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136 お金の負担を押し付けよう!


「カイトシェイド様、港をつくるには、我々だけのお金では足りません」


「え? マジで?」


「はい」


 カウティ殿、エドマエンの村長たちの根回しを終わらせた俺は、分身体から意識を本体へ戻した途端、ベータからダメ出しを貰ってしまった。


「え? ダンジョンからの魔法石は?」


「はい、魔法石の生産量は右肩上がりでゆっくり伸びておりますが、それでも、半分程度は冒険者たちの為に残しておく必要性があります」


 ……そりゃそうか。


「それに、当家も流動性の高い資産を使い尽くす訳にも参りませんし、新事業への投資も不可欠、そして内部留保を皆無にする訳にもいきません」


 ……うん、そうだね。


「……ですので、港の建設費用は、皆様方にもご負担いただきましょう」


「うん?」


 ベータの瞳が静かな光をたたえている。


「確かに、ミーカイル様と交易の道筋を立てていただいたのは旦那様ですが、何も港の建設から、船舶の作成、人員の確保、交易資材の準備、その全てを旦那様が……当家だけが負担する必要性はございません」


「あの、ベータさん?」


「交易により、もっとも潤うのはここ、ハポネスの街や商業ギルドです。彼等にも平等に負担いただきましょう……ですので、旦那様? 次の会合には私もお連れください」


 おお……ベータのヤツが会計諸表と題目の書かれた書類を片手に燃えている。


 

 そんな訳で、港建設の調整会議は俺、領主代理・ダーイリダ殿、冒険者ギルド長・ボーギル、商業ギルド長・ショーギル、医療組合のドクター・ザヤックさん、そしてウチのベータさんの6人が一斉に顔を合わせることなった。


 ちなみに、ドクター・ザヤックさんは、以前、町中の回復術師達の【才能開花】をした時に、真っ先の俺の施術を受けてくれた、いつもニコニコした目つきの割とお若いドクターだ。

 元々、かなりの【回復魔法】の使い手だったが、今では、【治癒】【解毒】【再生】【蘇生】【診断】……と、本当に治療系にトコトン特化した使い手に育っている。

 

 調整会議、と銘打っているものの、その実態は『どこがどれだけお金を出すか』と『手に入れた利益の分配方法』の綱引き合戦だ。


 できる事なら全ての積み荷に手数料と言う名の税金を掛けたいダーイリダ殿。

 それをせめて、売上の数%で済ませたいショーギル殿。

 ボーギルは魔物素材は優先的に冒険者ギルドが扱いたいらしい。

 そして、ウチの負担を可能な限り他所に回したいベータ。


 おぉ……みんなの背中に何か、獅子と虎と龍と鳳凰が見える気がする……


「ははは……皆さん、熱気がちがいますねぇ……」


 俺と、ザヤック殿は正直ちょっと蚊帳の外だ。


「ちなみに、ザヤック殿はどんなご希望なのでしょうか?」


「いえ、ウチは、港に治療院を作って欲しいなぁ、と思いまして……でも、なんだか場違いな感じで……」


「治療院……ですか? 港に? ダンジョンの出入口付近ではなく?」


「はい。港に、です」


 まぁ、ウチの地下ダンジョンの近くには俺の治療院が有るからな。


 聞けば、港の治療院とは、感染しやすい伝染病を街に持ち込まないための仕組みなのだそうだ。

 【診断】のスキルがある回復術師を数名、港に常駐させ、病人が居たら即座に隔離・治療をしてしまう特殊医療施設なのだとか。

 こういう施設が有れば、ダンジョンに潜れるほどの体力が無い町医者にとっては、魅力的な就職先になるらしい。


「いやぁ、カイトシェイド様に能力を開花させていただくまではそんな事、考えもしなかったんですけどね~?」


「えっ!? そうなんですか?」

 

 ハポネスでは、町医者のほとんどが冒険者と兼任したり、教師を兼任したり……何かしら兼業をするようになってしまっている。

 この街で、回復術一本で食っていくには、このザヤック殿くらい特化していないとなかなか難しいのだろう。

 流石に【蘇生】まで扱える術者はハポネスでも数人しかいない。


「はい。……でも、この街に【診断】が使える術者は多いですから」


 確かに。疫病は広がると厄介だからな。そういう施設は有りかもしれない。


「いいですねぇ……でも、折角ですし『治療院』ではなく、『港湾検疫院こうわんけんえきいん』とでも名付けますか?『()病を()査する』から()()()です」


「あはは、その方が分かりやすいですね」


 俺達がそんなほのぼのした会話をしている間に、港の作成費用はそれぞれ割り振りが決まったようだ。


 俺としては、もともと全部ウチが持つと思っていたのが、かなり減ったので助かった。

 うん、流石ベータさん。ウチの負担額は予算内に納めてくれたようだ。

 この手の作業では一番、頼りになります。


 俺?

 うん、ザヤック殿と雑談しかしてないね……

 はははー……いや、でも、ほら、得意分野っていうのが、それぞれありますし?


 なにげにその『検疫院』の件、ハコモノは領主側が作り、管理は医療組合に任せる事をダーイリダ殿に飲ませたし!

 

 うん、俺は頑張った!!!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 転生者でもないのに主人公の知識が現実より過ぎるのは少し苦しいと思います……
[良い点] シッカリ財布の紐を絞める、頼れる執事・ベータ。 ザヤックさん。 良いですね!医療にかける好青年! 頭も(と言うか気遣い?)良さそう! バチバチやってる綱引きの外でほのぼのしてるカイトシ…
[良い点]  貿易港で防疫! (すみません、血迷いました)
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