【外伝~カイトシェイドくんの異世界ダンジョン攻略記~】
(・ω・)ノ
書籍化に伴い、いままで応援していただいた御礼に外伝SSを作成してみました~!
こちらはのんびり更新になりそうですが、続き頑張りますっ!!
「ねぇン、カイトシェイドくん、私の知り合いのダンジョンを攻略する気は無いかしら?」
「突然どうしたんですか、リヴァイアさん」
あの後、色々あって魔王サタナスを異世界に転生させたは良いモノの、その代償として全てのダンジョンやらスキルやら称号やらを差し出した俺は、色々と後始末に追われていたのだ。
まぁ、差し出したものを上回るリターンは有ったけどな。
新たに入手したスキル【異世界創造】。
そして、称号【世界の祝福】。
実は『大魔王の称号』については消滅してしまったので、俺は今、魔王ではない。
その代わり【魔神】というクラスにチェンジしている。
とはいえ、その実情はあんまり変わっていない。
いや、普通に育成型魔王だった時の【配下召喚】とか【会議室】は使えるし、例の役職枠も健在だ。増えても減っても居ない。
違いといえば『移動力の増加』という一言が追加されたくらいだ。
【異世界創造】は元々俺が持っていた【迷宮創造】の完全上位互換だし、【世界の祝福】特性は【大魔王の加護】と同じような称号だ。
俺が指定した相手に【魔神の祝福】を与えることができる。
違いは、わざわざ接吻する必要が無い点だ。
そのため、ボーギルやアルファなど、比較的今までは拒絶反応を示していたメンツにも添付しやすくなったことだろう。
収支的にはプラスではあったのだが、一度失ったハポネスのダンジョンを再構築するのには、それなりに時間を要したのだ。
あれから半年。ここになって、ようやくハポネスのダンジョンも以前の規模と同じ程度にまで成長してきている。
そんな矢先、俺の配下になった魔王リヴァイアさんが唐突に尋ねて来るなり、このセリフである。
「うん、実はね……ちょっと前に、ほら、サタナスくんの件で世界崩壊の危機があったでしょ?」
「ええ。でも、もう半年以上前の話ですよね?」
「そうなんだけど……」
そういうと、面倒くさそうに大きく息を吐いたリヴァイアさん。
「あれの影響……完全終結って訳じゃなかったみたいなのよねぇ……」
聞けば、リヴァイアさんの所に、異世界の魔王(?)が「ウチのダンジョンを攻略してよ」と言ってきたのだそうだ。
何で魔王の後ろに(?)が付いているのかというと、ウチの世界でいう「魔王」とはちょっと違うためらしい。
「でね、そっちの世界のダンジョンってこっちとは全然違っていて……私一人で攻略するのは無理っぽいのよ」
……ほう? リヴァイアさんが無理とな?
彼女……いや彼? だって『魔王』の称号を持っている。
ということは、どの系統の魔法であったとしても、それを極め、尚且つ世界に認められている証でもあったりするのだ。
つまり、その道の『最高峰を極めた個体』と呼んで差し支えない。
リヴァイアさんは、探索や情報収集が一番得意らしいのだが、それでも不定形の身体から繰り出される攻撃は、ある意味粘着質で回避し辛く、立ち回り方法次第では相当強い。しかも、その肉体特性から物理攻撃はかなりの範囲で無効化できるはずなのに、だ。
そのリヴァイアさんが忌々しそうに顔を歪めた。
「以前、カイトシェイドくん、他所のダンジョン行ってみたいって話していたでしょ?」
確かにそんなような話をボーギルとした記憶はある。
「……また覗き見したんですか?」
「いいじゃな~い、それは私のシュミみたいなものなの!」
別に隠している訳じゃないから、言ってくれれば公開するんだけどなぁ?
だが、そう伝えた所「それでは意味が無いの」とものすごく真剣な顔で諭されてしまった。
あくまでも自力で、こっそりと他人の情報をゲットするのが楽しいのだそうだ。
……そういうものなのか?
「それに、カイトシェイドくん、もうダンジョンの外でも普通に魔法が使えるんでしょ」
「ええ、まぁ」
「だったら、ちょうど良いじゃない! 歓迎してくれるわ!」
「お。ホントですか? ご参加いただけるのはありがたいです」
「?!」
ばっ!!
俺が振り向くと、そこには見た事のない男がニコニコと笑いながら立っていた。
コイツ……どうやって、俺の後ろへ? 【瞬間移動】が使えるのか?
どちらかというと細身で、身長はウチのアルファくらいだろうか?
白い上質な上着にシンプルな黒いズボン。黒髪・黒目、そして肌の色は俺と一緒だ。
……見た目はそんなに俺と大差ないと思うんだが……
だが、俺の個体識別の雑さ具合は酷いとボーギルからもカシコちゃんからも言われているからな。
一応、違いは……ちょっと濃い眉毛だと思う! あとは、目の数も鼻の数も口の数も一緒だ! ほら、だいたい同じだろ?
衣装に関しては、貴族……に、しては装飾品が少なく、かといって一般市民だとすると、衣類の質が上等すぎる。
「あ、ドーモ。わたくし、担当のシュガーと申します」
ぺこー。
「え? あ、ハイ。えーと、魔神のカイトシェイドです」
ぺこり。
小さな白い紙きれを手渡そうとする謎の男シュガーさん。
ん? これ、くれるの?
差し出された小さな紙きれには『明日☆エンターテインメント編集部 異世界担当:シュガー大祐』と書かれていた。
「この度は、当編集部のイベントにご参加いただきありがとうございます!」
待って、どういうこと!?
困惑する俺を後目に、ヤツに攻撃の意思はあまり無いらしい。
背後でリヴァイアさんが、はぁ、とため息を漏らしたのが聞こえた。
「いや~、実はですね? ウチの職場では異世界の皆様の奇想天外な言動や行動をこう、記録させていただきまして、ウチの世界でエンタメとして楽しませるという職業がありまして……」
「……う、うん?」
なんか……癖はありそうだが、あんまり攻撃的なタイプの魔王ではなさそうだ。
俺はシュガーさんにソファに腰かけるよう促すと、詳しい事情を聞いてみる事にした。
「つまり?」
「こちらの世界の方に、ウチのダンジョンを攻略していただく様子を記録させて貰いたいんです!! 折角そちらから参加表明いただいた事ですし!」
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