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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第312話 到着アークレイズ

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 馬車に揺られながら数日を費やし、いよいよ馬車はアークレイズに到着した。


 途中で長い洞窟を抜けたり、谷間の道を進んだり、曲がりくねった悪路を進んだりと、なかなか険しい道のりだったけど、無事にたどり着けて本当によかった。


 時刻は昼の少し前ぐらいだろうか。

 太陽は高く昇りきる前で、乾いた風が岩肌を撫でている。


 アークレイズの街は、切り立った岸壁に囲まれた場所にあった。

 自然の岩壁をそのまま城壁のように利用しているのか、遠くから見るとまるで大地の裂け目に作られた要塞みたいだ。


 門の前には武装した男たちが立っていたけど、王国の騎士や普通の衛兵とは雰囲気がまるで違う。

 鎧も武器も統一感がなく、槍を持つ者もいれば、斧を肩に担いでいる者もいる。

 だけど、その目つきだけは鋭かった。


 門を抜けた後、馬車がゆっくりと止まり、僕たちはそこで降ろされた。


「見ない顔だな。目的は?」


 厳つい顔の男が、ドスの利いた声で聞いてきた。

 も、もしかして警戒されている?


 何か言うべきなのか迷っていると、ライトニングさんが一歩前に出た。


「あら? そんなことを聞くなんて野暮ね。こういう街に来るのだから、目的なんて決まっているでしょう?」


 凛とした表情で、まるで臆した様子もなく答えるライトニングさん。

 す、凄く堂々としているよ。


 門番の男は一瞬だけライトニングさんを値踏みするように眺め、それから口の端を吊り上げた。


「――へっ、確かにそのとおりだな。ここはアークレイズ。何をしようと文句は言わねぇ。だが、何が起きようと自己責任。それがわかってるなら先に進みな」


 門番が意味深な笑みを浮かべ、僕たちを通してくれた。


「ねぇママ。目的を聞かれたのに、あれで良かったの?」


 街の中に入ってから、エクレアが小声で聞いた。


「むしろあれで良かったのよ。あの場で素直に目的なんて答えたら、カモにされるだけだから」


 髪を掻き上げながら、ライトニングさんが答えた。


「素直に答えたら駄目なんだ……」

「スピィ……」


 まさかそんな引っ掛けがあるなんてね。

 スイムも驚いたように僕の肩の上で震えている。


「ネロ。何度も言うが、お前は特に気をつけろよ」

「わ、わかってるよ」

「スピッ!」


 僕が答えると、スイムが小さく鳴き、キョロキョロと周囲を見回し始めた。

 もしかして警戒してくれているのかな。


 街の中は、想像していた以上に活気があった。


 路地の両側には露店が並び、肉を焼く匂いや香辛料の匂い、油の焦げる匂いが混ざり合って漂っている。

 武器を並べている店もあれば、怪しげな薬瓶を売っている店もある。

 顔に傷のある男が笑いながら酒瓶を掲げ、その隣では派手な服を着た女が客引きをしていた。


 だけど、その活気の奥にはどこか危ない空気もある。

 誰もが周囲を探るような目をしていて、楽しげに笑っている人ですら、腰の短剣から手を離していない。


 無法街アークレイズ。

 ここは確かに、普通の街とは違うんだ。


「そういえば、ライカさんたちはどこかに行ってしまったんだね」

「当たり前だろうが! 目的も違うのに揃って動くわけがない。お前のそういうところだぞ」

「ま、まぁそうなんだけどね」


 ガイの言っていることは至極当然だ。

 でも、助けてもらったこともあるし、もっとちゃんとお礼を言っておけばよかったかな。


「おっと、ゴメンよ」


 そんなことを考えていた時、すれ違った通行人の肩と僕の肩が軽く当たった。

 そのまま通行人は何事もなかったかのように進んでいく。


「な、なんだ足が!」


 直後、その男が悲鳴を上げた。

 見ると、男の足元が白く凍りついている。


「お前、凍すぞ」

「ひっ、な、何だよ一体!」

「アイスがやったの!?」


 驚いて駆け寄ると、アイスが通行人の懐から革袋を取り出した。


「これをすられたぞ」

「あ! 僕の!」


 それは僕が腰につけていた革袋だった。

 まさか、あんな軽く肩が当たっただけで盗まれるなんて。


「クソが! 上手くいったと思ったのによ!」

「ほう。最期に言い残す言葉はそれでいいのだな?」

「ひぅ――」


 ウィン姉の剣先が、男の首筋にぴたりと添えられる。

 表情が怖い!

 スリの男も完全に腰が抜けているよ!


「ウィン姉! 袋は戻ってきたんだし、ほ、ほら、後は衛兵に任せて――」

「それは意味がないわね」


 ライトニングさんが穏やかな口調で言った。


「門番が言っていたでしょう? 何があっても自己責任だって。だから――」


 ライトニングさんが蛇腹剣を軽く振る。

 紫電が一瞬だけ走ったと思った次の瞬間、スリの男の服が細切れになり、苺模様のパンツ一丁という姿になった。


「貴方も、何をされても文句は言えないわよね?」

「ご、ごめんなさぁあああぁあああい!」


 スリの男はパンツ一丁のまま、情けない悲鳴を上げて逃げ出してしまった。


「いやだもう、ママったら!」


 エクレアが両目を塞ぎ、真っ赤になっていた。

 パンツ一丁にされた姿を見て恥ずかしくなったんだろうね。


「ほらネロ。これはもうスイムの中に入れとけ!」

「あ、うん。そうだね」


 ガイに押し付けられた革袋を、スイムに収納してもらう。


「それにしても、街に入ってすぐこれかよ」

「本当、油断できない街ね」

「ケトルも気をつけるの」

「勿論です」


 ザックスとマキアが呆れたように呟き、ネイトの言葉にケトルが静かに頷いた。


 確かに僕も、もっと注意しないといけない。

 アークレイズに着いたから一安心、なんて考えは甘かった。


 ここは、何でも起きる街。

 そして何が起きても、自分でどうにかしなければならない街なんだ――。

本作のコミカライズ版最新第14話がコミックノヴァにて公開中です!

どうぞ宜しくお願い致します!

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