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異世界キャバクラ王 ~酒チートと氷魔法で、夜の社交界を支配する~  作者: 阿鼻恭介
第4章 育つ店、広がる縁

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第65話 変わらない朝

 新しい住まいで迎える、最初の朝。


 レンは窓から差し込む朝日を浴びながら目を覚ました。


「よく眠れたな。」


 部屋を見渡す。


 昨日契約したばかりの住まい。


 荷物はまだ少ないが、この世界で初めて手に入れた自分だけの家だ。


 身支度を整え、玄関を出る。


 朝の澄んだ空気が心地よい。


 Club Moon Dropまでは歩いて数分。


 店へ向かう道を歩きながら、レンは改めてその近さを実感していた。


「これなら営業が終わってもすぐ帰れるな。」


 店に何かあればすぐ戻れる。


 経営者としても理想的な場所だった。


 西通りへ入り、Club Moon Dropへ到着する。


 鍵を開けて店内へ入ると、静かな空気が広がっていた。


 磨き上げられたカウンター。


 整えられた客席。


 レンは店内を見渡し、小さく頷いた。


「今日もよろしく。」


 開店準備を始めると、次々とスタッフが出勤してくる。


「おはようございます。」


 リリアを先頭に、エルナ、セレナ、ミーナ、ノア、ロイ、ディーノ、ルークが店へ入ってきた。


「おはよう。」


 レンは笑顔で迎える。


 全員が揃うと、レンは木箱をロイへ差し出した。


「ロイ。」


「はい。」


「今週追加分の正式会員証だ。」


 ロイは両手で丁寧に受け取る。


「ありがとうございます。」


「受付で大切に保管します。」


 レンは頷いた。


「正式会員の皆様へお渡しする大切な物だからね。」


「傷一つ付けないようお願いします。」


「承知しました。」


 ロイは木箱を受付へ運び、鍵付きの棚へ丁寧にしまった。


 レンは皆へ声を掛ける。


「みんな。」


 全員が手を止め、レンの前へ集まる。


「今日からまた営業だ。」


「昨日は定休日だったけど、今日からまたお客様を迎える。」


 皆が静かに頷く。


 レンは店内を見回した。


「この店は、キャストとお客様がいい空気でいられる店だ。」


「その空気は誰か一人が作るものじゃない。」


「みんなで作るものだ。」


「今日も一人ひとりのお客様を大切にしていこう。」


「はい!」


 全員の返事が店内へ響いた。


 やがて開店時間となる。


 ロイが営業中の札を掲げた。


 昼営業が始まる。


 最初に扉を開けたのは、正式会員のエミリアだった。


「おはようございます。」


「いらっしゃいませ、エミリア様。」


 リリアが笑顔で迎える。


 その後ろには、商人の奥方と若い女性。


 さらに若い女性が紹介した友人も一緒だった。


「今日は友達を連れてきました。」


 若い女性が少し照れながら言う。


「以前から一度来てみたいと言っていたので。」


 ディーノが受付帳を開き、落ち着いて応対する。


「ありがとうございます。」


「ご紹介者様のお名前を確認させていただきます。」


 紹介手続きは滞りなく終わり、新しい来店者も店内へ案内された。


 リリア、エルナ、セレナ、ミーナはそれぞれ担当のお客様の席へ向かう。


 レンはカウンターで注文を受け、冷やし果実酒を用意する。


 厨房ではルークが酒に合う軽食と甘い菓子の準備を進めていた。


 ノアは店内を歩きながら、客席や備品へ静かに目を配る。


 昼営業は穏やかに進んでいった。


 しばらくして、入口の扉が静かに開く。


「こんにちは。」


 落ち着いた声に、受付へ立っていたロイとディーノが顔を上げた。


 そこに立っていたのは、冒険者ギルドの受付嬢、ミレイナだった。


 ロイは笑顔で迎える。


「いらっしゃいませ。」


 ディーノが一歩前へ出て、丁寧に頭を下げた。


「申し訳ございません。」


「当店は紹介制となっております。」


「ご紹介者様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」


 その時だった。


「ディーノ。」


 カウンターからレンが声を掛ける。


 ディーノが振り返る。


「その方は、俺の紹介です。」


「ご案内してください。」


「承知しました。」


 ディーノはすぐに一礼する。


「失礼いたしました。」


「ご来店ありがとうございます。」


 レンも受付まで歩み寄った。


「ミレイナさん。」


「本当に来てくださったんですね。」


 ミレイナは穏やかに微笑む。


「昨日お誘いいただきましたので。」


「今日はちょうどお休みでしたから。」


 レンも嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます。」


 その様子を見たリリアが近付いてくる。


「お久しぶりです、ミレイナさん。」


 ミレイナも柔らかな笑みを返した。


「お久しぶりです、リリアさん。」


「お元気そうで安心しました。」


