160 世界樹を叩き切ろう!
「オラァッ!!」
ブンッ!!
「ちょっと、かーくん!? 今、俺の首を叩き折るつもりで蹴り入れてきたよね!?」
……ちっ、やはり精霊に物理は効かないか……
「今更、何の用だ! このタコ親父っ!!」
「えっ!? ちょ、待ってくれ、コイツ……本当に旦那の父親なのか!?」
ボーギルのヤツが半透明男に向かって驚愕の眼差しを向ける。
それはルシーファも同様らしく、半透明な発光野郎と俺の顔を順番に見比べながら困惑している。
「わ、わたしもそれは初耳です……!」
まぁ、俺の顔立ちは、ばあちゃん似だからな。
ありがたいことに、この野郎の面影は一切無い。
「い、一応、カイトシェイド様のお父様が『精霊族』の方って話は伺ったことがあるんデスけど……」
ネーヴェリクには一度話したことはあるが、だからと言って別に何かが変わる訳では無し。
親父がアレであっても、俺が魔族なのは変わらないし。
「で、でもっ……あの、こちらの方……先程、光の精霊・スゴピカ様だと自己紹介されてらっしゃっいました……よ……?」
「……まぁ……そーだよ」
俺はしぶしぶながらも頷く。
「パパピカって呼んでも良いよ~!」
人差し指で自分のほっぺを突きながら笑うな、腹立つ。
「「ぱぱぴか!?」」
「ええっ!? あの、中央神殿でまつられていたあの、光の精霊様っ!?」
「か、カイトシェイド……だから、あんなに『光の勇者』って呼ばれるのを嫌がっていたんですね!?」
そのとおりである。
いや、別に人間たちの宗教観に何か言うつもりは一切無いけど、精霊族ってかーなーり、こっちのイメージと違う奴らなのだ。
ぶっちゃけ、人間世界の情報とかイメージは同姓同名のベツモノだと俺は割り切っている。
「え? あの、旦那って、魔族、なんだよな?」
「ああ。魔族だよ。ほら、魔核がちゃんと有るだろ? これが有れば、どんな見た目で、出生がどうあれ魔族は魔族だぜ?」
俺は、わざわざ胸元の魔核を皆に見えるように服をはだけさせた。
「あはは、そうだよ~。マリアと結婚した時に、義父さんとの取り決めで子供に魔核があったら『魔族』として、無ければ『精霊』として育てるってことに決めたんだよ~」
「え? で、でも、おばあさんは人間なんだよな?」
「うん、でも、マリアのお腹の中に居た時から結構魔力量が高かったし、人間になる可能性は少なかったからねぇ」
「えっ……ええ……?」
ボーギルのヤツが頭を抱えている。
「ああ。もしかして……ボーギルは『魔力量で種族が変わる』という感覚が良く分からないのでは? 人間はあまり魔力量が変わらない生き物ですから」
ルシーファが、ぽん、と両手を打って一人納得した様に頷いた。
そういう事か。
「……人間から生まれたら、普通は死ぬまで人間だろ? 狐に生まれたら死ぬまで狐だし、魚は魚だ。魚から馬に成長した、なんて話は聞いたことが無いぞ?」
ルシーファの言葉に納得したのか、逆に困惑の度合いを深めたのか。
ボーギルが眉を寄せながらそう答えた。
「いや、人間だって魔力量に大きな変化が有れば種族は変わるぜ? 例えば、ウチのアルファ、ベータ、オメガは魔族になってるだろ? それに、魚から馬にならない……なんていうけど、ウチのドエムンなんか『謎解き扉』から『魔族』だぜ?」
成長の方向性としてはかなりレアな方向に突き進んだケースだ。
「う、まぁ……そう言われると……」
俺達の場合、根底に『魔力量』というものが存在し、それがどちらの方向に成長し、どれだけの大きさまで育ったか、という部分で種族もランクも変わる……というのが常識だ。
……だいたい、そんな事を言ったら俺の『妖魔』ってのは『何の種族かよく分かんないけど、とりあえず魔族』の総称みたいなもんだし?
「……で、今回は急に何の用だよ?」
俺は、軽く親父を睨みつけた。
「うん。義母さんに託しておいた、この『世界樹』がココまで成長したでしょ? いやぁ、俺、嬉しくてねぇ……」
何でも、世界樹が成長すると、精霊界にまでアクセスできるようになるんだとか。
つまり、このアホ親父がいつでもこっちにちょっかいかけて来れるようになってしまう。
「……よし、燃やして切って捨てよう!! この木!」
「いや、旦那、それは勿体ないが過ぎるぞ!? 世界樹の葉は万能薬・エリクサーの材料なんだぞ!?」
「やめてください! 今や魔導クローンや、財政面でもハポネスを支えているじゃないですか!?」
俺の宣言にボーギルとルシーファのヤツが血相を変えた。
「そうだよ~、かーくん! せっかく、かーくんが大人になったお祝いに、俺が奥さんを3人準備してあげたのに!」
スゴピカ親父がネーヴェリク達を指差して叫んだ。
「えっ!? お、奥さんデスか? ネーヴェリク達……が? カイトシェイド様、の??」
その言葉を理解した瞬間、ネーヴェリクの白い顔がぼっと音を立てて赤く染まった。
「ちょ、待って下さい!? 三人って……?」
「3は精霊にとって縁起のいい数字なんだよ、天使ちゃん?」
口をパクパクさせているルシーファの額をつん、と優しくつつくアホ親父。
天使ちゃん、じゃねーよ。
「よし、旦那。切ろうか? この木。協力するぜ?」
ボーギルが地獄の釜が開くような音を立てて暗黒微笑を浮かべた。
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