クリスマスケーキを食べましょう♪
パウンドケーキを切り分け、お茶をカップに注ぐ。
カップから紅茶のいいにおいが広がる。
フォークで切り分けながら、パウンドケーキを口に入れる先輩を見守る……。
「うん、おいしいよ」
良かった~。
安心して私も食べ始める。良かった~、美味しいよ。由希ちゃん、ありがとう!!
ふと、目に入ったクリスマスツリー。どうして先輩は、話題をはぐらかしちゃったんだろう。
再び聞いていいものか逡巡する。
「理沙。俺からのクリスマスプレゼント」
声を掛けられ、先輩の方へ向き直す。
先輩がそっと手渡してくれたのは、ちいさな細長い箱。ワインレッドの包装紙に小さな金色の花飾りが付いている。
「開けてもいいですか?」
返事の代わりに先輩が少しはにかみながら、にこっと笑った。
開けると中には、銀色のペンダントが入っていた。ペンダントトップには4色の小さな石が付いたクローバーの形。
とっても可愛い!!
手に持った箱から先輩がペンダントを取り上げて、後ろに回る。
「着けてあげるよ」
きゃあー!!
何だか照れちゃうけど、嬉しい!! 感激!!
首の後ろの先輩の手を意識しちゃって、なんだかくすぐったいです。
先輩の腕が肩から前に回されて、抱きしめられる。
首に落とされたキスがくすぐったい……。
そして、自然に唇と唇が重なった――。
なんだか先輩、いつもに増して積極的ですね。
雑誌の特集の通り、『手作りケーキでラブラブクリスマス作戦』は、大成功のようです。
そっとカーペットの上に押し倒されて、思い出しました!!
「先輩!! ダメです!! 今日の私、しょっぱいですからっ!!」
私の叫びに、先輩は目を丸くして、フリーズ。
そして、玄関のベルが、ピーンポーンと鳴った。
お客さんのようですね。
「おーい!! 涼!! いるんだろぉ?」
と、玄関から当麻先輩の声?
『約束していたんですか?』という意味を込めて、先輩を見詰めると、先輩は、ふるふると首を横に振った。
ぎゅうっと、もう一度強く抱きしめられて、軽くチュッと口づけを落とすと、身体を起こされた。
「玄関出てくるから」
言い残して、玄関に先輩が行っているうちに、乱れた服装を直す。
ああ、びっくりした。
先輩が戻ってきた時には、当麻先輩と吉備先輩が一緒だった。
「涼、邪魔して悪いね」
当麻先輩は、ニヤニヤ笑いをしながら、先輩にチキンバケツとシャンパン風ジュースの瓶を手渡す。
「先輩、こんにちは~」
と、立ちあがって挨拶をする。
わっ!! 吉備先輩の私服姿、初めて見たけど大人っぽい!!
「吉田、ごめんね」
吉備先輩も謝ってくれるけど、えっと、今日は準備がアレなので、むしろ助かりました!!
「一緒にクリスマス会しよう!!」
ポケットからクラッカーを取り出し、配り始める当麻先輩。
残念だけど、この後バイトがあるんです。
「藤波先輩、そろそろ……」
時計を見て、バイトにはまだ少し早いけれど、このままいたら帰りそびれそうなので、お暇を切り出す。
本当は、一緒にクリスマスパーティしたいけど……。
「あっれー? 理沙ちゃん、まだ涼のこと『先輩』呼びなの?」
「バカッ、慎はだまってろ!!」
吉備先輩が咄嗟に当麻先輩の口を押さえる。
そっか……。
ずっと先輩って呼んでたからなぁ。
今さらどう呼んでも恥ずかしい気がする。
「玄関まで送るよ」
先輩の手がそっと肩に乗せられた。
カバンとコートを持って、立ち上がった。
「この後、バイトがありまして。お先にすみません」
「え~、理沙ちゃん帰っちゃうの?」
「吉田、またねー!!」
先輩たちに挨拶を交わして、玄関に通じる廊下に出る。
「邪魔が入ってごめんね」
先輩の言葉に、さっきまでの状況を思い出して、頬が熱くなる。
「バイト……行ってきます。りょ、涼……先輩」
言いなれない言葉にどもってしまう。結局『先輩』は付けてしまったのだが、なんとか名前が言えた!!
クスっと忍び笑いを漏らして、先輩の腕が身体に回る。
「無理しなくても、いいよ」
いえ!!
大丈夫です!!
これからは『涼先輩』で、そのうち『涼くん』って呼べたらいいな♪
先輩に見送られて、バイトへと向かった。
その途中、気付いてしまった!!
「あー!! 優駿くんてば、私より先に『涼先輩』って呼んでた!!」
悔しーい。負けたぁ。
その後、久しぶりにバイト先に食事に現れた優駿くんには、少し冷たい態度を取ってしまった。
公私混同してごめんっ!!




