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【外伝~カイトシェイドくんの異世界ダンジョン攻略記~】④


「……この中から3種類選択ですか? うーーーん、そうですね……」


 ルシーファのヤツがシュガーさんに渡された自分のスキル一覧を見ながら、何やら難しい顔をしている。

 はい。結局、俺とボーギルとルシーファで挑戦してみることにしましたよ?

 まぁ、一定のポイントまで攻略しておけば、戻って来れるっぽいし。


「旦那やルシはこの手の『スキル制限』ってあんまり経験無いのか?」


 聞けば、ボーギルは迷宮都市でその手の制限付きダンジョンに挑んだことがあるらしい。


 元・魔王城の『封魔回廊』もある意味「能力限定型トラップ」だから、アレが全域にわたっていると思えばいいだろう。

 ただ、大きな違いは魔法以外のスキルも制限される点だ。


「そうだな~。スキル含めて3種類に限定されてっていうのは初めて聞いたなー」


 そういう俺もルシーファのヤツと似たような表情を浮かべていると思う。

 ダンジョンエリア外で一切魔法が使えない、という状況なら有ったけど、それでも【迷宮創造ダンジョン・クリエイト】でコアさえ創り出してしまえば、一応、最低限の魔法は使えたからなぁ……

 俺は、シュガーさんに渡された自分のスキル一覧を見つめながら答えた。


「シュガー殿、これは別に1回の侵入で最後まで攻略する必要は無いんだろ?」


 ボーギルが、すかさずクリア条件についての確認を取っている。


 おお……流石歴戦の冒険者! こういう時には頼りになるぜ。


「ええ、構いませんよ。ワン・クールが終了したらお戻り可能です」


「わんくーる?」


「一区切り、という意味です。一定区間を進めていただいたセーブポイントみたいなものですよ? そこに到達できなければ、残念ですがウチの世界に定住していたくことになりますけど」


 笑顔のまま、しれっと答えるシュガーさん。


「とはいえ、事前情報ゼロでも、前回のリヴァイアさんはお戻りいただけた訳ですし、そこまでの難易度ではないと思いますよ」


「ふむ……となると、ルシ、旦那、スキルや魔法は『無意識的に多用しているヤツ』を選んだ方が良いぞ」


「わたし、特別に多用している魔法なんて決まってはいませんが……?」


「いや、いるだろ?」


 俺の指摘に「え?」と鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をするルシーファ。

 おいおい、自分では気づいていないのか?


「ルシーファの場合さ、【飛行】系がほぼ常時発動じゃねーか」


「あっ……そ、それは……確かに……そうでしたね……」


 すこしバツが悪そうな表情でふいっと視線を俺から反らせるルシーファ。

 念のためいうと、別にチビになったから【飛行】を多用している訳ではない。

 コイツ、元・魔王城に居た頃から【飛行】は、ほぼ常時発動状態だったからな? 移動の際に歩き回っている姿を見た記憶の方が数えるほどでいっつもふわふわ飛んで移動していたし。

 あまりに多用しすぎていて自覚が無いパターンか。


「俺は【鑑定眼メキキ】と秘剣の【死芽切シメキリ】、【黄泉切ヨミキリ】かねぇ?」


 一方、ボーギルは淡々とシュガーさんへ所持能力を申請している。

 俺はどうしようかな? 【多重分身オレ・ダラケ】は外せないとして……回復魔法は多分ルシーファが持ってくだろ?

 アイツは女体限定枠だから攻撃系を持って行かないはずだし。

 となると、一番バランスがよさそうなのは……やっぱりこれかな~。

 俺は持ち込む自分の能力をシュガーさんに申請した。


「えっ? この能力ですか!? ……構いませんけど、カイトシェイドさんがお選びになった能力だと、ウチの世界とこっちの世界で発動内容が多少異なる可能性がありますよ?」


「あんまり使い勝手が悪いようなら戻って差し替えるさ」


「……わかりました」


 少し考え込んでいたシュガーさんだが、とりあえず了承してくれたようだ。

 そんな訳で俺達はシュガーさんのダンジョンへと突入したのだった。



「な、何ですか!? あの猟奇的な魔物は!?」


 そこは水晶で出来た洞窟のようなダンジョンだった。

 不思議とぼんやり明るいため視界は良好だ。じゃりじゃりと踏みつける砂利のようなものも全部透明な水晶質の石だ。

 これだけの透明度なら、魔道具の媒体とか女の子が好きなアクセサリーとかに加工できそうな代物である。


 そんな、優美な空間を台無しにするようなモンスターが姿を現した。

 人間の下半身に、上半身部分が丸い球状で、そこにうねうねとしたミミズのような触手の生えたモンスターさんだ。

 この辺りのデザインセンスはやっぱり世界が違うと思わせるポイントである。


「俺の【鑑定眼メキキ】によると、知能は動物並……それなりに危険な魔物みたいだな。……特に、ルシはアレに近寄るな」


 腰の剣を抜き放ち、前衛らしく1歩前にでるボーギル。

 【鑑定眼メキキ】によると、あのモンスターは上半身の触手部分で人間を含む動物のメスを捕えて胎内に卵を産みつけ増殖するタイプの魔物だそうだ。


「ふーん。つまり、こっちの世界で言う淫魔サキュバスの一種か?」


「旦那ァ……方向性は間違っちゃいないかもしれないが……アレと一緒にしてやるなよ」


 ボーギルとルシーファが同時に俺にダメ出しをする。


「……カイトシェイド……流石にあの魔物と一緒と言われたらサーキュだって怒りますよ……」


「サーキュはいつも俺に怒ってるけどなぁ……?」


 ともかく、珍しい魔物であることに間違いは無い。


「なぁ、ボーギル、ルシーファ、ちょっと俺が試してみても良いか?」


「旦那、何をする気だ?」


 俺は、ボーギルを押しのけて、その触手モンスターに近づく。

 奴らは何処から音を立てているのか、ヴヴヴヴヴヴ……という唸り声のような音を響かせてこちらを威嚇している。

 ま、ちょうど複数匹が群れになってくれいるのはこちらとしてはありがたい。


「【異世界創造(オール・クリエイト)】!」


 ばひゅんっ!!


 俺の力ある言葉に答えて、シュガーさんのダンジョンに居た魔物が姿を消した。

 その周りの岩石ごとぽっかりと。


「……え?」「は?」


 残ったのは、まるで空間そのものを丸くポッコリと削り取ったような痕だけだった。


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