147 戦場を知ろう!
「……そんな訳で、魔王・ラフィーエルと戦う事になったから、力を貸して欲しい」
「旦那の『そんな訳で』は、いつも、予想の斜め上だな」
俺は、冒険者側のブレーンとも呼べるボーギルを【会議空間】に呼び出した。
……一応、ボーギルは寵愛枠から外して四天王枠に入れ直してあるからね? 念のため。
「旦那は、あそこに行った事があるのか? ラビリンはかなり特殊な土地だぞ?」
「俺が? ダンジョン・エリア外だと一般人レベルの俺が??」
「……あー……うん、悪かった。だが、俺があの街に行ったのは結構前だからな。最近の事情は俺よりアルファやコギッツに聞いた方が良いかもしれん」
そう前置きをしたうえで、ラビリンの八百万迷宮群の特徴を教えてくれた。
まずここは、その名の通り無数のダンジョンへとつながる入口が大量発生している地域で、日々、たくさんの迷宮が生まれ、そして消えて行く。
ハッキリ言って、潜り切れないくらいの数のダンジョンが口を開けているので、ココを探索する冒険者達は、他の地域とはかなり違う性質があるらしい。
それは、冒険者ギルドの運営にも関係している。
大概の街の冒険者ギルドは、依頼主からの依頼……『畑を荒らすゴブリンを退治してほしい』とか『〇〇病に効く薬草を取って来て欲しい』とか『○○という町まで護衛をして欲しい』みたいな、それぞれの依頼を掲示し、それごとに適正価格な報酬を添えて冒険者達に斡旋しているのだが、ラビリンの街は違う。
ここの特徴は、あまりにダンジョンがいっぱいあり過ぎるので『冒険者=ダンジョンに潜る人』を指すくらいに、専門職化している点だ。
そして、もう一つ異彩を放っているのが、大量にあるダンジョンに『人気格付け』を実施している点だそうだ。
そう。
八百万、の名前はダテではない。
ぶっちゃけ、ダンジョンが多すぎて、全部は管理どころか、探索すらしきれていないのだ。
しかも、不人気ダンジョンだと、冒険者が全然来ないので、結局成長できずに数日で消えてしまうものもザラ。
そんな訳で、個々の冒険者たちは、大きく分けると2種類の人種が存在しているそうだ。
まずは『人気格付けの上位から順に潜っていくタイプ』……基本的にはこちらのタイプが全体の9割を占める多数派だ。
そして、もう一方が、『新規のダンジョンに率先して潜り、その迷宮がどれだけ探索しやすいか評価してギルドに報告するタイプ』……通称、スコッパーと呼ばれるタイプ。
今回、ラフィーエルさんとの対戦は、お互い無名状態の新ダンジョンを期間限定で運用するわけだから、まずはこのスコッパーさんの目に留まらないと埋もれてしまう可能性が高い。
「つーわけで、最近の迷宮都市・ラビリンはどんな感じか分かるか?」
俺は、ボーギルに言われたアルファとコギッツくんも【会議空間】に呼び出している。
なお、アルファは四天王枠、コギッツくんはレベルが上がった時に追加された育成枠にぶち込んである。
「あー……いや、俺が師匠と一緒に行った時は、その『格付け』をチェックして上位のヤツに入っていたから、スコッパー側の仕事はよくわからねぇぞ?」
「そうっスね……オレも数回しか行った事はないっスけど、『格付け』上位から見て、その中でレベルが低いオレ達でも入れるダンジョンに潜っていたっス」
……ふむふむ。
聞けば、この格付けには一位から順に、そのダンジョンの『名前』『適正レベル』『入手しやすいアイテム』が記されているらしい。一種のランキング表みたいなもので、それを参考にする冒険者が大多数だそうだ。
つまり、短期間で一定のファンを呼び込むには、このランキング表に載る必要性がある。
「有名どころだと、適正レベルがS級以上の『無限迷宮』っスね……まぁ、入ったことはないっスけど……」
「ああ、あれは殿堂入りしてるからな」
「殿堂入り?」
何でも、そのランキングとやらは、毎日、毎月、毎年、殿堂入り、と複数のカウントタイミングが存在しているらしいのだ。
「まぁ、旦那の管理していた『魔王城』だって、ある種殿堂入りしてたんだぞ? ラビリンに在った訳じゃないのに、最強・最狂・最凶として有名だったからな」
「そうっスね~」
さすがじいちゃん。
だが、まぁ、今回のバトルに限っては、その評価はあまり関係が無い。
「でも、ラビリンの場合は『格付け』に載っていない迷宮ってなかなか足が向かないんスよね。」
「それって、『毎日版』でも何でも良いから載ればいいのか?」
「何でも良いって言ってもまずは『毎日版』に載らない限りは、他のものに載ることはないぜ? 一応、俺の師匠曰く、初心者は『殿堂入り』や『毎年版』みたいな、比較的変動の少ないダンジョンから適正レベルを選んだ方が良い、とは言われたぜ。『毎日版』をチェックしているようなヤツは中級以上なんじゃねーかな?」
無論、ダンジョンの集客能力を考えると『殿堂入り』が最強なのは言うまでもないが、今回はあくまでもラフィーエルさんとの勝負。
戦いの期間が終了したら、サブ・ダンジョンのある異空間は自動的に消滅だ。
この場合は『迷宮代償』が効かない代わりに、サブ・ダンジョン作成のデメリット……本家ダンジョンのポイント増加率の半減など……が無いのはありがたい。
だが、バトル期間の問題で『毎月版』や『毎年版』に載ることはほぼ不可能に近いだろう。
となると、俺達が狙うのは『毎日版』のランキングとなる。
しかも、アルファ曰く『毎日版』を使うような冒険者は中級以上らしい。
なるほど。
確かに『毎日版』は情報が早いが、その分まだ前人未到地域も多く、大きな危険が残っている可能性がある。
その反面、初めてエリア・キーパーを排除した時にのみ発生するファースト・ドロップの宝箱を求める、という需要も存在しているので、危険を承知で『未踏アリ』に挑む中級以上が存在する訳だ。
「あの~……カイトシェイドの旦那さん、何だったら、オレ達がラビリンに出向いて、情報収集するっスか?」
「おー、そうだな。それをやって貰えるとありがたいな」
そんな訳で、コギッツくんの情報を元に、バトル用のサブダンジョンを創ることにした。
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