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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第307話 ブラックワーウルフと戦う

「しゃあないな。うちらも手伝うで」


 僕たちが馬車を降りると、ライカさんと屈強な男二人も続いて降りてきた。


「この二人も腕っぷしには自信がある言うとる」

「ああ。今は足を洗ってるが、昔は海賊船で暴れ回ってたんでな」

「俺は傭兵だ。戦場じゃ何人もの首を落としてきた」


 どちらも強面で、その経歴も物騒そのものだ。元海賊に元傭兵――いかにもこの馬車に乗っているだけのことはある。


 だけど今は頼もしい戦力だ。


「助かる。だが前衛は足りてる。後ろの支援が欲しい」

「任せとき。うちはこう見えて支援魔法が得意なんやで」


 ガイの言葉に、ライカさんはにやりと笑った。


「だったら早速頼む。もう来るぞ!」


 低く唸る声と共に、ブラックワーウルフの気配が一斉に膨れ上がる。


「せやな――支援魔法・肉体強化! ついでに精神強化や!」


 淡い光が僕たちを包み込んだ。


 次の瞬間、全身に力が漲る。


 筋肉が軽くなり、思考が澄み渡る。


「すごい……体が軽い!」

「これならいくらでも戦えそうね」


 足の踏み込みが明らかに違う。呼吸も乱れない。


「うむ――ならば先陣は私が切ろう」


 真っ先に飛び出したのはウィン姉だった。


 その動きは、まるで風そのもの。


「魔法風剣・疾風の刃!」


 振るわれた剣から放たれた風の刃が、三匹のブラックワーウルフを同時に切り裂く。


 ――速い。


 だけど、仲間が斬り裂かれると、周囲のブラックワーウルフが次の瞬間には霧のように散り、消えた。


「消えた……!」

「これが闇に溶け込む能力か……!」


 視界から完全に消える。


 いや――消えたように見えるだけだ。


「チッ、位置が読めねぇ!」


 ガイが舌打ちする。


 その瞬間、横から気配。


――来る!


 だが、それより早く。


「姿を消しても、気配までは消しきれてないわね」


 静かに告げる声。


「武芸・雷蛇(らいじゃ)――」


 ライトニングさんの剣が、しなやかにうねる。


 次の瞬間、剣が分裂し、雷を纏った刃が蛇のように空間を走り抜けた。


 見えないはずの敵が、次々と弾き飛ばされる。


 バチバチと雷が弾け、闇の中から黒い影が叩き出される。


 それはまるで、見えない獲物を正確に狩る雷の蛇だった。


「すごい……これがSランク……!」

「蛇腹剣をあそこまで扱うとか、化け物かよ……」


 ガイが思わず漏らす。


 その間にも、残ったブラックワーウルフが再び闇に溶け込もうとする。


「ママに負けてられないね。ネロ、あの手で行こう!」


 エクレアの声に、僕は頷いた。


「――うん!」


 見えないなら、見えなくても当たる形にすればいい。


「水魔法・放水!」


 杖から大量の水を噴き出し、地面一帯を一気に濡らす。


「おい! 何してる! 水遊びしてる場合じゃねぇぞ!」

「遊びじゃないわよ!」


 元海賊に言い返し即座にエクレアが動いた。


「武芸・雷撃槌(らいげきつい)!」


 振り下ろされた鉄槌に雷が宿る。


 次の瞬間――


 電撃が、水を伝って一気に広がった。


『――――ッ!?』


 空間のあちこちで、見えない何かが痙攣する。


 そして次々と、闇の中からブラックワーウルフが転がり出てきた。


 痺れて動けなくなっている。


「やった!」

「スピィ!」


 スイムも嬉しそうに跳ねる。


 これなら、姿が見えなくても関係ない。


 範囲に入った敵はまとめて制圧できる。


 だが――


 ドンッ!


 背後で鈍い衝撃音。


 振り返ると、ガイが大盾で二匹のブラックワーウルフの突撃を受け止めていた。


「飛びかかってくる奴もいるってことだ! 油断すんな!」


 牙が盾に食い込み、火花が散る。


「守護者の反撃!」


 ガイが力任せに盾を押し出すと、二匹のブラックワーウルフがまとめて吹き飛んだ。


「ありがとう、ガイ!」

「フン。後ろは任せろ。前だけ見てろ」


 その言葉が、背中を支えてくれる。


 安心して前に集中できる。


「氷魔法・絶氷の墓標――」


 低く、冷たい声。


 次の瞬間、空気が凍りついた。


 アイスを中心に、地面ごと凍結が広がる。


 闇に紛れていたブラックワーウルフが、逃げる間もなく氷に閉じ込められた。


「ザックス、さっさと砕け」

「なんで俺が命令されてんだよ……先輩なのに」


 文句を言いながらも、ザックスは迷いなく剣を振るう。


 氷ごとブラックワーウルフを砕き、確実に仕留めていく。


 さらに――


「まだおるで!」


 ライカさんの声と共に、支援魔法が再度重なる。


 体がさらに軽くなる。


 元海賊と傭兵の二人も、無駄のない動きで確実に敵を仕留めていた。


 前衛、支援、連携。


 すべてが噛み合っている。


 そして――


 気が付けば。


 黒い影は、もうほとんど残っていなかった。


「……終わった、のか?」


 周囲を見渡す。


 唸り声はもう聞こえない。


 動く影もない。


 ただ、倒れ伏したブラックワーウルフだけが残されていた。


「みたいだな」


 ガイが息を吐く。


 僕もようやく、握りしめていた杖の力を抜いた――

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