169 絶望の汚名返上
「おめでとうございます!!! ボーギルギルド長!! カシコ副ギルド長!!」「でも、よくエルフ族との婚姻が認められたっスね」「おめでとうございます、いや~、ギルド長は絶対結婚できないと思ってたのに……奇跡って有るんですね」「うぅ……カシコ様……奇麗ですぅ……!」
少し顔を赤らめて憮然とした表情のカシコちゃんが純白のドレスを着てボーギルの隣に立っている。
憮然としているのは、たぶん照れ隠しだ。
その証拠に、エルフ族特有のあの長い耳がピンク色に染まり、嬉しそうにぴこぴことせわしなく上下していた。
その隣のボーギルは……というと、でれっでれに鼻の下を伸ばして頭を掻いている。
流石にいつもの無精ひげは無く、キリっとした衣装に身を包んだ……なかなかの美青年が立っていた。
ボーギルってもっと「おっさんに全力投球!」みたいな見た目だと思ってたんだけど、きちんと整えると、それなりに……見栄えがする。
まぁ、一応、あいつ神の端くれに引っかかってるもんなー。……そりゃそうか。
「やはり、寿命と子供の問題だったんですね! ネーヴェリク」
「はい! お二人の門出……無事、祝えて良かったデス」
結局、あの後、ベータに頼んで整備してもらった宝飾市のおかげで、無事カシコちゃんの欲しがる指輪をゲットできたボーギル。
ルシーファとネーヴェリクの整備した公園で、無事、プロポーズを果たし……色々あって【亜神】となった事、そして、純粋なエルフ族を必ず身ごもらせる事、それらを約束し、どうにかカシコちゃんに認めて貰えたようなのだ。
「別に……私は子供が絶対にエルフじゃないとダメって訳じゃなかったんだけど……ま、ウチの長老たちも、亜神様が相手なら流石に文句言えないでしょ……だけど、本当に……本ッ当に!! カイトシェイドさんの身内ってめちゃくちゃよ!!! ホント、余計な事をしてくれてっ!! ありがとッ!!!」
と、喜ばれてるんだか怒られてるんだかよく分からない怒声と共に涙目でお礼を言われた。
だが、これで、俺達も『絶望の恋愛相談員』の汚名は返上である。
「なぁ……でも、ボーギルギルド長、カシコ副ギルド長を射止める為に人間やめたって噂は本当なのか?」「いや、よく分かんないんだけどさ、何でも、男を孕ませる修行をしたらしいんだ……」「えっ!? な、なんでそれでカシコ副ギルド長を落とせたんだ??」「分かんねぇよ……!」
……まぁ、多少はねじ曲がった噂が流れてしまうのは仕方がないというもの。
ボーギルのヤツは「名」を捨てて「実」を取ったのだ。
これは、仕方ない。うん、俺がベータに事情を話した時の説明の仕方が悪かったのではない。断じて違う。
……違うと思う。
そんな些細な事よりも、正々堂々と若人たちを祝福しようではないか!
おめでとう!! ボーギル! そしてカシコちゃん!!
(ボーギルくんの本命はエルフ族だったんだね~……これは、子供にハイ・エルフやエンシェント・エルフが望めるねぇ)
なお、スゴピカのヤツは俺にだけ感知できるようにして結婚式会場をふわふわと浮いているらしい。
だが、時々、ルシーファが不安そうにチラチラとスゴピカのヤツを視線で追いかけているし、ネーヴェリクもペコリ、とヤツに向かってお辞儀とかしてるから、多分感知しているのは、俺だけじゃないはずだ。
(ねーねー、ハポネスの辺りって一夫多妻が認められてるよね? 正妻はあの子でいいから、うちのかーくんにも子供を作って貰えないかなー?)
(結婚式当日に側室を薦める会話なんてしたら、デリカシー無さ過ぎて……人間から嫌われるぞ)
(あ、そうなの?)
(せめて100年くらいは二人の新婚生活を満喫させてやれよ)
(ん~、そういうものかな~)
(そういうもんだ)
その時だった。
【新たな魔王が誕生しました!】
(うーん、タイムオーバーかな……じゃーね、かーくん。早く子供作ってね!!)
そう言い残すと、スゴピカの野郎の姿は徐々に透明になり、存在自体が無かったかのように消え去った。
【魔王ベリアルに代わり、魔王サタナスが下克上を果たしました!】
【大七魔王会議の開催が可能です!】
どうやら、また一波乱ありそうだ。
面白かったら広告の下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援お願いします!
面白くないなーと思ったら☆☆☆☆☆を★☆☆☆☆にしてください! 励みになります!