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27.人外達の会合です2

ちょっとタイムお願いします

「面と向かっては初めてだし、自己紹介しとくか」


 そう切り出したのは意外にも修道女だった。

 てっきり歩み寄りが下手くそな子かと思ってたので意外だ。


「ほぅ、率先して話振るとは、どういった風の吹き回しだ?」


 やはり珍しいのか、姿の見えないウルドラも疑問を呈している。


「なんてことはないよ。ただ今後長い付き合いになる相手に少しは好印象を与えておかないと僕としてもやりずらいからね」


 え、なに怖い。

私とどんな関係になりたいって?


「怖くないよ。これは女神様のご意志だ。悪いようにはきっとならない」


 そう言って修道服を着た白髪で金色の瞳をした幼女は胸の前で演技がかった身振りで手を組んだ。


「話が見えない。回りくどい喋り方はやめて率直に」


 焦れてしまったのか機嫌悪そうに先を促すウルドラ。

 それに、修道女は眉を寄せる。


「顔も出さずに偉そうに。ここの主は客人への礼儀がなってないね」

「むむ」

「話が進まないから一度出てきてよ」


 暫しの沈黙。

対面での会話は苦手なのだろうか。

私も苦手意識を持っているのでその気持ちは分からなくもない。


かつての私は自分の容姿にコンプレックスを持っていた。

悪口を言われたことはない。

寧ろ見目に関してだけ取り上げるならば、チヤホヤされていた。「先輩、今日も可愛いですね」「憧れです」なんて代わる代わる親しくもない相手から手放しに褒められた。


表面上は。


そんなできた人間がいるわけがないじゃないか。

どれだけ耳障りの良い言葉を並べようとも、私は身の程を知っている。

そんな賛辞は嘘っぱち。少なくとも本質を捉えていない。

私が生物である以上、他を犠牲にしている。どれだけエゴを揃えようとも善人にはなれない。あくまで偽善者。

私は完璧ではなく、身の程をわきまえているつもりなので自己評価も低い。

故に、コンプレックスは多様に抱えていた。

真意を理解できない対人を恐怖だ。

だから、もしもこのダンジョンのマスターが強く拒否するのならば無理をさせるつもりはなかった。

私は鬼ではない。猫なのだ。

礼をかかれようと、気にしないつもりだった。


しかし、そんな考えは杞憂に終わり、少しの間を置いて部屋に3人目が姿を現す。

やや、頬を膨らませて。


「話しが進まないのを我のせいにするな」


 茶髪を腰まで伸ばした小柄な少女。赤を基調としたドレスには所々に黒のレースがあしらわれ、上質な品なことを主張している。

 なのに、整った顔で拗ねられると、とても愛らしく映ってしまい、子供丸出しだ。

 10歳そこらの容姿にはもっとフリフリのドレスの方が似合いそうだ。


「あれ?いつもの寝間着じゃないんだ?」

「そんな格好で人前に出れるはずないだろう」

「僕の前では普通なのに、おめかししちゃって」

「君は突然現れて私生活を見たではないか!」


 普段はもっとラフな格好をしていることが言葉端から窺える。

 物理的な距離は縮まったが、心に距離を感じる。

初対面だし当然なんだけどね。


 またもや頬を膨らませて拗ねてしまったダンジョンマスター。


精神的には上なのだから、ここは甲斐性を見せてお伺いを立てるべきだろうか。

 あと、これ以上拗ねると帰ってしまいそうな雰囲気もある。

それは困る。私はウルドラの豊満な胸に飛び込んだ。

 仕方ないので、ウルドラにはこのムフフボディを触らせてあげる。

 決して、私がウルドラのムフフボディを堪能したかったんじゃないから。ないからね。


 私の濡鴉色の毛並みにご満悦なウルドラを見て、修道女が話を戻した。自己紹介だ。


「僕の名前はサヤ。訳あって君と行動を共にすることになったから、末永くよろしくね」


◆◇◆◇


 ヒカリゴケが放つほのかな光に照らされる中、私達はお茶会用のセットでくつろいでいた。

 お互いの親睦も深めたいとのサヤの提案から、ウルドラがお手製のポーション(ハーブティー風味)と菓子類を振舞ってくれたのだ。

 ぶっちゃけてしまえば全てサヤの恫喝によって整えられたのだが、そこは言わぬが花だろう。

 ちなみに、猫の私には糖度や匂いの強さの問題もあり、エルダーピードのササミを香草の残り香で燻した物とビタミン水を用意してくれた。

 嗅覚は脳へダイレクトに情報が行くため、優れた嗅覚を持つ猫などが強い匂いを嗅ぎ続けると歩行障害や、食欲不振の発生に繋がるので、その配慮だ。

 特に家飼いが推奨されている猫は逃げ場がなくて、知らないうちに飼い主の香水とか匂い付きの加湿器で弱るくらい重要な事だから私に関係ないと切り捨てることは出来ないね。


「我はこのダンジョンのマスター。名前はウルト・ドラル。趣味は調合と研究だ」


胸を張って大仰な態度を示す幼女にほっこりしてしまう。

なんだろうか、この背伸びしようとして足をふるわせているような愛おしさは。

眺めている分には癒されるな。

サヤちゃんは気に入らないのかジト目を向けているが。

慌てて顔を背けるウルドラ。

やはり対人は苦手なのだろうか。

「すまん。我はあまり人との会話経験がなくてな、至らないところがあるやもしれんが悪気はないんだ」


入口で話しかけるのは通例では無いのだろうか。

 それとも挑戦者が不足してるとか?


「そうじゃなくて、挑戦者云々の前にこのダンジョンはクリアさせる気がないんだよ」

「そうだな。レベルを最大値まで上げた勇者ならあるいは1階層の攻略も可能かもしれないが」


それは少しばっかり困ったな。

私の目標はこのダンジョンの攻略にある。

それが不可能と言われては少し思うところもある。

初志貫徹は大事な事だ。ここで妥協しては前世の二の舞になってしまう。断言出来る。私はそんなに強い人間じゃないのだ。

 けれど、そんなに私でも1階層は突破している。

それをなせない勇者。


もしかしなくても弱い?それとも私が異端?


「勇者なのに弱いらしいね。今の君なら、猫パンチでKO出来るってさ」

「それに自慢じゃないが、我のダンジョンは最古の遺跡でもあってな。これまで攻略者はおろか、魔物を倒されたことすらあまりない無敵っぷりを誇っている」


フンスと自慢げに鼻を鳴らすウルドラ。

自己防衛に余念はないらしい。猫に突破されかけてたけどね。

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