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第2章 その32 その母と子の想い

サブタイが個人的に違和感が有りますが…まぁ、良いでしょう笑




段々と曇って来て、今にも天の恵みが降り注がんとした空模様。


中回復ミドルヒール』を唱えて半分切れた左腕を繋ぐ。頭がクラッときたので、もう魔力は殆ど無いに等しい。転んで出来た擦過傷も治ってくれたが、血が流れたせいか少し寒気がする。よし、自分は最低ではあるが最悪ではない状態を確認。


エミーはボルゾンにやられた右脇腹に刺さったナイフを抜き、自身に『中回復ミドルヒール』を掛けるが、顔色が思わしく無い。一方のボルゾンは、自身の切られた右腕を拾って元の位置に宛てがうと癒しの光がやんわりと輝き、腕が繋がった。


「腐っても、剣姫かよ。チッ、右腕は直ぐには真面にならねぇか。マジでこの鎧が無かったら…いや其処のガキだ!テメェの能力を見誤ってたのが間違いだったという事か。だが、もう魔力は殆ど無ぇ様だな。先ずはガキから殺らせて貰おうか」


只でさえオーバーレベルの相手に、エミーがいるとはいえ奮戦虚しく…いやいや、諦めてどうする。敵は此奴だけじゃない。オズの方にも六人もいるのだ。どうにかして此奴を倒し、オズの支援に行かなければならない。だが、私の魔力も残り少ないし、血が流れたせいか体力や筋力も落ちている。エミーの方は中回復で回復した筈だが…チラリとエミーを見たが顔色が悪い。状態を詳細解析したら、猛毒、痺れ状態になっていた。


「エミー、テメェはもう動けねぇだろ?さっきのナイフは、獲物を仕留める為の特製の毒を塗ってあったんだ。暫くは痺れてろ。このガキを殺して、テメェの絶望した顔を見ながら可愛がってやるぜ。はぁっはっはっはぁ〜」


エミーがギリギリと歯軋りをしてボルゾンを睨む。いかん、頭がパニックだ。ウエストバックには解毒薬が入っているから、それをエミーに飲ませれば…


『奴が簡単にその状況を許す筈がない』『対抗手段を考えよう』『満身創痍じゃ無理だろ』『先ずは自分に回復薬じゃね』『エミーに中回復が先じゃね?』『そこまで魔力残ってないよな』『いっそ命乞いして諦めよ』


並列思考が別々に考えを示すせいで、余計に頭がクワンクワンと重くなる。

その間にも、ボルゾンは私にゆっくりと近付いて来る。兎にすら油断しない獅子の如く。頭の中の私達、此奴を倒す為に状況整理だ。


『絶対ぇ勝てねぇ乙』『もうちょい足掻いて乙』『レベル差ありすぎ乙』『後退しながら光針を撃つ』『玉砕覚悟で突っ込んで乙』『彼奴の右眼と右腕が回復出来てないので、回り込んで乙』『命乞いして乙』


マトモな意見が少ないな、おい。取り敢えず、イケそうなのは『後退しながら光針を撃って牽制する』って事か。右手で手槍を構え、やや前傾姿勢にしていかにも突っ込む様な感じにしながら、光針を一本撃つ。避ける為にボルゾンは前進を止めた。追撃で二本、光針を撃って後退して距離を取る。


距離が空いたので、エミーの方へ回り込みながら更に二本撃って牽制する。合流されるのを嫌っているのだろう。ボルゾンが光針を剣で薙ぎ払い、私に向かって歩いて来る。くそっ、全然余裕が出来ないじゃないか。いくら光針が使う魔力が少ないとはいえ、後数本も撃てば魔力欠乏で意識を失いかねない。


背中のウエストバックに左手を突っ込み、解毒薬のポーションを取り出す。エミーが受け取ってくれる事を祈りながら放り投げ、もう一度ウエストバックに突っ込んで回復薬を取り出し、栓を開けてポーションを飲む。苦味を感じながら、駄目元でボルゾンに突っ込む。勝てないとは分かってても、時間稼ぎ位はしなければ勝ち筋すら薄い。


先ずは手槍をボルゾンの脚に向けて突き出すが、半身に避けて左手で握っている剣で払おうとしてくる。払われたら、私の態勢が崩れてしまうので素早く突き出した手槍を引いて、払ってきた剣に手槍の刃先を打ち合わせる。膂力の差は如何ともし難く、右手が痺れるが勢いを殺す為に自ら左手に飛ぶ。これで少し距離が取れる。


一撃刃を当てて吹き飛ばされる勢いで距離を取り、また突っ込む。此れを数合繰り返すが、最初以外はもう遇らわれている気が…いや此奴笑ってんじゃん、怖いよ。戦闘狂かよ。


「ガキのくせに、妙に場慣れた動きじゃねぇか。アイツもこれくれぇ、動けんならマトモに鍛えてやるんだがなぁ〜」


アイツと言われても知らん。てか余計な思考を回してたら、こっちがやられる。まだ右手が完全に回復してないから左手で此奴は打ち合っているにも拘らず、遇らわれている状況に近い。なんとか隙を作らなきゃいけないが、もう魔法を使う余力…後一回だけ光針を撃つのが限界だろう。


こんな事になるって分かっていれば、自重せずにスキルや自身のレベル上げをすれば良かった。後悔先に立たずとは正にこの事。


後ろのエミーが解毒薬を飲んで回復し始めているのか、立ち上がろうとしているのが解る。此奴も気付いたのか、エミーに声を掛けて来る。


「おいおい、特製の毒薬だぞ?そこら辺の解毒薬じゃ回復しねぇんだが、な」

「ふっ…アルフがくれたのよ。例え水でも元気になるわよ」


思考の一つをエミーに飛ばして詳細解析する。毒は消えているが、痺れは残っている。それでもよろよろと立ち上がろうとする姿に、私は勇気を貰った気がして先程よりも速く、そして微妙に繰り出す刃先の角度を変えながら此奴を抑える。


親を失うのは寿命だけで充分だ。



誤字脱字等ありましたら、ご報告頂けると幸いです。読んで頂いた方々に感謝を。

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