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新しい自分がやるべき事  作者: かもめ
第三十一章
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~解決~後編

  ベルサリオが見付けてくれた貴重な手掛かり。これは一気に進展しそうだ。オルガーと譜面に関わる重要な情報だ。オルガーに関しては、後でいい。まずは譜面の方だ。こちらは、俺一人では問題解決。と、までは確実に無理。聖堂に関する事だ。メルリは必ず絡む事になる。場合によってはシャレンもだ。

  そんな偉い人達にも、最悪動いて貰わなくてはならない場合の事も視野に入れて、オルガーは後回しだ。

「譜面とは…」

  読み始めようとしたその時、一同に見られている個とに気が付いた。俺が書物に目を通している様子を見ていて、この人達は面白いのか?

  散れ散れと、言葉にはしなかったが手で合図を送ると皆はわかってくれた様だ。

 ー神曲ー

 聖堂で行われる祈祷、祭事にて用いられる楽曲は中央大聖堂が定める「光明」を用いる事。聖堂楽師と定められた者は、聖堂長または前任の楽師より、楽曲を継承、譜面の受領をし、引き継いでいく事。

「そうか…譜面自体は、楽師から楽師へと渡されているんだ。と言うことは、レンフィールよりも前の楽師を辿っていけば、どこで紛失してしまったのかが、わかるかも知れない」

 確認した書物の内容に続きがあったが、書物が古い為か文字が擦れたり、ページが破れたりしている箇所があって読むことが出来なかった。

 譜面が実際に保管してある場所自体は確認出来なかったものの、多きな進展と言ってもいい。問題は、歴代の楽師が生存しているのか?と言う所に行きつく。そもそも、このアウンティナルーが、どれくらいの歴史がある領地なのか、聖堂がどれくらい昔から存在しているのか、俺は知らない。歴代の楽師を辿って行った所で、亡くなっている方が居てもおかしくない。

「そうは思っても、行動にしなきゃ…!ベルサリオ!」

「お呼びですか?」

「はい、近いうちに、シャレン様とヴェイル様に面会出来るよう、手配を」


 ベルサリオに用件を伝え、今度はメルリとミューレンに報告だ。

「聖堂へ行かれるのですね?」

「そうですね、聖堂長に報告しなくてはなりませんから」

 書物を手に、フォスターと寮を出る。慌ただしく部屋を掛け出たので、周りの従者の者達に迷惑を掛けたかと思うと、少し反省しなくてはならない行動だったかも知れない。一段落したら、マキシスに協力してもらって、ご馳走でも準備してもらおう。


「メルリ!これを!」

「バタバタと入ってきて、挨拶も無しなの?」

 聖堂長室に入るや否や、確認した書物をメルリの前に差し出す。呆れ顔のメルリは言葉が出て来ない様だ。

「まぁ、いいわ…。……確かにこの内容からすれば、追えるかも知れないわね。でも、お父様が動いているわ」

 確かに、シャレンが同じ事を言っていた。そうだとすればもしかしたら、もうわかっているかもしれない。

「現状、まだ有力な手掛かりは無いそうよ」

「…そうか…。やっぱり譜面の原本が何処に保管されているのかを調べた方がいいのかな?」

 手掛かりが無いのなら原本か、複製を探すしか無い。ただ、書物の内容からすれば、各地にある聖堂には複製の譜面は一部ずつしかないだろう。

「そうね…ただ、せっかく見付けた情報は無駄にはならないと思うわ」

「それは…?」

「確実に言える事ではないけれど、どこで継承がうまく出来てなかった、若しくは、譜面が紛失してしまった。それくらいはわかるかも知れない」

 その一言を言うとメルリはまた古い書物を取り出した。覗くと、名前がいくつか記入してある。

「これは、歴代の聖堂長と楽師の名前。これを元にお父様が動いているの。そうやって見ると私が十代目、レンフィールが八代目ね。そして、五代目聖堂長、三代目楽師…記録によるとここで大きな争いが起こっている…」

 もうひとつ書物を取り出し、二つの書物を見比べると確かにメルリが説明する年代で、争い事が起きているようだ。紛失したとなればここのタイミングが可能性的に濃い。

「この時期に紛失したとしたら、何故違いに気が付かなかったのか…?少なくても、生き残った人達がいて音楽そのもの自体は聴いたことある人だっていたはず…それに、中央大聖堂?が定めた正規の曲なら、大聖堂に問い合わせるなり、何かの行動を起こせば、こんなに面倒な事にならなかったはずだよ」

