第2章 その13 その執務室でのやりとり
「…モリー、間違いじゃねーんだな?」
「それぇ〜才能を疑ってるんですかぁ〜」
「…いや、嘘は書けねーか…」
『写記』は、あくまでも写しを記す才能だから誤魔化しは出来ないのだろう。でもエミーは何故、みんなに教えるのだろう?
「信じてくれたみたいだから、グランデ様との事やオズとの取り決めとかも話すわ」
そしてエミーは経緯を語り出した。大半は知ってるから私は確認作業だなぁ。それでもこの世界にたった一人って部分が、貴族などに攫われて奴隷にされる危険もあるのを理解すると、3人は重く受け止めていた。そして…。
「出来るだけ、アルフをま…いえ、陰ながらで構わないからサポートして欲しいのよ。種族も『エルフ』として扱ってくれたらそれで良い。どうしても登録時はバレてしまうから」
む?バレる?登録時は鑑定するって事か。まぁ、そうしなきゃ能力等虚偽ってのが横行しかねないよなぁ。となると確かめるべき?いや、此処で下手に曝す事もないだろう。
「私からも、お願いします。どうか他言しない様にお願いします」
真摯に頭を下げる。エミーも釣られて頭を下げる。3人は互いに見合って、悩んだ顔をして…。
「わーった。じゃあ明日、来たらメルバかモリーを通せ。登録は此処でやる」
「「…ありがとう(御座います)」」
エミーと二人で御礼を言った。とりあえずエミーの信頼出来る人達なのだろうし、他で漏らす事もないだろう。
「しっかし、アルフはエミー似だな。まだ10歳にも満たないのに、これだけレベル上げるたぁ驚きを通り越して呆れるぜ」
「どういう意味よ」
「無茶な事すんのは、エミーの専売特許だろ」
1ハウル(時間)ほど昔話を聞いた。エミーとオズの馴れ初めも、中々面白かった。エミーはずっとソッポを向いていたが。此方としてもやりたい事があるので、そろそろお願いしますか。
「あの〜もうひとつ、お願いがあるんですが」
「アルフ君、何かなぁ〜?」
モリーさんが聞いて来たが、ギルド職員だから問題ないな。
「魔石とか買い取って欲しいのです」
「あーそっか。そうね、森の中で狩った物があったわね」
「コルドさん、宜しいですか?」
「…まぁ、エミーが売却って事にすりゃ高く買い取ってやれるか。出してみろ」
良し、これで売れる。いい加減、溜まってるしお金が欲しかったんだよなぁ、と思いながらモリーさんの拘束を解いて貰いウエストバッグから魔石を取り出す。10個位は笑っていたけど50個を超えたら、3人とも表情が固まった。うーん、100個でやめとくか。その魔石を見てコルドさんが聞いて来た。
「これ、アルフ一人で狩った奴か?」
「ルナマリアと一緒に狩りました」
「ルナマリアって誰だ?」
「ルナマリアは幻獣の子ですよ」
「エミー、どういうこった?」
「家で飼ってるペットよ。偶々ね」
「待て待て。あの森で幻獣つったら、月狼か?」
「流石ギルドマスターになっただけはあるわね。その通りよ」
あれ?其処も驚くところなのか?ルナマリアって希少種なのかな?って母様、買取りして貰おうとしてるのにコルドさんの事、皮肉らないで下さい。
「エミー、月狼が一部の地域じゃ、なんて言われてるのか知ってるよな?」
「神獣でしょ。そんなの当たり前じゃない。だから連れて来てないでしょ」
え?地域によっては神獣扱いなの?母様、聞いてないよ。てか分かってたから、あんなにアッサリとルナマリアを送り出したのか。以前から思うが、所々で言葉足りないんですが母様?
