131 食人鬼を受け入れよう!
「か、カイトシェイド様……ま、魔王城での無礼な働き……大変申し訳ありませんでした……ッ!!」
ネーヴェリクに案内されて応接室に入ったグールさんの代表らしき男が俺の姿を一目見るなり、床に頭を擦りつけるように深々と土下座した。
「な、なにとぞ、なにとぞ我々の一族にご慈悲をッ!!」
水龍族の代表もあわててグールさんに引き続き頭を垂れてつくばう。
と、そのグールの男に見覚えがある。
「あーーー!! お前っ!? 魔王城ではいつも俺の『分身体』を殺して肝臓だけ喰っていただろ!! えーと、確かタデクーだな! そうだろ!?」
「ヒィっ……!! も、申しわけ……」
俺が名前を出した事で、そのデカい体を限界まで縮め、ガタガタと冷や汗を流しながら震え始める食人鬼のタデクー。
食人鬼とは、その名のとおり、主に人間・亜人を主食とする魔族である。
実は俺、ばあちゃんが人間だから、食人鬼さんにとっては、結構、美味な肉質らしいのだ。
ただ、魔王城に居た頃は『分身体』であるが故に「魔力が薄い」とあまり好かれなかったが、それでも、綿菓子のノリで『分身体』を殺して喰っていた奴が居たくらいだ。
その筆頭がこのタデクー。
コイツには結構な数の分身体がヤられている。
「しかも、肝臓だけ喰ったらそのまま放置しやがって!」
せめてバラバラに砕くか、心臓を喰ってくれたら、そこから魔力が抜けて、分けていた魔力の一部が本体へ戻るから良いものの、中途半端に臓器だけえぐり出して殺すもんだから、後かたずけは俺自身の別の『分身体』が作業する、というこの実に不毛な作業を強いられたのだ!
ぶっちゃけ、ルシーファやサーキュに八つ当たりで殺された『分身体』より、コイツに喰われた『分身体』の方が多いくらいだ。
思い出して、ふんす! ふんす! と、鼻息荒く「せめて、奇麗に全部喰うか、テメェでばらしてかたずけろ!」と力説してしまった。
俺が腹を立てているのが伝わったのだろう。
タデクーのヤツは頭を床にめり込ませる勢いで叫んだ。
「も、申し訳ございません!! 我々、今後、食の好みをどうこう言うことはいたしません!!」
「……ほう?」
食人鬼は意外とグルメで大食漢なヤツが多いのが特徴だったりもするのだ。
ちなみに、大食漢というのは、魔力量的な意味なので、高い魔力をもつ人間やエルフ等の亜人を殺すと、腕一本程度でも十分満腹になるのだが、魔力量の少ないタイプの人間だと数人はペロリと平らげてしまう。
そして、グルメと言うのは「15歳未満の処女でないと嫌」とか「倒した人間の心臓と脳と卵巣か精巣しか食べない」とか「魔力量が一定以下は喰うに値しない」とか「断末魔が聞けないと食欲がわかない」とか……
とにかく食に対するこだわりが強いのも特徴の一つなのだ。
「それは……俺が許可した人間以外は喰わない、ということで良いのか?」
「もちろんでございますっ!!」
「仮に……『魔導クローン』の生産が安定するまでは『腐肉サボテン』で我慢しろ、と言ったら?」
魔王城では、もともとあまり人間が居なかったので、人間の魔導クローン体が主食だったはず。
だが、まだハポネスでは『魔導クローン』を創るための準備が整っていない。
後でルシーファにでも聞いておくか。魔導クローンの作り方。
「どのような粗食にも耐える所存っ!!」
「なるほど……では、万が一、俺が殺しても良いと許可した人間以外を殺した場合は……」
「我が一族から、そのような不届き者が発生しましたら、私、タデクーが責任をもってその者を処罰し、そのうえで、我が首を魔王・カイトシェイド様に捧げますっ!!」
魔族は基本的には弱肉強食。
食人鬼の現トップであるタデクーにその覚悟があるなら、ハポネスでもやっていけるだろう。
食人鬼は、基礎ダンジョン・ポイントが高いので、地下ダンジョンに居てもらう分には結構、美味しい存在なのだ。
ふふふ……しかも、こういう、「人間」と「食人鬼」みたいな天敵同士を共存させると異種族共存特典で全体のダンジョン・ポイント増加率が上昇するし……
密かに美味しいッ!! 難民、美味しいッ!!!
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