 ロイも一礼する。


「お久しぶりです。」


「ロイさんも、お元気そうですね。」


 短い挨拶を交わすと、レンはリリアへ視線を向けた。


「リリア。」


「はい。」


「ミレイナさんをお願いします。」


「承知しました。」


 リリアは優しく微笑む。


「こちらへどうぞ。」


 ミレイナは頷き、リリアの案内で席へ向かった。


 レンはカウンターへ戻り、冷やし果実酒の準備を始める。


 店内では常連たちの穏やかな笑い声が響き、初めて訪れたミレイナも静かな空気に自然と表情を和らげていた。


 Club Moon Dropの昼営業は、今日も心地よい時間を紡いでいくのだった。


 昼営業は、穏やかな時間の中で進んでいった。


 リリアはミレイナの隣へ座り、自然な笑顔で会話を重ねる。


「こちらが当店おすすめの冷やし果実酒です。」


「ありがとうございます。」


 ミレイナはグラスを手に取り、一口口へ運ぶ。


「……美味しい。」


 思わず漏れたその一言に、リリアは微笑んだ。


「ありがとうございます。」


「皆様にもご好評いただいております。」


 ほどなくしてルークが用意した酒に合う軽食が運ばれる。


 ミレイナは料理へ目を向け、小さく目を丸くした。


「昼から、こんなに本格的なお料理までいただけるんですね。」


「はい。」


「お酒だけではなく、お食事や甘い菓子も楽しんでいただけるようにしています。」


 ミレイナは軽食を口に運び、満足そうに頷いた。


「とても美味しいです。」


 リリアも嬉しそうに笑う。


「ありがとうございます。」


 一方その頃、店内ではエミリアが商人の奥方や若い女性、その友人たちとの会話を楽しんでいた。


 エルナ、セレナ、ミーナも、それぞれ担当のお客様へ笑顔で接客を続けている。


 レンはカウンターから店全体を見渡しながら、一杯一杯丁寧に冷やし果実酒を作っていた。


 受付ではロイとディーノが来店客を迎え、必要に応じて店内を巡回する。


 ノアは客席や備品へ静かに目を配り、小さな変化も見逃さないよう確認を続けていた。


 Club Moon Dropには、今日も穏やかな時間が流れていた。


 やがて昼営業も終わりを迎える。


 最後のお客様を見送ると、リリアたちはテーブルを整え始めた。


 ロイとディーノは受付を片付け、ルークは厨房で夜営業の仕込みを始める。


 ノアも店内を歩き、備品を確認していた。


 レンはスタッフへ声を掛けた。


「みんな。」


 全員がレンの前へ集まる。


「昼営業、お疲れ様。」


「お疲れ様でした。」


 皆が一礼する。


 レンは続けた。


「今日来店された冒険者ギルドの受付嬢、ミレイナさんだけど、俺が冒険者登録をした時からお世話になっている方なんだ。」


「今日は俺の紹介で来店していただいた。」


「これからも来店されることがあると思う。」


「その時は、よろしくお願いします。」


「はい。」


 全員が揃って返事をする。


 ディーノが少し申し訳なさそうに頭を下げた。


「紹介制をご説明しようとしてしまいました。」


 レンは優しく笑う。


「いや、それで良かった。」


「初めて来店されるお客様には、きちんと紹介制をお伝えする。」


「それがClub Moon Dropの決まりだから。」


 ディーノは安心したように頷く。


「ありがとうございます。」


 ロイも微笑む。


「ディーノ、しっかり対応できていたよ。」


「はい。」


 レンは皆を見渡した。


「紹介制は、お客様に安心して過ごしていただくための大切な約束だ。」


「これからも一人ひとり、丁寧に対応していこう。」


「はい!」


 力強い返事が店内へ響く。


 その声を聞きながらレンは静かに微笑んだ。


 新しい住まいで迎えた最初の営業日。


 店も、仲間も、少しずつ確実に成長している。


 そんな確かな手応えを胸に、レンたちは夜営業の準備へと取り掛かるのだった。


 昼営業を終えたClub Moon Dropには、夜営業へ向けた慌ただしくも落ち着いた時間が流れていた。


 ルークは厨房で酒に合う軽食の最終確認を行い、甘い菓子も一つひとつ丁寧に盛り付けていく。


 ロイとディーノは受付で登録帳と正式会員証を整え、来店される会員を迎える準備を進めていた。


 ノアは店内をゆっくり歩き、椅子の位置や照明、テーブルの状態を細かく確認していく。


 リリア、エルナ、セレナ、ミーナも身だしなみを整え、それぞれが静かに深呼吸をした。


 レンはカウンターの中でグラスを磨きながら、店全体へ視線を向ける。


「みんな、準備はいい?」


「はい。」


 全員の返事を聞いたレンは頷いた。


「今日も一人ひとりのお客様を大切にしよう。」


「はい!」


 ロイが営業中の札を掛ける。


 夜営業が始まった。


 最初に扉を開けたのはガイルだった。


「こんばんは。」


「いらっしゃいませ、ガイル様。」


 ロイが笑顔で迎える。


 その後ろにはサラとボルドの姿もあった。


「こんばんは。」


 ディーノも自然に一礼する。


「いつもの三人だ。」


 ガイルが笑う。


「はい。お待ちしておりました。」


 リリアが三人を席へ案内する。


