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第12話 桜色の小京都ー突ー

実はこの金沢観光の場面は以前の作者の観光旅行が元になったりしてます(笑)


 金沢駅に隣接しているデパートでご飯を食べることにしたのだがこんな平日にも関わらずどの店も1時間待ちの札が立ち並びかなり時間を有してしまった。



 ちなみに総合SNSのMY LIFEでは先ほどの俺たちへの襲撃が話題になっていた。反政府団体の襲撃事件などありふれ過ぎて大した話題性はないのだが、「十六夜の再臨」とか「ペサディージャ復活」とか引退したはずのあの5大魔術師月城十六夜が現れたということが話題性を生んだのだろう。



 まあそれを興奮しながら見せてきた鈴星だったが俺と中西にとっては自分たちが怯えて道に這いつくばっている映像を見せられただけなのであまりいい気はしなかった。






 それとは別に、ご飯を食べながら話し合い、先にチェックポイントさえ行けばもう行く必要はなくなるであろう東茶屋街に行くことを再確認した。金沢城などの市街地からは少し離れているし、後に回すと面倒だろうという判断だった。



「あー!ご飯美味しかったねー秋月くん!」



 こいつには中西と梅園が見えてないのだろうか。俺はとりあえず適当に返事をすることにした。



「ああ、そうだな。ご飯おかわり無料ってカツ1枚でそんな2杯も3杯も食えねーよって思ったけど意外といけたな」



 適当とは。自分で自分に突っ込みたくなってしまった。悪いのは俺ではなくカツ屋さんだ。あのヒレカツの柔らかさとジューシーさはやばかった。それにあのタレがなんともご飯の進むこと進むことと言った感じで、とにかく美味かった。



 しばらくカツの話題が続いたあと俺たちは再びヒントとにらめっこを再開した。



「とりあえず今から行くヒント3だけど、東茶屋街は確定として、神の土地ってのは茶屋街内の神社確定ってことでいいの?」



 やはり梅園はキレものだ。しかし先を見通して考えることができている。たしか俺と特別試験の班も同じだったな。仲間なら頼りになったんだろうが、あいにく俺は人狼だ。



「ああ。宇多須神社のことで間違いないだろう。あそこは県内でも有名な神社らしいし」



「うん。そうだね。それでそこにチェックポイントがなかったら周辺の神社回るって感じでいいの?」



「いやもしかしたら作戦をチェンジしてもう一度ヒントを見つめ直した方がいいかもしれない。あそこより有名な神社はあの辺にない。」



 そうこのゲームのミソはあくまでも観光であるということなのだ。ある程度地名がある所にしかチェックポイントはない。例えば住宅街にひっそりあるその地の人しか知らない神社などは対象外なのだ。



 よってこの場合も、東茶屋街の近くに他に神社がないかと言われればたくさんあるのだがいづれも観光名所というよりは社があるだけみたいな所なので今回はそこにチェックポイントがある可能性を考える必要はない。



 だがそれはいらぬ心配だった。宇多須神社の境内には小さなテストが設置されており、そこはヒント3のチェックポイントだった。



 2度ものタイムロスからの俺たちの巻き返しは、怖いほどに順調だった。



 スタンプを押してもらった俺たちは宇多須神社を参拝したのちバスにのって21世紀美術館を目指した。



 本来の予定ならばここで少しお茶でもしようと話していたんだが予想以上に昼飯が混んでいたため割愛されてしまった。



 バスから見える茶屋街と浅野川と桜。散り始める桜の花が清流浅野川に落ち、それは太陽の光にさらされながら流れ続ける。俺があと400年早く生まれていたらここで一句と言いたくなっていたことだろう。



 そして2時15分。透明な近代的な建物を中心として芝生広場や遊具のような大型展示物に溢れる21世紀美術館に到着した。



「わー!ヒントの水中ってこれのことだったんだねー」



 お茶割愛の一件以来少し不貞腐れていた鈴星がここで復活した。



 逆にバスの中でもずっとうるさかった中西がここで溢れんばかりの人混みを見てトラウマが復活。少しおとなしくなっていた。最もそれは俺にも当てはまる話だが。



「そーいやこんなのテレビで見たわ〜、忘れてたー」



 中西の声もやはりいつもより覇気がない。



ヒントの水中とは21世紀美術館の大型展示物「レアンドロ・エルリッヒ作のスイミングプール」のことだったようだ。



 これは地上と地下の2面からプールを見ることができ、地上からはまるで地下の人がプールの中で自在に動いているように見えるというものだ。



 まあタネは簡単で、ただ地下層、ガラス、水、地上となってプールの中に空間をつくっているだけなのだが、発想の勝利と言ったところか。



「なあ、チェックポイントも済んだことだし早くバス乗ってどっか行こうぜ。時間もあと2時間30しかないし」



「秋月くん。あなたやっぱりなかなかのアホね。あと2つのヒントの場所が分からない時点で動きようがないじゃないじゃない。」



「んーー、まあそうなんだけどお、、」



 この梅園って人は親しくなった人に対してはかなり毒舌になりそうだな。怖い怖い。



 さすがに人混みが怖いなんて言えなかった。あの後ろから殺される恐怖。いつ向けられるかも分からない魔法。俺はもう開放的なこの美術館そのものが嫌だった。



 今いる場所は美術館の外周にぐるっと作られている芝生広場。こんなとこその気になれば端から端まで即死級の魔法を打ち込むこともできる。とにかく俺は、、、怖かった。。



 俺の目には梅園がまるで恐怖の権化のように移ってしまった。彼女の意見が間違っていないことくらい頭では理解しているが、心がそうささてくれなかった。



 気まずさが4人に漂う中、鈴星が意見を言い始めた。それも中西以上のでかい声で



「でもさ!秋月くんたちの気持ちも分かるし一旦金沢城に行かない?歩きながら相談もできるし運が良ければチェックポイントも見つかりそうだしさ!」



「え、カノン。。ナイスアイデアじゃん!!」



 その瞬間俺の目には梅園が素直な天使に移った。真に褒めるべきは鈴星なのであろうがどうも俺はこの鈴星花音という人間が苦手で梅園への評価に移ってしまった。



 俺たちは21世紀美術館から徒歩5分の金沢城へと移動した。金沢城の面積は総面積30ヘクタールに及び、かなり巨大だ。しらみつぶしにチェックポイントを探していてはタイムアップになってしまうだろう



 さらに金沢城にチェックポイントがない可能性もあるし、あったとしても残す1つのチェックポイントは最低でもそれ以外の場所にあるのだから、それを探す時間も確保するとなるとやはりヒントの読解が必要だ。



 残るヒントは「主人公がいた場所」。そして「古都を見下ろす400年の森」。



 時計の針は午後3時を指している。はたして俺たちは残る2つのチェックポイントを見つけ出すことができるのだろうか。



 言ってしまえば厳しい。だが、厳しければやめるのか。否、それは違う。やめることは可能性を0にする行為だが続ける限りは決して0にはならないのだ。



 間に合うとは言い切れない。今日という日が丸ごと無駄になるかもしれない。それでも俺たちは引き返すわけにはいかない。



残り2時間。俺たちは全力で桜咲く金沢に挑み続ける。

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