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第2章 その33 その絶望の音色

短くてすいません。



突き、切り裂き、薙ぎ払い。何れも左手に持った剣で払われ、転がされる。身体中土埃や草の汁等に塗れながらも、起ち上り突っ込んでいく。出来れば、魔力が早く回復してくれれば『光の針』《ルミエルナーデル》を牽制に使えるのだが、戦闘中にそれを望むべくもない。

私の中の思考達も既に半分以上、諦めの方へ傾いている。其れ程、限界が近い。エミーも少しずつだが、態勢を整えて剣の握りを確かめている。ボルゾンも私を適当に遇らいながら、エミーを観察している。経験の差を更に実感する。私に対しては本当に片手間なのだ。其れ程の差をどう埋めるのか、別思考達で考える。


『もう諦め乙』『光針打って下がれ』『渾身の突きして乙』『エミーが来るまでに乙』『乙』『飛び込んで回転斬りして乙』『何でこんな事するのか聞いてみる』


状況が酷いだけに諦めばかりが多い。というか、本当に私の思考達なんだろうか?個性が出てきた気がするのだが。右から左へ少し斬り上げる様に牽制してみるが、やはり簡単に打ち払われてしまう。その際に変な違和感を感じるが気にしている暇はなく、とにかく手数を多くして奴に攻撃される隙を与えない様にする。もう少しでエミーが斬り合いに参戦出来る筈。其れ迄身体が保ってくれ。

既に身体は悲鳴を挙げている。エミーとの訓練よりも動かしている。いや、訓練は所詮、訓練。生死を賭けている訳ではない。だが、此れは紛れもなく生死を賭けての戦いだ。

前世で、軍隊に入って基地への侵入者の確保やいざこざ等の対処はした事はあるが、それでも安全マージンは必ずあった。だが、この世界は魔法はあっても未だ発展途上で他人同士の殺し合いが横行している。前世でのニホン皇和国(※1)では、世界一安全な国として有名だった。他を敬い、個を尊重し、非道を許さず備え、弱者の救済を常とし、発展の為の礎を拡げる。紛争があれば、赴いて…多少の武力制圧はあるにしても、両者の間に立ち、和平への話し合いを基礎作る。生きていた時には気付きもしなかったが、どれだけ崇高で難しい事をやってのけていた国だったかが今では痛い程解る。


変に一つの思考で、前世を振り返っていたのが悪かったのか。刃の打ち合いの音に違和感が大きくなった。なんだ?何が起こっている?その疑問を持ちながらも、右に転がされながらも奴の手元に刺突する様に攻撃を仕掛ける。ボルゾンは其れ迄は打ち払ったり受け流したりしていたのだが、まるでこの状況が解っていたかのような極悪な笑みを浮かべて左手に持った剣の腹を右肩に乗せた。まるで袈裟斬りをコンパクトにしたかの様な構えから、剣の束部分で私の槍の刃先を打つ様に。


『ギャキャワァーン』


気付いた時にはもう遅かった。私の槍の刃先は乾いた音を立てて破砕していた。状況は理解出来ているのに、頭の中は『乙』が一斉に並ぶ。ボルゾンの気味が悪いほどの笑みに思考が停止する。ボルゾンは流れる様に左手を腰だめに構え、そのまま剣を突き出してきた。


思わず眼を瞑る。そして『ザシュッ』と刺さる鈍い音が聴こえた。





読んで頂いた方々に感謝を。

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