155 VSラフィーエル・決着!
【ダンジョン・バトル期間が終了しました!】
【新たにダンジョン内に入ることができなくなりました!】
【現在、ダンジョン内に残っている者の転移が済み次第、バトルフィールドは消滅します!】
ついに終わった……!
結局、最終週に俺のダンジョンでは、基本スタンスの変更はせずに、成長促進のためのアイテムの種類を増やしたり高品質なモノを多めに放出するように調整することで、何とかしのいだ。
正直、5万分のダンジョン・ポイントはギリギリ……つーか、実はちょっと足りなくて……
元々15階だったダンジョンを13階に縮小することで、無理矢理ひねり出した感すらある。
ただ、それが功を奏したのか、『格付け』では、確かにラフィーエルさんの『珍まど・ダンジョン』が上位ではあるのだが、俺の『ザクザク・ダンジョン』も、そのすぐ下に付けているから、大きく離されてはいない!
つまり、確実に逆転されてしまった訳ではないのだ!!
……と、思いたい。
【勝負方法による、結果を発表のため、両魔王を特殊空間へ召喚します!】
そういう【天の声】の直後、俺とラフィーエルさんはたった二人で青白い異空間に立っていた。
「お?」
「ほえっ!?」
あ……ラフィーエルさん、半裸だ。
魔王自ら、こんなに体張って頑張ってたとは……これは『格付け』で逆転されても仕方がなかったのかもしれない。
俺も、もう少しなりふり構わずに、全階層10階程度にして物量で叩き伏せる方向でねじ伏せれば良かったな。
これは、ちょっと反省である。
【結果を発表します! 魔王・カイトシェイド:10226票、魔王・ラフィーエル:10226票!】
【結果は引き分けです!!】
「「おおおおおおお!?」」
ま、まさかのドロー!!
【『延長戦』を実施するか、『引き分け』を受け入れるか、どちらかを選択できます!】
【なお、お互いの意思が一致しない場合は自動的に『延長戦』の実施となります!!】
く……!
これは、ラフィーエルさんの方が有利だな。
俺が序盤に稼いでいたにもかかわらず、現時点で追いつかれたとなると、向こうはまだ上り調子のはず。
このままの状態をキープするだけで『延長戦』にて、完全にこちらをねじ伏せることができる可能性が高い。
逆に、俺の方はもう少しテコ入れをしないと、完全勝利は苦しいだろう。
「ど、ドローで!! 引き分けでおねがいしまぁぁぁすッッ!!」
シュバッ!!
「へ?」
ところが、ラフィーエルさんは半分千切れかけた防具の胸元を左手で隠しながら逆の手を高く掲げた。
「……あの、良いんですか? ドローで? ……延長戦を続けたら、ラフィーエルさんの方が有利では?」
「はいっ! あの、カイトシェイドさんさえよろしければ、是非、引き分けでお願いしますっ!!」
これ以上続けたら、私の頭蓋骨さんがユキカゼちゃんに粉砕される、とか何とか、涙目で不思議な独り言をつぶやいているが、俺としてはむしろありがたい話である。
「ラフィーエルさんが構わないなら、こちらも異論はありません。『引き分け』で、お願いします」
【両魔王の意志を確認しました!】
【魔王・カイトシェイドは、ダンジョン・バトルに引き分けました!】
たぶん、ラフィーエルさんにも同様のアナウンスがされているのだろう。
「ほえぇ~、私、負けなかったよぅぅ……よかったぁぁぁ、これでみぃちゃんに敗北したことも打ち消されるんだ~……やったぁぁぁ」と、かなり大袈裟に息をついているけど、あれは流石に演技だよな?
だって、このまま1週間でも続ければ向こうの勝利の可能性は高かったはず……
彼女の真の狙いは何だろう?
【ダンジョン・バトルに引き分けた為、お互いに『同盟』を結ぶことができます!】
同盟!?
な、なるほど……!
仮に同盟を結んだ場合、同盟相手が別の魔王から戦いを申し込まれた際に援軍を出したり、逆に要請を依頼したりすることができるらしい。
当然、いざとなればお互いのダンジョン同士を『瞬間移動魔法陣』で結ぶことすら可能だそうだ。
『捕虜』だと、勝者側が、問答無用に搾取できるのに対し、こちらは双方の同意が無いと勝手に行うことはできない。
だが、他の魔王からすると、一人に戦いを申し込んだつもりが、いつの間にやら二人を一度に相手をしなければならなくなる訳だ。
まぁ、延長戦に持ち込まれて負けるよりも落としどころとしては悪くは無い。
なるほど……彼女は最初からこれを狙っていたのか。
今後の事を考えると、ミーカイルのアホより賢いな。
「こちらとしては、ラフィーエルさんと『同盟』を結べるなら喜んでお願いしますよ?」
「えっ!? い、良いんですか!?」
「ええ。何でしたら、ウチの龍引船の三分の一をお譲りしましょう。水龍族の生活環境の整備のために、ウチの副官が直接そちらのダンジョンにお邪魔して構わないなら……ですが」
うん。そりゃ、他の魔王のダンジョンと『瞬間移動魔法陣』を直通で結ばせて欲しい、とか言われたらちょっとまだ不安だもんなー。
それなら、ミーカイルのヤツと同様に交易路を結ぶことで、その提案をやんわりと却下したい。
しかも、そのための船と労働力までこっち持ちと言うならば流石に嫌とは言えまい。
あと、折角だから、水龍族の生活環境整備にかこつけて、ラフィーエルさんのダンジョンとその町を見せて貰おう、という腹づもりである。
ふふふ……転んでも俺はタダでは起きんぞ……!
「はいっ!! 是非、よろしくおねがいしますッ!!」
だが、俺の申し出を意外なほどあっさりと屈託無く受け入れるラフィーエルさん。
他者に警戒心を抱かせない態度にかけては彼女を上回るヤツはなかなか居ないんじゃないかと思うと、実に侮りがたい人材である。
【両魔王の意志を確認しました!】
【魔王・カイトシェイドは、魔王・ラフィーエルと同盟を結びました!】
満面の笑みを浮かべるラフィーエルさんとは、その後、少し打ち合わせをしてお互い元の世界へと戻ったのだった。
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