152【ラフィーエルside】VSカイトシェイド②
「このポンコツ・アホ魔王ーーっっ!!! 貴女【付与魔法】はまともに使えるんじゃなかったんですかぁっ!」
「あああ~、ユキカゼちゃん、こめかみぐりぐりはやめてぇ~、ご、ゴメンナサイぃぃ!!」
私は、大量に出来てしまった失敗作の防具を目の前にして頭を抱えていた。
そう。冒険者さんたちへの宝箱に入れるための防具アイテムをつくっていたんだけど……
ちょっと、その……失敗しちゃったみたいで……
【付与魔法】は自分と相性の良い【媒体】が無い場合、ダンジョン・ポイントを代償にして魔道具を創ることができるんだけど、今回、私は、そのポイントをケチりすぎてしまったのだ……!
あうぅ……私の心の根底に流れる貧乏根性が悪いんですぅぅぅ……!
だって、今回、使えるダンジョン・ポイントが5万までだから、なるべく節約しなきゃ、って思ったんだもぉんっ!!
結果として、出来た全身防具が酷かった。
見た目はソコソコまともだし、着心地も悪くないし、ダメージを身体の方まで通さない、どんな体型の人でも魔力で伸び縮みするため装備することができるタイプの特殊防護服だ。
これだけの情報だと「どこが失敗作なの?」と言いたくなるだろう。
だが、その特殊防護服には、致命的な欠陥が発生してしまった。
それは、攻撃を受けた場合、そのダメージを引き受ける代わりに服のいたる所が壊れてはじけ飛ぶ!! と言う……絶妙な使えなさの防具、爆誕である!!
つまり、この防具、攻撃を防げば防ぐほど、着用者は裸に近づいて行く……という残念極まりない代物なのだ。
あああああ、私のアホーっ!!!
「しかも、こんなに大量に……!! どうするんですか、このポンコツ防具っ!!」
「……詐欺商品。……宝箱に入れてしまったら、評価がガタ落ち……」
カザハナちゃんも普段のジト目をさらにじっとりとさせて、作り出された防護服をつまみ上げている。
「うぅ……そうだよねぇ~……一応、全裸になるまでは、ダメージを完全に防げるんだけどね?」
「それが何かの救いになるとでも?」
「……うぅ……な、なりません……」
ユキカゼちゃんの指摘に思わず涙がちょちょぎれる。
きっと、カイトシェイドさんなら、こんなアホみたいな失敗しないんだろうなぁ……
「……苦渋選択。……自分達で使う……」
「はぁ……それしか無いようですね……」
結局、私たちはその防具を自分で使いながら、ダンジョンのボスをせざるを得ない状況になってしまったのだ。
うん……ウチ、自分達が使えるような、まともな防具……残ってないもんね……
結果は当然。
冒険者さん達の攻撃を受けるたびに弾け飛んで行く衣装……
素肌に傷はつかないのが、せめてもの救いなんだけど……は、恥ずかしいよぉぉ……!!
天国のお母さん……私たちは何か失ってはいけない大切なものを失った気がしています。
でも、私、魔王として頑張ってるよ……!!
うえーーーんっ!!
ユキカゼちゃんも、カザハナちゃんもごめんねぇぇぇっ!!!
不甲斐無い魔王で、本当、ごめんなさいいいいぃぃぃっ!!!
せめて、カイトシェイドさんに勝って、毎日お腹いっぱいごはんが食べられるようになりたいよー!
結局、限界ギリギリまで戦って、さすがに、これ以上は、女の子の尊厳が危ないのっ! となったら宝箱を放り出してバックヤードに逃げ込むことにしたんだけど……
このアクシデントが、思いの外、冒険者さん達に大人気になってしまったのだ。
お陰様で、冒険者ギルドの『格付け』では、なんと、カイトシェイドさんのダンジョンの順位を上回ったのである!!
うわーーい!! 快挙だよ、快挙!
快挙なんだけど……ふ……複雑……
い、いや、でも、勝てば官軍・負ければ賊軍だから結果オーライだよね?
「結果オーライな訳がないでしょうっ!!! ラフィーエル様ッ!! ちょっとココに正座してください、正座ぁッ!」
半泣き半裸のユキカゼちゃんの瞳に炎が燃えている。
おぉ……水と炎が同居するって、あり得るんだね……
「ゆ、ユキカゼちゃん……ほら、えーと、棚から牡丹餅?」
「こんな辱めを肯定するな、アホーーーッッ!!! しかも、妙に人気が出ちゃったから、途中から止められないじゃないですか!? このスタイルッ!!」
「ああっ!! そ、そうだぁ……! で、でも、あと一週間くらいだし……ね?」
「地獄のような長さですっ!!!」
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