127 出向者をゲットしよう!
「じゃあ僕は……姉さんを苦しめていたあの魔王の嘘の記憶を信じて……?」
ちなみに、ミーカイル自身は他人の記憶を読み取る能力が無いらしい。
俺も他人の記憶を読むことはできるのだが、ある程度レベルが下の相手でないと上手く読めないし、他人の記憶を別の他人に見せたり、記憶そのものを操作できる程の適性はない。
少し手間だったが、精神操作系の適性が高いオメガにダンジョン・ポイントをつぎ込んで成長させ、俺たちの記憶情報を見せてやったところ、すっかり落ち込んで、へっしょりぺそ~ん、としてしまった。
あ、4枚もある羽が生まれたての蝶のように、くっしゃくしゃに縮んでる……
「でも、アイツ、僕に『忠誠の誓い』までしたのに……」
「え!? てことは、サタナスのヤツ、お前の部下に居るのか!?」
「居たじゃないか! ダンジョン・攻略戦でも戦ってただろ!? お前の部下たちがトラオウとフジョシーヌを倒す前にノックアウトしてたじゃないか!?」
「え……あのバカ魔王だろ? 居たか?」「んんん? 記憶にありませんぞ」「……ネーヴェリクも覚えていないデス……」「いや、ミーカイルの部下達は、ちゃんと一人で扉を開けられたぞ? な、カシコ?」「そうよね、アンデッドでもその程度の知能は有ったわよ?」「そもそも、俺やウサミンは知らないっス、その人」「は、はい……すいません、よく分からなくて……」「サーキュ、おぬし一番詳しいであろう?」「お、覚えてないわよ! あの時はゴブロー様達に付いて行くのに必死で!」「ん~、あのおじちゃん、ボクも見てないねぇ」「私も見た記憶がありません……申し訳ありません、旦那様」
「……」「……」「……」
ハイッ!! どうやら、ウチの連中の記憶には無いようです!!!
結局……ミーカイル陣営に戻ると、サタナスのヤツはフジョシーヌちゃんとトラオウを除いた目ぼしい獣魔人達を殺してダンジョンから逃亡した後だった、と判明した。
意識が戻ったトラオウの嘆き方が半端なかったらしいけど、ミーカイルのヤツとフジョシーヌちゃんが必死に慰めて落ち着かせたらしい。
気持ちは分かるが、また先走られては……ね?
しっかし、サタナスの野郎……
とっ捕まえて、封印でもしとかないと、今後もこんな迷惑行為をしでかしかねないな……!
ちなみに、破壊したミーカイルのダンジョン・コアだが、1,2か月もすれば、また自然に生まれるらしい。
その間は、生きたダンジョン特有の資材……魔法石などは発生しなくなるし、地下ダンジョン整備は、自分たちでコツコツ維持しておかないとならないが、コアを破壊されたからと言って、即座にダンジョンそのものが崩壊するわけではないので、まぁ、どうにでもなるのだろう。
そして、ダンジョン・防衛戦の景品……俺達が負けた時はルシーファを譲る約束になっていたが、俺達が勝った場合の景品が未確定だった件だが、俺が色々ゴネた結果、ほぼ、同等のダンジョン・ポイントを持つ魔族が時々ウチに出向して来てくれることで話がついた。
……ついた、の、だが……
ハポネスが通常営業に戻った俺の屋敷の応接室。
「……おい」
「やぁ、今日は診療所なんだって? 魔王なのに一般住民のケアまでしてるの? マメだねー」
「何で貴様がウチの応接室でココル・プディングを喰ってやがるんだ!? ミーカイルッ!! ベータも、こんな奴、わざわざ応接室に通さなくても良いぞ!?」
ふてぶてしい態度で応接室のソファに寝そべり、シスター・ウサミンの作ってくれたココル・プディングの半分がすでにヤツの胃袋に消えている。
「もうしわけありません、旦那様……しかし、その……」
ベータのヤツがチラリと横に立っているボーギルを見つめた。
「コイツ、あんまりにウチのルシを構いすぎて、な……ルシのヤツが、ギルドの作業スペースにまで逃げ込んで来るようになっちまって……流石に、業務に支障をきたすから旦那のところで預かって欲しいんだ。」
あ、ハイ……冒険者ギルドを追い出された訳ですね?
「お前、ホント……何でウチに居るんだよ?」
「姉さんと同じくらいのダンジョン・ポイントを生み出せるヤツを時々『出向』させるって話になっただろ? 姉さんと同じポイントを出せるなんて、大天使の僕くらいなものだよ。それと『出向』扱いだと他人のダンジョンであるココまで【瞬間移動】できるんだよ、知ってた?」
ぱくり、と。
ココル・プディングを己の胃袋へと消し飛ばしながら言葉を続ける。
「便利だよね……まぁ、戻るにはキミの『解出向』の承認を貰わないと戻れないし、僕の経験値は全部キミに行っちゃうのが癪だけど……でも、まぁ、姉さんにも会えるし……ああ! そうそう、早く姉さんを成長させてよね? このままじゃ僕が犯罪者みたいだからさ。……それにしてもこのココル・プディング美味しいよね?」
「さっさと『解出向』しろぉぉぉ!!!」
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