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原作ってご存知?  作者: safu
1章

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00. プロローグ

「愛し子を殺害しようなど…もう看過できません。ヴァネッサ様には然るべき罰が必要だ――!」



そう断じた男が、濡れそぼった私を睨みつけている。首を横に振り、処断せざるを得ない苦悩を滲ませているが、伯爵家の三男にそんな権限は無い。



「待ってください!ヴァネッサ様のお気持ちを考えて欲しいんです…!」



おっと。私と同じようにびしょ濡れになった少女が口を挟んだ。


ピンクベージュの髪をした愛らしい彼女は、ソフィアという。実家が取り潰しになったので元・男爵令嬢。

つまるところ平民。本来なら頭を下げて黙ってる以外に選択肢など無い存在である。



「ソフィア…君の優しさは尊いものだ。だか残虐な行いは報いを受けなければならない―!」


彼女を愛おしげに見つめる伯爵令息はジャスティンという。ちなみに私の婚約者である。



盛り上がる2人を見て、首を傾げる。

ご都合主義なハッピーエンドを迎える最終幕なのに、手筋が違う。



―― 悪役令嬢をヒロインが(かば)うシーンは無いの?




「…ヴァネッサ様はきっと寂しかったんです。ジェイ様の心が離れてしまって…愛されないというのは苦しいものです…!」


「ソフィアは同じ苦しみの中でも清らかなままだったろう。どこまで君は優しいんだ…!」




平民が伯爵令息を愛称で呼んでいる。人前で。人っていうか婚約者の前で。なんか、それは違うくない?




「ヴァネッサ!!ソフィアに言う事は無いのか!?」


「ヴァネッサ様、権力やお金でジェイ様を縛ったとしても寂しいだけですよ…。こんな方法で誇り高いジェイ様が振り向いてくれるはずないっ!」




許可してないのに侯爵令嬢を名前呼び。あと私の片思いが確定事項になってる。


優しさアピールしつつ、"私の方が彼を理解してるの"マウント取ってるあたり、匠の技よね。

そして伯爵令息はもう礼儀もへったくれもない口調になったわ。




――3人目は来るかしら



こちらはタイミングばっちり。背後で砂利を踏む靴音がした。3人目のご登場だ。



「ヴァネッサ様。もうやめましょう。貴方を理解し、愛する男がここにいます」




だから高位貴族同士の会話に入っちゃダメだって。身分制度をなんだと思ってんの?守らないなら貴族辞めなさいよ。


3人目こと、私の又従兄弟(イトコ)のランドルフ。原作ではこの人のが証言で悪役令嬢(ヴァネッサ)の自白が裏付けされちゃうんだけど…





―― チュン ピーヒュロロロ…



飛び立つ鳥が美しい声で鳴き、木の葉をさわさわと奏でる。記録的な豪雨で氾濫した河川も、いまは静かな水面がきらめくだけ。台風一過したような、澄み渡った青空が広がっている。



美しい自然の風景を見ていると、細かいことはどうでもいい――



「私が付いてますよ」

「寂しかったんですよね」

「ソフィアの優しさに感謝しろ」



――気がしたけど、説明しないと終わんないんだろうなぁ


● 手筋【てすじ】

 局面における最も効率の良い駒の動かし方

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