汚嫁、お金の管理をすると言い出す
「今日から専業主婦になるから。仕事はもう辞めてきたよ。これからいっぱい稼いできてね」
結婚して初日に言い放った嫁のひとことは、あまりにも衝撃的であった。
片方が家事に専念し、片方が仕事に専念。
たしかに、古くからそういう夫婦の形はある。
だが、それは両者が話し合いをして、同意した場合によって成立する話だ。
今年で28歳になる男――武宮 竜が結婚した30歳の嫁、真由美は夫になんの相談もなく、専業主婦になると宣言したのだ。
「なんの話?」
「会社には、結婚したから仕事辞めるって報告してあるから。引き継ぎも終わっている」
「は?」
「あなたはこれから仕事、がんばってね」
「いやいや、ちょっと待って。そんな話、なにも聞いてないけど」
「暗証番号と、口座。教えて」
「え? なんだって?」
「お金の管理もしてあげる。カードと印鑑も大事に保管しておくから、それもちょうだいね」
はい、と手を伸ばしてくる真由美。
武宮は首を横にふった。
「そんなの、ムリだって。怖いよ」
瞬間、笑みを浮かべていた真由美の表情が変わった。むっとした、怒りの表情へ変わったのだ。
「どうして!? ひどい。私のお金だけで、これから生活しようっていうの? お金目当てで私に近づいたんだ!」
「いや、違うよ。お金のことは、共有の口座を作るって、そう約束したじゃないか。というか、なんで相談もなしに仕事辞めちゃったの。そんな大事なこと、言ってくれないと」
「今、相談したじゃない。専業主婦になるって、あなたにちゃんと報告した。それなのに、そんなに怒って否定して。家のことも収入のことも私1人でやらせようとしてる。そういう人だなんて、知らなかった!」
見たこともない真由美のヒステリック、かつ話の全く通じない様子に、武宮は混乱してしまった。
話し合いはなにも進まない。「専業主婦になる」「お金の管理は私がやる」なにを言ってもこの意見を曲げようとはしなかった。
やがて真由美は、大きなため息をついた。
「わかった。じゃあ、1か月だけ考える時間を与えてあげる。その間に私達の将来のことを、ちゃんと向き合って、考えてよね」
なにを言っているのかずっと理解できなかったが、とりあえず話を終わらせたくて、わかった、と武宮は返事をしてしまった。
その日はずっと、頭の中が真っ白になった。
真由美とは、結婚相談所で出会った。
年上だが綺麗な容姿で、スレンダー美女だ。仕事もかなり出来るらしく、高所得者である。
武宮の一目惚れで、マッチングから猛アタックし、交際して5か月で結婚。
しかし初日から、これである。
色々考えをめぐらせても、急に稼ぎの良い仕事を辞めて、専業主婦になり、お金の管理をする、なんて言い出す理由がわからなかった。というか、わかりたくなかった。
まだ事態を受け止めきれないのだ。
ただ一方で、これはマズイ事態だということも、わかった。
武宮はやり取りを録音、気になることがあれば調べる、といった「万が一のための準備」をするようになったのだ。
しかし事態はより悪化する。
武宮の職場の、一部の女性達がなぜか彼をジロジロとみて、ヒソヒソと噂話をするのだ。
その視線は明らかに、白いものであった。
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今回こそ、今回こそは伸ばしたいのです……(泣)
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