 レンもカウンター越しに頭を下げた。


「こんばんは、ガイルさん。」


「おう、今日も頼む。」


「ありがとうございます。」


 レンは三人の好みに合わせてビールと冷やし果実酒を用意し始めた。


 氷の澄んだ音と、ビールを注ぐ軽やかな音が店内へ静かに響く。


 サラはその音を聞きながら微笑んだ。


「この音を聞くと、この店へ来たって気がします。」


 レンも笑顔で応える。


「そう言っていただけると嬉しいです。」


 しばらくして、入口の扉が再び開く。


「こんばんは。」


 重厚な声とともに姿を現したのは、バルド・グランツだった。


「バルド様、いらっしゃいませ。」


 ロイとディーノが揃って一礼する。


 バルドは店内を見回し、ガイルたちの席へ視線を向けた。


「今日は賑やかだな。」


 ガイルが笑う。


「バルドさんも一緒にどうだ。」


 バルドは一瞬だけ周囲を見渡し、静かに笑った。


「それでは、お言葉に甘えよう。」


 リリアは椅子を一脚追加する。


 こうしてガイル、サラ、ボルド、バルドの四人が同じテーブルを囲むことになった。


 レンは人数分のビールと冷やし果実酒を丁寧に用意し、一杯ずつ提供していく。


「お待たせしました。」


 ガイルがグラスを持ち上げた。


「今日は依頼が良かったから乾杯しよう。」


 四人が静かにグラスを合わせる。


 軽い音が店内へ響いた。


 その頃、ルークは酒に合う軽食を完成させていた。


 ロイが料理を運ぶ。


「失礼いたします。」


 彩り豊かな軽食がテーブルへ並ぶ。


「美味そうだ。」


 ボルドが嬉しそうに笑う。


 一口食べると満足そうに何度も頷いた。


「やっぱり美味い。」


「酒によく合う。」


 サラも微笑む。


「昼とはまた違う楽しみがありますね。」


 バルドも静かに頷いた。


「料理も酒も、よく考えられている。」


 その時、入口の扉が開く。


「こんばんは。」


 現れたのはリオネルだった。


「リオネル様、いらっしゃいませ。」


 ロイが迎える。


 リオネルは店内を見渡し、空いている席へ向かおうとした。


 その様子に気付いたバルドが声を掛ける。


「リオネルさん。」


 リオネルが振り返る。


「こんばんは、バルドさん。」


「よければこちらへ来ないか。」


 バルドが穏やかに誘う。


 リオネルは一瞬だけ周囲を見てから、静かに頷いた。


「それでは、お言葉に甘えます。」


 リリアは自然に椅子を一脚追加する。


 こうして一つのテーブルに、五人が揃った。


 ガイル。


 サラ。


 ボルド。


 バルド。


 リオネル。


 それぞれ立場は違うが、この店では同じ客として同じ時間を過ごす。


 レンはリオネルの分の酒を用意し、丁寧に差し出した。


「お待たせしました。」


「ありがとうございます。」


 リオネルはグラスを受け取り、軽く頭を下げる。


 自然と会話が始まる。


 冒険者の話に商人が耳を傾ける。


 商人の話に冒険者が興味を示す。


 そこに無理はなく、ただ自然に言葉が交わされていく。


 厨房でその様子を聞いたルークは、静かに胸を撫で下ろした。


 レンが声を掛ける。


「ルーク。」


「はい。」


「今日も評判がいい。」


 ルークは照れくさそうに笑った。


「ありがとうございます。」


「もっと勉強して、美味しい料理をお出しできるよう頑張ります。」


 やがて頃合いを見て、今度は甘い菓子が各テーブルへ運ばれる。


「食後にどうぞ。」


 リリアが微笑みながら皿を置く。


 女性キャストたちは、それぞれ担当するお客様との会話を楽しみながら、店内へ穏やかな空気を広げていく。


 レンはカウンターからその光景を見つめた。


 女性キャストが主役となり、お客様との時間を彩る。


 黒服は目立たず、必要な時だけ自然に動く。


 厨房は料理で支える。


 そして自分は酒を作りながら店全体を見る。


 誰か一人が店を作っているわけではない。


 それぞれが自分の役割を果たしているからこそ、この空気が生まれている。


 リオネルがグラスを置いた。


「レンさん。」


「はい。」


「この店へ来るたびに、人が増えていますね。」


 レンは微笑む。


「皆様のおかげです。」


「紹介してくださる方がいるから、この店は少しずつ広がっています。」


 バルドも静かに頷いた。


「急いで広げようとしない。」


「紹介制を守りながら信用を積み重ねる。」


「それがお前らしい。」


「ありがとうございます。」


 ガイルが笑う。


「最初にここへ来た時は、ここまで大きくなるとは思わなかったな。」


「でも今は違う。」


「また誰かを連れて来たくなる店になってる。」


 その言葉にレンは頭を下げた。


「ありがとうございます。」


「これからも、そう思っていただける店であり続けます。」


 店内には穏やかな笑い声が響く。


 冒険者と商人が自然に語り合い、女性キャストたちがその場を華やかに彩る。


 Club Moon Dropには、今日も心地よい夜が流れていた。

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