第1話 黒服、人生を飲み干す
初めての執筆で読みにくいところもあると思いますが楽しんで読んで頂けましたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日3話投稿予定の1話目です。2話目は20時ごろ投稿予定
夜の街には独特の匂いがある。
酒。
香水。
タバコ。
欲望。
そして金。
俺はその匂いが嫌いではなかった。
新宿から少し離れた繁華街。
雑居ビルの六階。
キャバクラ『CLUB JEWEL』。
ここが俺の職場だった。
「レン、VIPルームチェック!」
「了解っす!」
インカムから飛んできた店長の声に返事をしながら、俺はホールを横切る。
黒いスーツ。
黒いネクタイ。
磨き上げられた革靴。
大学ではただの学生だが、この店では黒服として働いている。
黒瀬蓮也。
二十一歳。
私立大学経済学部三年。
そして重度のキャバクラ好き。
普通の大学生なら居酒屋で飲む。
サークルで遊ぶ。
合コンへ行く。
だが俺は違う。
キャバクラへ行く。
なぜか。
楽しいからだ。
もちろん女の子が好きなのもある。
だがそれ以上に、あの空間が好きだった。
一流の接客。
洗練された会話。
気配り。
心理誘導。
マーケティング。
リピーター戦略。
あの空間には経済学の全てが詰まっている。
少なくとも俺はそう思っていた。
だから客として通い。
その後黒服として働き始めた。
時給も良かったし。
何より面白かった。
「レンくーん!」
ホールの端から声が飛ぶ。
振り向くとNo.1嬢の美咲さんだった。
「お客様のおしぼりお願い~」
「今行きます」
俺は笑顔で応じる。
こういう積み重ねが大事だ。
キャストと黒服の関係が店を作る。
俺はそう信じている。
だが。
この日は最悪だった。
「おい。」
低い声が聞こえた。
振り返る。
VIPルームの扉が開いていた。
そして。
そこにいた男を見て俺は内心で舌打ちした。
来た。
今日一番の厄介客だ。
地元建設会社社長。
佐々木。
五十代。
金払いは良い。
だが酒癖が最悪。
キャストを泣かせたこともある。
黒服に説教することもある。
そして今日はかなり酔っていた。
俺は営業スマイルを浮かべる。
「どうされましたか?」
「お前入れ。」
嫌な予感しかしない。
VIPルームへ入る。
テーブルの上には高級焼酎が数本並んでいた。
既に一本空いている。
「グラス持て。」
あ、終わった。
そう思った。
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