63 堕天使からの挑戦状!?
「いや、ちょ、ちょっと待ってくれ。『ルシーファ』って名前の堕天使なら知り合いに一人居るが、アイツ、一応、魔王軍四天王の筆頭だぞ!?」
何ともきな臭い話である。
どうやら、聖皇教会とやらは俺をダンジョンの外へ引きずり出したくて仕方がないようだ。
しかし、何でルシーファの名前なんて使ったんだよ?
むしろ、そんなもん、怪しすぎて絶対行くわけないだろ?
何で丸見えの罠に自ら突っ込んで行かないとならないんだよ!?
「ちなみに、その魔王軍四天王の堕天使ルシーファってどんな魔族なの?」
「どんなって……俺たちの中では特に魔力操作に長けていて、一見、強そうには見えない線の細い感じのメガネ野郎だぞ? まぁ、体調の自己管理が割と下手クソなヤツだったから、絶不調の時なら俺でも勝てると思うけど……」
「体調管理が苦手な四天王、筆頭……?」
カシコちゃんが微妙な顔をしている。
いや、でも生活力に難があるのはルシーファだけじゃないからな?
マドラのヤツだってこっちが催促しないと下着を着替えないし、サーキュのヤツだって整理整頓がてんでダメだし、あの脳筋魔王の偏食っぷりも超絶面倒くさい。
「ほら、読書に熱中して気づいたら数日経過してて、寝てない・食ってないで倒れる馬鹿いるだろ? それだよ。でも、戦い方や戦略の考え方なんかは割と俺に似ていて、一応、『智将』って呼ばれてたな」
「いやいやいや、考え方が旦那に似ているのに『智将』は無いだろ」
どういう意味だ? それは。
「そうね。カイトシェイドさんに思考回路が似ているなら、世間知らずで常識知らずで天然でお人好しなポンコツ堕天使になるわよね?」
……ぶん殴るぞ。
しかし、どうやら俺を中央教会に呼ぶための召喚状までハポネスの領主当てに出ているらしい。
ボーギル曰く、俺が人間のフリをしている以上、この召集令状を断る選択肢は無いらしい。
迂闊だった……ルシーファのヤツ……こんな卑怯な手を使ってくるとは……!
しかもちょっと意外だったな~。
あの魔王城の管理を多少なりとも出来そうなのってルシーファくらいだと思ってたから、ヤツが表に出て来るのは最後だと思ってたんだが……意外と、シシオウって雑用係としてのセンスがあったのかな?
結局、この召集令状を断ると人間サイドも敵に回しかねない、とのことだったので、嫌々ながらも俺は中央神殿に出向く事になった。
そこで、正式に勇者ではないお墨付きさえ貰えば良いわけだから、とりあえず中央神殿にタッチだけして、さっさとこのハポネスに帰ってくれば名目上は問題無いらしい。
中央神殿は当然ながら魔族を目の敵にしている人間だらけ。
さらに【鑑定眼】のスキルを持つ人間も多いらしく、ネーヴェリクはもちろん、アルファ達を連れて行くのも危険。
魔族の中では俺本体が一番レベルが高いから、俺だけなら、たぶんバレない、とのこと。
だが、どんなにレベルが高かろうとも、俺はダンジョンの外ではごく普通の一般人程度の力しか無い。
そこで、ボーギル本人とカシコちゃんが俺の護衛として一緒に来てくれる事になったのだ。
しかも、カシコちゃんは、事前にココ、ハポネスに【出戻移動】の魔法陣も張ってくれて、俺が帰りたくなれば、瞬時にダンジョンまで戻してくれる、との確約を取っている。
彼女の魔術の腕はダンジョン攻略時に見せて貰ったから、その能力がかなり高いことは折り紙付きだ。
攻撃系は魔族程ではないものの、便利系に関しては俺と互角レベル。
……ここまでされては、行かないと駄々をこねる訳にもいかなくなってしまったのだ。
まぁ、本当にいざとなれば俺だって奥の手の一つくらいはあるので、最悪、中央神殿とやらを叩き潰して逃げ帰ってくる気満々だ。