「ライトの言う通り…ね。でも、この後聖堂長や聖堂楽師として職務に就いた方は、当時の領主に指名されたとここに記されてる。そうなると、そこまでは気が付かなかったのかもしれないわ。気が付かなかったのか、それとも全く聖堂に関わりのない人が選出されたのかも。戦後だから、適任者が居なかった…とも言えるし」

 憶測になるがメルリが言う通り、色々な可能性がある。

「最終的に行き着く所は、大聖堂だと思うけど…」

「僕もそう思う。今のうちに問い合わせてみるのはどう?」

「とてもじゃないけど、大聖堂に相談なんて私ごときが出来ないわ…。各地の領主を束ねる、国王まで動かす事になる…。そうしたら…最悪、今の様な暮らしも出来なくなるわ」

 とたんにメルリとフォスターの顔色が悪くなる。そんなにヤバい奴なのか?国王って。

「これはなんとしてでも、領地内で解決しなければ…。引き続き、調査願えるかしら?ライト?」


 何がそんなに怯える事があるのか解らずじまいだったが、まぁ良い。そのうちチョロチョロ聞いてみよう。

 結局、ベルサリオが見付け出してくれた情報は、無駄にはならなかったが、振り出しに戻る。

「先生、城の図書室行きます。原本の…」

「ライト、原本は感づいていると思うけど、中央大聖堂に保管されているはず。私達では、手が出せないわ。別な角度から…別な事を調べた方が…」

「先生もそう思うよね。ここまで記載されていないし、それに譜面自体も伝承されているくらい厳重なら、関係者以外には知られていけない。としか、捉えられないからね」

 城への移動中、フォスターから貰った回答だった。そうではないかと思っていたのは、ハッキリいって俺だけではない。


 フォスターにレンフィールを呼びに行ってもらい、その間に本棚とにらめっこしていた。

 譜面に関しては、もう手のつけようがない。そうしたら、楽器の、オルガーの情報を入手するか、また別の視点から調査するしかない。別な視点…祭事関係か?


「ライト…」

「レンフィール!」

 抱きついて来るのは彼女の挨拶みたいなもの。最近は気にもしなくなった。

「待たせてしまいましたね?」

「ううん、大丈夫。少し検討違いな所を調べてたみたいで…。祭事関係の事も、ここの棚にあるよね?」

「祭事も、聖堂のお仕事ですから、この中にあると思いますよ?」

「また手伝いお願い出来る…?」

「ライトの為なら」

 快く手伝いを引き受けてくれる、レンフィールは女神と言ってもいい。今まで嫌な顔を一度も見せる事もなく、お願いを聞いてもらっている。

 祭事に関して調べるのには意味があった。いくら聖堂の仕事の中に「祭事」を、執り行う事が含まれているのなら、いくらなんでも、それに伴う音楽は一つの訳がないと思ったのだ。神様と音楽が密接な関係にあるのなら、尚更そういう風に捉える事が出来る。また、深読みをすれば、他に使用されている楽曲の譜面が保管されている所に、神曲の譜面も一緒に保管されているのではないかと予想したのだ。可能性は低いけれど。

「ねぇ、レンフィール、祭事関係の楽曲も、祈祷の時に使う神曲と同じ?」

 レンフィールは考えることもなく、否定してきた。

「全て同じではないですよ。冠婚葬祭もありますから、主に使用される曲は三曲ですからね」

「三曲…。その冠婚葬祭に使う曲の譜面は何処にあるの?」

「聖堂長室にありますよ」

 レンフィールの話が本当なら、何故メインの神曲だけが継承されているのか?そもそも、継承されていた譜面は複写だったのでは無いかと疑問が残る。外部に漏れてはいけないと言う、ルールの上でそれが守られて来ているのなら、むしろ聖堂の中だけで扱えばいい話だと思う。

