126 戦後処理をしよう!
「しかし、なんで突然ダンジョン・攻略戦なんておっぱじめる事にしたんだよ?」
俺は牢の中で不貞腐れているミーカイルに問いかけた。
「……ふんっ!」
ちっ……面倒くさい奴だなー……
そっちは勝手に理由をこじつけて攻撃してくるくせに、その理由を聞くとだんまりかよ……
あ、待てよ?
「……おい、ルシーファ、てめぇ、ちょっとツラ貸せや……」
「なんですか?」
俺は戻って来たカシコちゃんとボーギルに引っ付いて二人を労っていたちび天使を手元に呼び寄せる。
ひょいっと翼を掴んで持ち上げると、首元にナイフを突きつける感じでティースプーンを突きつけた。
「良いか、魔王・ミーカイル! 素直に話さなければ、この人質がどうなってもいいのか!?」
……仕方ないよね……
さっきまでルシーファのヤツと茶を飲んでたから、ティースプーンしか持ってなかったんだもん……
いや、でもさ、ほら、相手からしたら、敵の魔王が握りしめているスプーンだもんね?
何かこう、思わせぶれるんじゃないかなー? と踏んでいる。
「え?」
……そういう、深い意図があるのだ。
だから「何やってんですか? 頭おかしくなったんですか?」っていう目で俺を見るなルシーファ。
「えっ!? 姉さん!? 本当に……小さい姉さんだぁぁぁぁ!? なんで!? 可愛い!! くそ、ひ、卑怯なっ!! 僕の姉さんに触れるなッ!!!」
「ええ?」
今だけは「何、言ってんだ? コイツ……」って顔をしてやりなさんな、ルシーファさんや……
読め、読め、空気!
俺とミーカイルを何度か順番に見つめたルシーファは少し悩んだ様子で考え込む。
そして、やおら、衝撃の言葉を発した。
「あ~れ~、お助けくださいまーしー」
「ぶふぉっ!!」
「ちょ!? カイトシェイドッ!!」
そ、そうか……コイツ、そこまでアホじゃないから、空気くらいは読めるか。
読んだ結果が、あの調子ハズレの命乞い(?)だと思うと余計腹筋が痙攣する。
「ぶっ……ふぐっ……くく、くくくっ」
「鼻水噴き出さないでくださいよっ!! ああっ、わたしのメガネがっ」
「わ、悪ぃ……くふふっ」
「ぼ、僕の姉さんを汚すなぁぁぁぁっ!! 分かった、分かったよ!! 全部話すから、姉さんを放せえぇぇぇっ!!」
……という訳で事情を詳しく聞いたところ、どうやらシシオウを殺害する記録映像の魔水晶と、探していたはずの姉=ルシーファを嬲りモノにして堕天させ、最終的には八つ裂きにして殺害した記録映像の魔水晶の二つがサタナスから送り付けられたのだとか。
つーか、わざわざ殺したり八つ裂きにしたりする場面を記録しとくって悪趣味すぎだろ、サタナスのヤツ……
しかも、それを送り付けるか?
他人の心を抉る才能に関しては天才的だな、アイツ……
で、大切な部下と最愛の姉を殺された怒りで戦争準備している時に、シシオウの兄であるトラオウが弟の最期を知ってしまい、一人、先走る。
だが、どうしたことか、西の魔王城は荒れ果てており、角も片方をへし折られたサタナスが地団駄を踏んでいたそうな。
一瞬でフルボッコにしたものの、魔王とは思えない余りの弱さを不審に思ったトラオウがサタナスの記憶を読んだところ、俺が魔王へと下克上を果たした事を知る。
そして、さらにサタナスの記憶では、シシオウ、ルシーファを殺したのが俺の指示だった……と、なっていたのだとか。
しかも、全ての悪事は俺に操られていただけのことで、誠心誠意ミーカイルのヤツに仕えるから助けて欲しいと命乞いまでしたらしい。
え? ……マジでなに言ってるの……?
「どういうことだ!? それ!?」
「こっちが聞きたいよ! でもトラオウが僕に嘘を言うはずないし……」
「ねぇ……それなんだけど……」
話を聞いていたサーキュが手を挙げた。
「サタナス様が他人の記憶を弄れる、って話は知ってるかしら?」
え? そうなの? 何それ、怖っ!?
例えば、俺がネーヴェリクの事を奇麗さっぱり忘れて「誰、この女?」状態になるって事だよね?
「……そ……そう、なんですか?」
話の流れ的に、かなりの被害者である可能性が高いルシーファがサーキュに問いかけた。
あ、表情こそ笑顔だけど、明かに顔色が悪いし、翼の先がぷるぷる震えてる。
「そうよ……って、この子ルシーファに似てるわね?」
あぁ……サーキュってこのチビ天使がルシーファの転生体だって知らなかったっけか……
「そのルシーファなんか、何度となく記憶を消されたり、改変されたりしてたわよ。サタナス様のお気に入りだったもの」
「へ……へぇ~……知りま、せん、でした……」
サーキュの一言に、ダラダラと冷汗を流しながら一番衝撃を受けているチビ天使。
おもわず、カシコちゃんが、そんなルシーファをぎゅっと抱きしめた。
コイツが異様にサタナスを怖がるのは、記憶が無い分、恐怖心だけが残ってしまっているせいなのかもな……
ドエムンの前で詰まっちゃった滑稽な虫以下知能のサタナスを見て、爆笑するならともかく、ひたすら怯えられるってスゲェな!? お前、結構ビビリだったんだな! ……とか考えてて悪かったよ。
「だから、自分自身の記憶を変更する、なんて朝飯前のはずよ?」
「それデシたら、他にもサタナス様の事を知っている魔族の皆さんの記憶も読んで判断すれば良いのではないデショウか? それなら、ネーヴェリクも、ご協力いたしマス」
「ああ、俺も別に構わないぞ」
それで誤解が解けるなら安いものである。
「あの……わたしも、ご協力……いたしますよ?」
その言葉を聞いて、ミーカイルは膝から崩れ落ちた。
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