは一杯あるから、また一緒に見ようね!」
「はい。楽しみにしています」
いつもの元気な表情に戻ったレオン王子にホッとする。そのままレオン王子は帰っていったが、その間何度も振り返って手を振ってきたので、私も笑みを浮かべながら見えなくなるまで手を振り返していたのだった。