158 新たな事件発生の予感!
そんな訳で、ラフィーエルさんとの交易も順調な滑り出しを見せた。
彼女も『ダンジョン・デザイナー』をかなり使いこなせるようになったらしく、あの期間限定ダンジョンで学んだ事を本家のダンジョンでも実施運用しているそうだ。
例の評判を聞きつけた、はぐれサキュバスたちが身を寄せ始めた、と聞いているので、辺境の地とはいえ、かなりの賑わいをみせているらしい。
やはりお色気は世界を救うのか……奥が深いぜ。
俺も、ラフィーエルさんに教わろうかなぁ……
そう思って、ラフィーエルさんにお願いしたら、気まずそうに言葉を濁されてしまった。
同盟を組んでいると言ってもお互いに魔王。
流石に、ホイホイと自分の奥の手を教えたりはしないか。
そして季節は移り、緑が最も勢力を拡大する夏……
ハポネスでは緑の象徴と化している世界樹の樹がエラい勢いで勢力を拡大させまくっていた。
コイツのおかげで、かなり人口流入が増えてくれたし、葉っぱも花も交易品としていい値段が付くし、魔道クローンの生産体制も整ったし……とても助かる植物である。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
「はぁ?! ルシーファとボーギルが喰われた!? どういう意味だ、ネーヴェリク!」
「いえ、あの……よく分からないんデスが……世界樹に吸い込まれたというか……」
聞けば、ちょうどネーヴェリクがボーギルに用事があって冒険者ギルドを訪ねたらしいのだが、そのとき、聖域結界からルシーファの悲鳴がして、行ってみたらボーギルとルシーファが世界樹に吸い込まれたらしいのだ。
役職枠にぶち込んでいる二人の様子を確認すると、確かに『捕縛中:連絡不可』という文字が輝いている。なお、カシコちゃんはギルドの仕事で別の街を訪問中らしく、今回は巻き込まれていないようだ。
「とりあえず……行ってみるか」
しかし、世界樹って人間や天使を喰う植物なのか?
そんな話は聞いたことが無いんだが……
俺とネーヴェリクがギルドの聖域結界内へ移動すると、確かにネーヴェリクの話どおり、ついさっきまでここでボーギルとルシーファのヤツがお茶でもしていたのだろう。
ルシーファの好きな世界樹の花から作った少し甘いお茶がまだポットに半分程度残っているし、食べかけの茶菓子がテーブルの上に置きっぱなしだ。
急いでカップをテーブルに戻したらしく、多少クロスが歪んではいるものの、食器は欠けていないし、お茶もこぼれていない。S級冒険者が暴れた様子は一切無い。第一、ボーギルのヤツが良く使っているあの魔法剣もここに立てかけて置きっぱなしになってるし……
「カイトシェイド様、ココから、にゅーっと、蔓のようなものが伸びて、この樹の中にすいこまれたんデス」
ネーヴェリクがいつものハの字眉をさらに押し下げて、すでに大樹となっている世界樹の腹をポンポンと叩いている。
……何の変哲もないただの木だな?
「あれ?」
「どうしたんだ、ネーヴェリク?」
不安そうに世界樹を叩いたりさすったりしていたネーヴェリクが小さく首を傾げた。
「いえ、あの、ココ……すこし温かい気がするんデス……」
「へ?」
「あの、ココと比べると……明らかに、こう、ぽかぽかデス……」
「どれどれ~……あ、本当だ」
俺はネーヴェリクに言われるまま、その温い部位と別の部分に同時に触れる。
確かに、言われたとおり、右手部分だけが妙に温かい。
「なんでショウ? まるで、魔力を注ぎ入れる口みたいな印象デス」
確かに、瞬間移動型魔法陣を起動させる時の印象に近い感触だ。
「ふむ? じゃ、魔力を注いでみるか……」
「あ、では、ネーヴェリクがやってみマス」
と、それは一瞬だった。
ネーヴェリクが魔力を注いだ瞬間、ブワッと蔓のようなものが噴き出し、彼女の身体を絡め捕ると、悲鳴を残す間もなく、その姿が樹の中に消えた。
「ネーヴェリクッ!?」
まさに、樹に喰われた、と言っていい様相だ。
スキルを確認すればネーヴェリクもボーギルやルシーファと同様『捕縛中:連絡不可』に変化している。
おいおいおいおい!?
何が、どうなってるの!?
どうやら3人はこの木の中……という事なのだろうか?
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