122 ダンジョン・攻略戦③
「どうだった? ルシーファに作らせた『聖水』と『魔マタタビB』の威力は?」
ちなみに、聖水はカシコちゃんの時空魔法の限界容量ギリギリまで持たせてある。
今回、ネーヴェリクからダンジョンの構造を聞いて、俺は放水作戦を決行させてもらったのだ。
実は、野性のダンジョン・コアの場合、階層ごとに自動的に、地下へ、地下へ……と傾斜が付いてしまうことがある。
些細な事なのだが、これを放置してしまうと、意外と大きな落とし穴になったりするのだ。
ふふふ……下水道の魔術師を舐めるなよ!!
ルシーファのヤツを魔法の使い過ぎでヘロッヘロになるまで酷使してしまったが、自分自身が景品にされていることを知った本人が俄然やる気を出してくれたのだ。
うむ、良き、良き。
『カイトシェイド様、予想より良い効き目デス』
俺は、通信状態になっているネーヴェリクからの情報を確認しつつ、来訪用の魔法陣を睨みつけていた。
しかし、どう言うことだ?
時間になったのにミーカイル側から、誰も攻めて来ないんだが……?
今回は、ダンジョンの【階層変更】すら実施していない。
来訪用魔法陣は例の闘技場内に設置してある。
そして、俺の立ち位置はその闘技場の中。
今回のコンセプトは、「瞬間移動した瞬間ラスボスが目の前に居る」なのだが、誰も来ないってどういう事だ?
「……ねぇ、カイトシェイド……本当に、もう始まっているんですよね?」
ダンジョン・コアを持ったルシーファが少し不安気にこちらを見ている。
いや、気持ちは分かるけど……
「も、もちろん、始まってるぜ、ほら!」
俺はネーヴェリクの視覚情報を闘技場のスクリーンにでかでかと映し出した。
育成型魔王だと、役職枠の皆が見ている視点は、こうやって共有化することが可能らしく、ミーカイルのダンジョンをガンガン突き進んでいる様子が写し出されている。
「うん、先頭はドエムン、アルファ、ネーヴェリクと……妥当だな」
防衛特化のドエムンに、一度敵のダンジョン内をコッソリ覗いていて造りの分かっている上に、霧化で物理ダメージを無効化できるネーヴェリクと攻撃力が高めのアルファ。
殿は、ボーギルとカシコちゃんコンビか。
他の皆は中央部分から周囲を警戒しつつ、遠距離攻撃が得意なメンバーは出てくる敵を葬り去っているらしい。
ベータの【金銭出納帳】、コギッツくんの【炎魔法】、それにオメガの【強制睡眠】等がガンガン飛び交っている。
『これ以上、好き勝手はさせませんわ!!』
お? ボスエリアかな?
突き進んでいたネーヴェリク達の目の前に、見覚えのある巫女装束の美少女が皆の前に立ちはだかる。
屍鬼のフジョシーヌちゃんだ。
『全く、あのような手でワシらをココまで追い詰めるとは……』
色違いのシシオウみたいな魔族がその隣に並び立つ。
これが多分、シシオウの兄だか弟だか忘れたけど、その血縁者だろう。
……そっくりだな……
「あれ? シシオウ……ですか?」
「いや、アイツ、シシオウの兄弟らしいぜ?」
「兄弟ですか……あ、そう言えば、あのサキュバスって、サーキュのお母様ですか?」
あぁ、ルシーファはウチにサーキュが居る事を知らなかったっけ。
「いや、あれ、サーキュだぞ」
「えっ!? だいぶ雰囲気、変わりましたね……」
魔王城の頃から比べると、イケイケ美女からしっとり熟女だから、確かに変わってるけど……
でも、天使になって幼児化しているお前にだけは雰囲気どうこう言われたくないと思う。
まぁ、身体が幼児退行したおかげなのか、それとも一度死んで転生したおかげなのか……
ルシーファのヤツ、かなり性格も丸くなって付き合いやすくなってるから別に良いけどさ。
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