第六話 「お節介」
シチューを食べ終わった四人は二階の寝室に移動していた。
「さて、では作戦会議を始めます!」
部屋に響く未巴琉の号令で、六つあるベッドのうち一つに全員が集まった。たった一人を除いて三人は満腹の状態でベッドに座っている。ミュリエムは洗い物中だ。
「まず、シチューは大変美味しかったです」
先ほどのシチューは千宙を除いて全員完食。雅博に関してはおかわりまでした始末、おかげではち切れそうなお腹を抱えてベッドの上で後ろ手をつき、上体を反らせていなければ苦しい程だ。
しかし千宙は三人の立ち居振る舞いに対して呆れていた。
「三人ともあんなにガツガツしてダメじゃない!」
成未は初対面の人の家で図々しかったかと心配した。だとしたらおかわりまでした雅博は重罪だ。
しかし千宙が言っているのはそういうことではない。もし毒でも入っていたらどうするのだという話をしているのだ。
そう、千宙がお腹を壊しているというのは嘘だったのだ。
「緊張感なさすぎ!」
「えー、だって本当に美味しかったんですもん。実際なんともないですし。星導先輩、そんなに怒らなくたっていいじゃないですか」
相変わらずの半生意気な雅博に余計に呆れ返る千宙だった。
「今回は何もなかったかもしれないけど、今後地底で生活する上で油断は禁物!全てとは言わないけど、警戒は怠らないでね」
その説教を皮切りに彼らの作戦会議が始まった。
まずは遥実を探す作戦だが、第一層からのローラー捜索はあまりに効率が悪すぎる。
学校もあるし、地上での生活もあるので長い時間をかけて悠長に遥実を探すことはできない。
成未は数ヶ月間は学校に行くことはできないだろうと諦めている様子だ。
効率よく探すのであればまずは情報収集だ。
自分達の前後で地上からの迷い人に遭遇しなかった事を考慮すると、そこまで頻繁に地上からの来訪者はいないだろうと推察した。
であれば、地上からの来訪者が物珍しいはず。自分達も好奇の目で見られる可能性はあるが、話を聞いたら行き先がわかるかもしれない。
そうと決まれば早速出発して、と言いたいところだが、四人とも睡眠途中で外に放り出されたのでまだ眠気が抜けきっていなかった。
少し休もうという話になり、千宙はミュリエムに許可を取るため一階に降りて話をしに行く。
下に降りると、ミュリエムはロッキングチェアに腰掛けてミルクを飲んでいた。
千宙がこれからのことと今は少し休ませて欲しいと話をしたところ、ミュリエムは快く承諾してくれた。
礼を言い、千宙も再度寝室に向かおうとミュリエムに背を向けたその時、ミュリエムは千宙を呼び止める。
「ごめんなさいね、さっきの話少し聞こえてしまったの」
千宙は肝を冷やす思いをした。別にミュリエムからは命を取られるという危機感を覚えたわけではないが、この場の気まずさにだ。
この木造住宅は思った以上に各階の音が響くらしい。
「貴方達の力になれればと思ったのだけれど、お節介だったのなら許して頂戴ね」
違う、この人が悪いんじゃない。千宙はそう理解していたが、それでもまだこの見慣れぬ地で心を許すことはできなかった。
「私はーー」そう言いかけたところで、ミュリエムは「大丈夫」と言った。
「これまで何人もの地上人を相手にしてきたから、もちろん私のことを信用できなかった人もいたわ。慣れっこなの。それにここはもう貴方の家なんだから、何かあったらいつでも帰ってきなさい」
そう言葉にして千宙を寝室へと送った。
千宙は体をベッドに預けるがなかなか眠りにつくことはできず、数時間が経過したところで四人はそれぞれ体を起こして、Underworldへの出発の時を迎える。




