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108 【サタナスside】そのころのアークデーモン


「ぐおおぉぉぉっ、ぐあァァァァっ!?」


 魔王城へ強制的に移動したサタナスは顔を押さえてのたうち回っていた。

 カイトシェイドの攻撃魔法で受けた傷自体はそれほど大きくない。

 だが、自慢の角は片方が欠け、無残な姿を晒している。


「くそっ……くそぉっ……!」


 思わず口をつくのは呪詛の声だ。


 だが、その声をかき消すように、朗らかで、明快で、そして、無慈悲な声が響いた。


【魔王・サタナスは、部下・カイトシェイドに敗れました!!】

【下克上により、その存在のステージが下がりました!】


「なっ!?」


【退行を実行します!!】


「ま、待てっ!! 余は、あんな雑用係に敗れてはいないッ!!!」


 サタナスの悲痛な叫びが誰も居ない魔王城にこだまする。

 だが、その声がサタナスの言葉を聞き入れるはずもなく……一切容赦のない事務的な事実を淡々と告げた。


【魔王・サタナスはアーク・デーモンにランクダウンします!】


「な!? 余が……余が、アーク・デーモンだと!? ふざけるなッ!!」


 デーモン種の中では、上から2番目……『グレーター・デーモン』よりも格下なのが『アーク・デーモン』である。


【搾取型魔王種による強化が無効化されます!】

【ステイタスが一律低下します!】


「ふぐごぉぉぉぉぉっ!!」


 サタナスは怒りと腹立ちのために、もはや言葉は出ず。

 きつく噛みしめた奥歯がゴキリ、と嫌な音を立てた。


【再度、ランクアップを目指し頑張って下さい!】


 だぁんッ!!


 全力で床を叩いても、破壊される範囲が確かに狭まっている。

 

「おのれ、おのれ、おのれ、おのれ……をぉぉぉのぉぉぉれぇぇぇッ……!」


 ごぃんッ!! パグシャッ!


「!?」


 怒りに燃えるサタナスの脳天に何かがぶつかり、壊れて砕けた。

 まるで、水晶の欠片のような輝く欠片に思わず、サタナスは天井……すでに、怒りで破壊されているため、月夜の光が降り注ぐ夜空を見上げた。


「魔王サタナス……いや、元・魔王と呼ぶべきじゃったか?」


「!? シシオウ! 貴様……馬鹿なッ!? 貴様の魔核は確かに壊したはず……!」


 夜空に浮いていたのは、以前自分自身が拷問の末八つ裂きにして殺した白天虎・シシオウの姿だった。

 だが、シシオウにしては素肌の色が黒く、その背には竜族のような被膜の翼、蛇のような尻尾が生えている。


「ふん……白天虎・シシオウはワシの弟よ。やれやれ、シシオウの奴も不甲斐無いのぅ……この程度の魔王に玩具にされて殺されるとは……」


 どうやら、このシシオウに生き写しの男がサタナスに向かって投げつけて来たのは、シシオウを殺した時に保存した拷問映像を録画した魔水晶のようだった。


「ワシの名はトラオウじゃ。……何でも、ワシの主であるミーカイル様が貴様とオハナシをされたいようでな? ミーカイル様のところに貴様をお連れしろ、とのことじゃ……心当たりが無いとは言わせぬぞ?」


 そう言って、トラオウは懐からもう一つの魔水晶をチラリと取り出した。

 表情は相変わらず不愉快そうに鼻の上に皺を寄せている。


 だが、そんなトラオウを見つめると、サタナスは小さく肩を震わせ始めた。


「ふ……くくく、なるほど、ちょうど良い……貴様とミーカイルを喰えば、余の力も取り戻せよう……」


 不敵な笑みを浮かべるサタナスを呆れた様子で見降ろしたトラオウが「愚かな」と小さく呟くとわざわざ抑えていた魔力を開放する。


「ッ!? な……!」


「やれやれ、この程度で絶句か? ずいぶんと、お可愛らしいことじゃな、サタナス」


 サタナスは、ようやくこの時『ランクダウン』の意味を理解したのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  サタナスがボケナスへ。
[一言] 強化が無効化されたってことは奪ってきた力も無くなってるのかな??
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