 本棚を探す手を止め、次々と考えられる事柄を自分なりに纏めているときに、彼女が覗き込んできた。

「どうしたんですか?」

「あ…うん、いや、他の二曲の譜面が聖堂長室に保管されているなら、肝心の神曲の譜面も同じ様に聖堂長室に保管されているんじゃないかって思って…」

 この僅かな時間で、思い付いた事をレンフィールに伝えてみた。神曲に関わる事…代々継承され続けていること。外部に漏れてはいけない事。

「…って、考えると、継承されている譜面も複写じゃないのかなって…」

「言われてみればそうですね。一旦聖堂にいきましょうか?」


 聖堂の中は相変わらず静まり返っていた。実際、今になってもどれくらいの人が、聖堂に勤めているのかすら把握出来ない。それくらい人の気配を感じないのだ。

「メルリ様、入りますよ?」

 レンフィールが扉を開くと、俺たちが来るのを知っていたかの様に、メルリとミューレンが待っていた。


「見付けたわ…、譜面」

「引き継ぎなんて無かった私達には、盲点としか言えない所に保管されてました」

 ぐったりと机に突っ伏して二人は声を揃えて、言葉を吐き出した様だった。いつも、凛としている所しか知らない者にとっては想像も付かない光景だろう。

 俺とレンフィールは、笑いを堪えながら机の上に視線を向けると、そこには複数の譜面と思われる書類が、散乱していた。


「レンフィールがみたことないの譜面は?」

 僅かな時間レンフィールは譜面を手に取り、中身を確認する。

「間違いなく祭事に使用する楽曲です。でも…神曲と思われる物は…」

「そうか…無いんだね…」

 俺は少しショックだった。必死な思いをして探し出してくれた二人にも申し訳無い気持ちも込み上げて来る。

 俺は無意識に、一つの譜面を手に取っていた。

「これが神曲の譜面だったら…。…?ん?」

「どうしたのライト?」

 徐に手にした譜面を眺めたら、何か違和感を覚えた。それは、神曲だと言われて見せられた譜面とそっくり。全く同じだとは言えないが…、酷似している。

 慌てて他の譜面も確認してみた。一つの曲毎に、束ねてある譜面を確認すると…いくら探しても見付からない答えが見えて来た。

「そうか…そうだったのか」

「?」

「ライト…どうしたんですか…?」

「わかった!」

 顔を見合わせるメルリとミューレン。問いを投げてくるレンフィール。俺は三人に説明した。


「そんな…」

「気が付きませんでしたね、メルリ様?」

「ほんと、よく気がついたわ…」

 見付けた答え、それは各曲は、一曲ずつ譜面の組み合わせだった。

 本来の曲の譜面に目を通すことで、判明したが別な楽器と思われる譜面が一つずつ入っている。この違う楽器と思われる譜面と、フューリーの譜面を組み合わせれば…

「レンフィール、この二つの譜面…楽器は!?」

「これは…横笛ともう一つは…ちょっと存じません…」

 質問に申し訳ないなさそうにレンフィールは答えるが、恐らくオルガーだろうと俺は見立てていた。楽曲名が、『生命』と記載されている。憶測だが、聖堂で行う冠婚葬祭に使う曲だろう。そうなれば、持ち運びしなくても良い楽器と思われる。

「解った。後は明日の学習院の図書館で調べれば、解決すると思う!任せておいて!」

 一同にそう言った事で皆は安堵の表情になる。後は、オルガーの譜面を見付けて、これと照らし合わせてみれば答えが出る。明日、一気に進展するだろう。


「ほんとに多忙ですね?」

「えぇ、ちょっと色々ありまして…」

 忙しくパタパタとしている所しか見られていないからか、パルノエルスからは「多忙」と頻繁に言われるようになった様だ。

「ご無理はなさらないでくださいね」

「お気遣いありがとうございます。もう少しで一段落つきそうなので…」

「それなら良いのですが」


 普段通りの抗議を終え、帰る身支度を整えた所でフォスターが迎えに来た。

「ライト様、参りましょうか?」

「図書館へ寄りたいですね」

「わかりました、お供しますね」

「あ、あの、図書館へ行くのですか?」

 その会話を聞いていたのか、パルノエルスが食いついてきた。

「はい、ちょっと調べものをしたくて…」

「何でお忙しいのかは、存じ上げませんが私にもお手伝いさせてください!」

 突然の申し出に困惑してしまうが、これは機密事項に等しい問題。勝手な判断をするわけにはいかない。フォスターが、聖堂長であるメルリに判断を仰ぐ。

「僕では勝手な事出来ないので、メルリ様から回答来るまで少し待ってもらえますか?」

「はい、大丈夫です」


 ほどなくメルリより返信があり、「元聖堂楽師だった一家なので事情は耳に入る事は時間の問題。他言無用であれば良いです」と言われた。


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