「…ま、まぁ、いい。モリー、メルバ、計算してやれ」
モリーさんとメルバさんで選り分け作業が始まる。幾らになるのかなぁ。
「ゴブリンが88、ゴブリンリーダーが2、ゴブリンマジシャンが10ですか。とすると、ゴブリンが銀貨88枚、リーダーが銀貨18枚、マジシャンが銀貨60枚、占めて銀貨166枚ですね」
メルバさん、計算早いな。とりあえずは、足りるかな?それとも、もうちょっと何か出すか。あ、今朝の分がある。それも出そう。
「これ今朝、襲って来たグラスウルフ達の分もお願いします」
「今朝、襲われただぁ?何処でだ?」
「ここから西へ馬車で半日くらいの休憩所のところよ」
「あ〜、あそこか。偶に出るからなぁ。何匹出た?」
「アルフ、10匹だっけ?」
「17匹だよ。その内、3匹は逃げちゃったけどね」
母様、今朝の事なんだから出てきた頭数くらい憶えておこうよ。会話しながら魔石と牙と爪、毛皮をウエストバッグから取り出す。ん?メルバさんとコルドさんがまた固まった。モリーさんはニコニコと笑顔だ。
「エミー、アルフも魔法鞄持ってるのか?」
「そうね、便利だし。コルドも持ってるでしょ」
メルバさんは、欲しそうに「へーこれが魔法鞄か〜いいな〜」と呟きながらウエストバッグを観察している。あげないからね?コルドさんは呆れて「お前ら幾つ持ってんだよ。一応、希少品なはずなんだが」と小火いている。うん、希少品だよねぇ。産まれて直ぐに3つも持っててすいません。
「いろいろツッコミてぇが…7匹分だけか?」
「オストーの子爵家と分けたから」
エミーの言葉足らずでは長くなりそうだったので、昨日からの話を私が一部抜粋しながら説明した。コルドさんもヴォレシズ子爵の事は知っていた様だ。その間にメルバさんが査定を終える。
「凄く状態も良いですし、捌くのも綺麗ですね。魔石は全部で銀貨17枚、爪や牙は合わせて銀貨180枚、毛皮は銀貨110枚ってところですね。先程の分も合わせて銀貨473枚になります」
結構な金額になったな。これで買い物が捗る。コルドさんがモリーさんに、何か持ってくる様に指示をする。執務室を出たと思ったら直ぐに戻って、手には…囲碁の碁盤の様なしっかりしたものと、お金が入ってそうな袋を持ってきた。テーブルの上に碁盤の様なものを置くと、エミーは慣れているのか直ぐに掌を上にして差し出す。すると『登録カード』が掌から出てきて、モリーさんが確認。碁盤の様なものにエミーのカードの写しが現れて、何やら操作している。まるでパソコンみたいだな。私が興味深そうに見ていると、メルバさんが答えてくれた。
「これは買取用の水晶盤ですよ。これに登録カードを通す事で討伐した魔物などの記録がギルドに蓄積されます。他に登録用の水晶盤もあります。アルフ君は明日使いますからね」
処理が終わったのか、袋からお金を取り出すモリーさん。金貨4枚に銀貨73枚。確かに受け取りウエストバッグに仕舞う。するとコルドさんが注意をしてくれた。
「明日登録後には渡すが、極力貨幣袋に入れる様にしろよ。盗難にも会い辛くなるし、両替も勝手にしてくれる。特に嵩張らないしな。因みに登録料は銀貨一枚だ。これで心置きなく払えるな」
ふむ、登録料なるものがあるのか。まぁ問題ないな。それからメルバさんとモリーさんは片付けをしている間に、コルドさんとエミーの昔話が始まった。今度は和やかで良かったよ。
「んじゃまた明日な」
「コルドもお仕事頑張って」
「うわぁ、気持ちわり〜事言うな!しっしっ」
こうして明日の約束をして、ギルドを出る。モリーさん、また私を抱えているのだが降ろしてくれないだろうか。少しイヤイヤと身体を動かしてやると、名残り惜しそうにしてたが降ろしてくれた。
「エミー姉さん〜、アルフ君くれな〜い?」
「あげないわよ。アンタも早く結婚して子供産んだら?」
「ん〜じゃ〜あ〜、アルフ君と結婚する〜」
「「年齢的に無理だから(ですよ)」」
モリーさんも面白い冗談を言うなぁ。冗談だよね?モリーさんに見送られながら冒険者ギルドを離れる。ちょっと長居し過ぎたから、早く次に行こう。
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