177【サタナスside】その頃の返り咲き魔王②
「おのれぇぇぇ、カイトシェイドォォォォォッ!!!」
魔王ジブリ―ルを倒し、ついさっき魔王バールを殺し、ようやく最後の魔王、リヴァイアに宣戦布告をしようとした矢先、彼の行動を嘲笑うかのように天の声が響いた。
【魔王カイトシェイドが『大魔王』の称号を得ました!】
と。
ガシャーンッ!!
「ひぃっ!?」
まだ生き延びていた魔王バールの配下らしき高位魔族が、突然のサタナスの発狂に悲鳴をあげた。
「ここでも……! ここまで来ても、まだ余の邪魔をするかああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
カッ!!!
「へぶっ!?」「ゴヴャ……!?」「ぎぃっ!!」
無差別に叩きつけられた高濃度の魔力弾で断末魔を残して飛び散る魔王バールの部下達。
サタナスがベリアルを倒して魔王となった時に現れた精霊。
ヤツの話では、『半神』である現状を脱却し正式な魔神となるには二つの方法がある、とのことだった。
一つは、聖属性の者を一定量喰らう。
そして、もう一つが『大魔王』の称号を得る、である。
難易度については、どちらもそんなに変わらない。
だが、あの小男を完膚なきまでに粉砕するには、大魔王の称号を得たうえで、聖属性持ちの者を喰らう。
それも、カイトシェイドの目の前で。
そう計画していたのだ。
しかも、精霊の話では、その聖属性持ちは、あのカイトシェイドが特別に思いを寄せている三人の相手なのだそうだ。
奴の絶望した顔を見ればどんなに心がスカッとするか!
そのため、魔王ジブリールを倒した直後、本来、サタナスが主催となって開催可能な大七魔王会議を無視して、ほとんど不意打ち的に魔王バールを打ち破ったのだ。
そう言ったやり方は、魔王としての矜持に反する卑怯な方法だ。
だが、その手段を選んだとしても、あのカイトシェイドのヤツを叩き潰す。
それが叶うのならば何の問題も無いはずだった。
自分が魔王バールを倒すまでの間は、あのカイトシェイドが別の魔王を倒したりしないように、疑心暗鬼の素として、あの道化師を送り込み、意味不明な命令をさせておいたと言うのに……!!!
なぜ!
何時!? どうして、最後に残ったハグレ者である魔王リヴァイアを倒せたと言うのだ!!
「うがあああああああっ!!!!」
がばきょっ!!!
「さ、サタナスさmヘヴォゲラッ!?」
アホ面を抱えて自身の元へ戻ってきた道化師の顔面に蹴りを叩き込む。
「うぅぅぅ……!?」
顔面を押さえて転がりまわるドーケッシー。
「この役立たずめっ!!!」
「ぼ、ボクちゃん、言われたとおりに観光しかしてないズン……」
「何故もっとゆっくりしてこなかった!!!」
「ええ!? だ、だって、ボクちゃん、そんなにひんこーほーせーに大人しくしているのは向いてないないズン! 女の子をいじめたり~、子供を嬲り殺したり~……そんな楽しい事、何もできないなんて、何をしてたら良いのか分からないズン!」
ある意味真っ当な道化師の発言を再度の蹴りで叩き伏せる。
「……ちっ……魔王共の魔核は3つ、か……」
大魔王の称号が無くても、相手側の魔王の内、ラフィーエルやリヴァイアはそこまで攻撃性の高くないタイプのはずだ。
まだまだ勝機はいくつでもある。
他の魔族達の血にまみれたサタナスは、狂気に満ちた笑顔を浮かべた。