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24.不憫な勇者の余命宣告

 命からがら逃げ切れた。

 あれからもう1回触れられたが、外傷はない。

 外傷は。


 ―――――――――――――――――

  ステータス

 名前:未設定

 年齢:0♀

 種族:暗猫

 Lv.27

 状態異常:呪い/死(100/300)

 ―――――――――――――――――


 呪いが進行している。

 200の減少と2回の接触を関連付けるなら、1回で100削られるということになる。

 あの数相手に3回の残機。

 最早ダンジョンマスターはクリアさせる気がないのではないか?

 クリアされるとデメリットでもあるのだろうか。

 他のマスターに馬鹿にされるとか?

 うーん、それにしては厳重すぎるとも思うけど、他に何かあるのかな。命の危機とか。


 …………。


 な、なーんてね。

 私が下に行ったら死んじゃうとかないない。

 そうだ!きっとエッチぃ本隠してあるんだ!

 そうしよう、そう思おう!


 って、呑気に人の心配してる場合ではなかった。

 100ずつ減るって仮定するなら私はもう敵に触れられてはいけない。

 それに主戦力の魔法は禁止。物理攻撃無効。

 いや、どうせろっちゅうねん。

 呪眼を試さないとだけど、私の戦力ほぼ皆無だよ?

 戦いにもならないよ。

 絶望である。

 1階層で鍛えられたはずのメンタルに響いてくる。

 さらに追い打ちをかけるように猫の優れた聴覚が死霊達の声を捉えてしまう。

 ちなみにあいつら、呪詛なるスキルを持ってます。

 効果はなんとも嬉しい呪いの促進だそうです。

 死ぬわ、馬鹿。


 逃亡再開。

 寒さで触覚を失った肉球で砂漠を踏みしめて奔走。

 声が届かなくなっても止まらず、このフロアの端をめざす。


 ―――――――――――――――

 状態異常:呪い/死(23/300)

 ―――――――――――――――


 声聞かせただけで殺せるなんて反則だろ!

 チート!運営さんバグってますよ!

 死地に晒されすぎて麻痺してしまったのか、あまりの理不尽さに笑いが込み上げてくる。

 進行先に白い西瓜が立ち塞がっているのもジョークにしか思えない。

 ん?西瓜?

 そうだ!中和ポーション!

 急いで駆け寄り鍵を壊す。

 中にはピンクの液体が入った小瓶が。

 すかさず、鑑定もせずに残していたぶんと一緒に流し込んだ。


 ―――――――――――――――

 状態異常:呪い/死(164/300)

 ―――――――――――――――


 よっし!




 お、またあった!

 あれから私はひたすらにポーション集めに没頭した。

 無心で砂漠をひた走り、白い西瓜を求めた結果、状態異常の数値は300に戻り、手元にはポーションの詰まった水袋が。

 打倒ワイトに進展があっただけでこんなにも嬉しい。

 あぁ、ダンジョンマスターはきっとこれを伝えたかったんだね!


 ◆◇◆◇


「違うぞ?」

 カンテラの灯る室内で、独り言るダンジョンのマスター。

 本人もなぜそんなことを言ったのか分かっていないが、どうしても否定しないといけない気がしたのだ。

 ふむ、本の虫になっていて気づかなかったがもうこんな時間か。

 洞窟内に長くいると時間を狂わされると聞く。

 どうやら我もその例に漏れず惑わされたらしい。

 時刻は既に深夜。

 入口は麗美な月光だけで照らされている。

 静かな夜だ。

 2層の喧騒さえなければ平和が戻ってくるというのに。

 不服だ。


「いっそ奴の本体を壊せるか試して、猫もやってしまおうか」

「聞こえてるよロリマスター」


 振り返ると、我が物顔で我のベッドに突っ伏している無機物がいた。


「戻ったのなら一言言え。それと呼び方をどうにかしろ」

「来てるじゃん。今」


 確かに。


「……。それで、頼んだ物は買ってきたのか?」

「子供扱いしないでよ、お使いくらいできる」

「子供扱いも何も君は子供だろ」

「そうだねハイハイ」

「ムカつくなそれ。何故そんなに疲れてるんだ?」

「僕に疲れなんてないよ。ただ、」

「ただ?」

「このダンジョンに攻め込む気満々の勇者御一行が現在進行形で向かって来てるってだけ」

「はぁ!?」

「五月蝿い」


 罵倒と一緒に枕を顔に投げつけて来る。

 我の枕は硬いものを愛用しているので鼻頭が痛い。

 非難の目を向けるも無機物はジト目を向けてくる。


「勇者!勇者と言ったか!!」

「だから五月蝿いって」


 嗚呼、一大事だ。

 まさか既に勇者が復活してるなんて知らなかった。


「そう言えばそんな時期か!失敗した。もう少し調合で遊んでおきたかった」

「…………余裕そうだね?」

「馬鹿を言うな!余裕じゃない!我の貴重な趣味の時間が削られるんだぞ!」

「余裕あるじゃん。あれ?もしかして危惧してるほど勇者強くないの?」

「レベルにも左右されるが、最難関を誇るこのダンジョンの攻略は無理だろうな」

「自信あるんだ?」

「思い違いをしているようだが、人族は脅威には成りえないぞ?」

「え?」

「町でステータスを観なかったのか?」

「僕、鑑定持ってないからね」


 なるほどそれでか。


「後学のために教えてやると、人族は弱い。ステータスは平均して2桁。戦闘職でも3桁になりたての雑魚ばっかりだ」

「待ってよ、元人間のリッチはそこそこ強いじゃないか」

「それは魔物になったからであって、あれらの生前も3桁ちょっとのひよっこだ」

「嘘ん」

「本当だ。だから勇者を相手にするのに我らでは役不足というわけだ。ところで勇者のレベルは如何程かわかるか?」

「聞いた話だと召喚されたてらしいから、レベル1かな」

「論外。むしろ何故その体たらくでうちに挑もうと奮起したのか神経を疑うな」

「人なんて理解しようとするだけ無駄だよ。あいつら莉奈の魅力に気づけないぼんくら共だから」

「リナ、っとはあの猫のことか?」

「違う。莉奈は決してあんな粗野な野良猫じゃない。もっと可憐で優美な……。そんなことよりあの猫と勇者が白兵戦するならどっちに軍杯が上がると思う?」

「間違いなく猫だろうな。勇者と言えどもステータスはとどいて4桁中盤。人族からすれば破格かもしれないが、どうしてもうちの魔物と比べると見劣りしてしまう」

「えぇ、それって魔王どころか一般の魔物にも勝てないんじゃ…………」

「このダンジョンの魔物を参考にしてはだめだぞ。ここが異常なだけで、勇者も他とはいい勝負しているんだ」

「つまり、その異常と渡り合える僕やあの猫がおかしいのか」

「否定出来ないな。勇者を一蹴できるリッチと死闘を演じ、あまつさえ淘汰する猫?はは、笑えない」

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