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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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プロポーズされちゃった♪

今回は涼目線のお話です。

「うーーん」


夜、仕事から帰ってきた真梨姉が、居間のソファーに座って、手帳を難しい顔で睨んでいる……と思ったら、次は手元を眺めては、ニマニマと顔が弛む。

視線の先には、いつもと違うリングが光っていた。


涼は、瞬と並んでテレビを観ながら、真梨姉の百面相を目の端に窺っていた。


「ご飯出来たよーー」


母の声に涼は、立ち上がって配膳の手伝いをする。



父と母、兄弟3人にお祖父さんとお祖母さんの7人で、食卓テーブルを囲む。

理沙が来ている夕方は、みんな勤めに出掛けているので閑散としたこの家も、夜には賑やかにみんなが揃っていた。


「涼……理沙ちゃんのトレーニングは、進んでる?」


肉じゃがをつつきながら、真梨姉が話を切り出した。


来た!!


「……まだ。基礎的なものだけ、だけど。今は学校もあるし、卒業後デビューのつもりでトレーニングしてるよ」


真梨姉の質問の真意を探りながら、答える。


「なんじゃ、真梨子。何かあるのか?」


お祖父さんが、水を向ける。


「うん……」


真梨姉は、箸を置いて両手を揃えた膝に載せた。


「えっと、ねぇ……」


真梨姉が、何やらモジモジしている。何でもズバズバものを言う真梨姉にしては、珍しい。


暫くモジモジしたあと、下を向いたままポツリと言った。


「今日、潤さん……篠原さんに……プロポーズされちゃった」


「ほう!!」と、お祖父さん。

「……」絶句する、父。

「まあ……」何となく予感していたような母。

「え?」聞き返す、兄。

成り行きをニコニコと見守るお祖母さん。


「……で?」先を促す、俺。


姉のプロポーズが、理沙のトレーニングの出来とどう関係があるのか……薄々勘づいてはいるものの、はっきり聞いておきたい。


「プロポーズ、お受けしました」


照れながらも、幸せそうな姉の顔……。


それは、いいんだけど。


「あやつも、とうとう覚悟を決めたか!」と、お祖父さんがカッカッカと笑い声をあげる。


当時高校生だった真梨姉は、ショーデビューした時に前からスタッフでいた篠原さんに、色々お世話になったそうだ。

その時に、10歳も年上の篠原さんにベタ惚れして、猛アタックの末にお付き合いするまでに漕ぎ着けた。

その猛攻撃と言ったら、篠原さんが気の毒に思うほどだったから、家族全員が知らない訳はない。


お付き合いを始める時に、会長であるお祖父さんと、レストランの経営者である父に挨拶に来ていた篠原さんを見て、家族全員が「こちらこそ、こんな真梨子をよろしく」と、反対に頭を下げた程だ。


だから、プロポーズの話を聞いても、『篠原さん、とうとう捕まっちゃったんだね』という感想しかない。

いや、祝福する気持ちはあるんだけどね。


「両家の顔合わせとか、結納とか……これからすることは色々あるんだけど。式とかも、あんまりショーに穴空けられないな〜とは、思うんだけどね〜。新婚旅行をね、近場でいいから行きたいな〜って思ってさ」


……。


「潤さんもメンバーだし、これからも旅行とか行けないでしょ。一生に一度の事だから、ちゃんとやっておきたいのよ」


「いいんじゃないか?」と、父。

「ゴールデンウィークは駄目だぞ」とお祖父さん。

結婚の話に目を輝かせる母とお祖母さん。


「となると、篠原さんの代役は他の人に任せるとしても、真梨姉のくの一役が居なくなるわけか……」と兄。


レストランスタッフは女性が多いが、ショーメンバーには、女性は現在姉ひとり。

くの一の出るショーは、華があり人気の演目なので、姉はほぼ毎日ショーに出ている。


「涼が瞬と、私が出なくていい演目をやってくれるなら、それでもいいんだけど……」


真梨姉が、チラリとこちらに視線を送ってくる。


「新婚旅行の間だけ!! 理沙ちゃんに代役お願い出来ないかなぁ〜?」


「……来年は理沙も受験で忙しくなるだろうから、無理だね」


「ほう。理沙ちゃんは、受験するのか」と、お祖父さん。


「そうだよねぇ〜」真梨姉は、目に見えてガックリする。


それも鑑みて、さっき手帳を睨んでいたのか。


「式はともかく、旅行は再来年じゃダメなのか?」と、父が助け船を出す。


「……潤さんと相談してみる」


「よし! 3月の海外公演、篠原と行ってこい!!」と、お祖父さんが膝を叩いて言う。


「涼、理沙ちゃんを3月にショーに出せるよう仕上げてこい」


「え! 3月って、今年の?」


お祖父さん……全く言い出したら聞かないんだから。

それまでのトレーニングが大変なのに……。


「あと5か月しかないんですよ。大したアクションが出来るようになるとは思えない」


渋面を作って、言い返す。


「脚本を変えればいいじゃろう? それに、涼が一緒に出てやれば理沙ちゃんも心強かろうて」


……まあ、一緒に舞台に立てるのは楽しみではあるけれどーー。


今頃、修学旅行二日目の夜で、友達とはしゃいでいるであろう理沙を想う。

夕方、男子剣道部部室に戻ってから気付いた理沙からのメール……。


『いつか先輩と一緒に万座毛で、夕陽を眺めたいです』の言葉とともに、バスの中から撮影したらしい、万座毛の崖と海を背景にした、いい笑顔の理沙の写真が添付されていた。



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