132 水龍族を受け入れよう!
そこで、俺はもう一人の来訪者……こちらは水龍族の女だ。
静かに畏まる女性に視線を移した。
コイツ……確か、マドラの部下だったはずだ。
魔王城の水龍族といえば、やれ水質ガーーとか、水深ガーーとか、水温ガーーと龍族の中では割と住環境にうるさい種族で、ヒステリックで面倒くさい意識高い系おばさん集団ってイメージだったんだが、静かに土下座していると印象違うな……
「水龍族のお前は?」
「はっ! 私は水龍族の代表ケイトラと申します。我々も決して無理は申しません……! ほとんどの者が人化を習得していますし……ただ、連れている一族の中にはまだ幼い者もおります。せめて、その者だけは魔力が豊富で新鮮な水をご用意いただければありがたく存じます!!」
「……で、水龍族は何体ぐらい居るんだ?」
「は、はい、20体ほど……」
「ケイトラさんのご家族だそうデス」
ネーヴェリクがそう補足する。
こちらは、一応、水陸両用ではあるのだが、本来の住環境は水中。
つまり、湖や池、海などの一部をダンジョン・エリアに取り込まないと体調を崩してしまう種族だ。
広域レベルの湖や海は、普段であれば、あまりダンジョン・エリアを好んで広げる場所ではない。
しかし、コイツ等は運が良い。
ちょうど交易に手を付けようとしていたタイミングだから、エリアを海側に広げようとしていた矢先だったのだ。
「そうだな。それならば……此処の近くに海がある。そこを我がダンジョン・エリアとし、特別に住環境を整備してやるが、それでも構わないか?」
「は、はい……ほとんどの者は海に馴染めると思います……ただ、何名か、特殊な属性の者達と、未分化の子供に関しては……その、ご無理を承知で、それぞれの属性に対応した棲家をいただきたく存じます!」
「特殊な属性のヤツ?」
「はい、毒属性が4体ほど。それ以外は、お湯属性が2体、まだ未分化の子供が1体……子供はまだ本当に卵から孵ったばかり……せめて、5年は魔力水で育てたいと考えております」
な、なるほど……?
毒の沼、毒の池など、猛毒の液体の中で生活する、難儀な住環境メインなヤツが4体。
コイツ等は、地下ダンジョンに彼ら専用エリアを設けるしかなさそうだ。
次に、お湯属性。
魔王城では、地下にマグマエリアを完備していたから、天然の湯が豊富でしたからね?
そりゃ、お風呂好きなヤツはお湯属性になっちゃうよね……?
俺、自分で言うのも何だけど『水回りの匠』でしたし?
うーーーーん、でも、ネーヴェリクの作ってくれた銭湯に竜をぶち込むには狭すぎるなぁ……
アイツ等、人化の術を解くと、ギルドの建物を簡単に押しつぶせるくらいの大きさになるからな。
あ。待てよ?
サラマンダーさんのエリアに、半分水を入れてやれば良くないか?
あそこ、ダンジョン・ポイントぶち込んでマグマが結構豊富になるように地形操作しているし、サラマンダーさんもまだそこまで増えていないし。そうだ、そうしよう!
そして、未分化1体……
実は、水龍族は5歳までの育った環境で属性が多少異なってくる種族なのだ。
5年間は大きさも人間の新生児程度の大きさだから、魔力の豊富な新鮮な液体さえあれば馴染んでくれる。
レアな属性だと、マグマで育てたら炎属性になったり、液体金属で育てたら金属性になったり、聖水で育てたら光属性になったり……と、なかなかおもしろい進化を遂げる。
……オメガに預けてみたら【夢属性】とか、シスター・ウサミンに育ててもらったら【月属性】とかになるのかな……?
ちょっと面白そうだ。
「それに、我々の棲家を整えて下さるのであれば、どのような仕事にも従事いたします!」
「……どのような仕事にも……ね」
「は、はい!」
「じゃぁ、聞くが……お前の一族に、仮に『人間の船を引っ張ってどこそこの港へ行け』と、俺が命じたらきちんと仕事をこなすか?」
「当然でございますッ!!」
えっ!? マジで?
嘘、お前さん達、魔王城では意識高い系だったから「そんな、海の荷馬車引くような仕事はゴメンだわ!」って言って、全然手伝ってくれなかったじゃん!?
……魔王城から逃げ出して放浪生活したのがそんなにキツかったのかな?
だが、これは良い事を聞いたぞ?
ふふふ、未分化の子供は別として、他の奴等は、一人で1隻くらいの船なら牽いてミーカイルのところを往復するくらい出来るだろう。
お湯属性や毒属性とはいえ、水龍族は水龍族だし。
ボーギルに人材派遣してもらうより簡単だ。
もちろん、水龍族は最大でも20体しか居ないし、龍族はあまり頻繁に子供を産む種でもないから人間側の人材だって多いに越したことは無い。
だが、緊急性が弱まった分、交易が成立してから徐々に増やしていく手も取れるようになる。
これは、願ったりかなったりだ。
「良いだろう。それならば、食人鬼および水龍族を我が陣営に迎え入れようではないか」
「「あ、ありがとうございます!!」」
タデクーとケイトラはまたしても深々と頭を床にこすりつけた。
そういう事になったので、俺は久しぶりに『分身体』をつくると、一体はザグラダ一門のところへ、もう一体は冒険者ギルドのルシーファのところへ、それぞれダンジョン内瞬間移動を発動させた。
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