30話: 宰相の頭痛の種はこの親子
「メイソン・ソール伯爵。
貴方が聖国の筆頭魔術師の関係者なのは知ってますよ。大人しくしていれば良かったものを。」
白魔術を掛けるのかと思った一同だが、侯爵はアルバートを呼び何やら魔術を掛けた。
男は理解した。
あれは封印魔術を解除したのだ。
あの若造も何かしらあるのだ。
やばい。話す訳には行かない⋯⋯。
男が自死しようとしたが、それより早くアルバートが動いた。
黒魔術を掛けたのだ。
体は神力で縛られ更に黒魔術をかけられた。
抵抗するだけ無駄だと、男が自ら体を投げやった。
何が何やら他は解らない。
侯爵親子と男の遣り取りがが早すぎて、理解が追いつかない。
狼狽える私達に侯爵が説明する。
・男が自死する可能性を考えた事。
・自死を阻止するには黒魔術しかない事。
・アルバートの封印を解除した事。
・男が自死しようとしたのでアルバートが黒魔術をかけた事。
(この親子は本当に嫌だ。凄すぎて付いて行けない⋯。)心の声が一致する。
「侯爵殿。我々にその都度説明するのは手間であろう。我々を気にせず好きに為さると良い。愛し子様に関わる事。
早く答えが知りたいのだ。」
ナサニエル大司教がそう話す。
侯爵は陛下と宰相に視線をやると、了承の頷きを貰う。
「では始めましょう。」
そう声を出すと会場中が白魔術の光で満たされた。
アルバートがそこに黒魔術を放つ。
会場は白魔術・黒魔術で満たされた。
すると、あちこちから黒い魔術紋が宙に浮かんだ。
侯爵とアルバートは何やら話し込み魔術紋を見ている。
アルバートがその紋に手をかざすと自身の白魔術を掛け更に黒魔術を掛けた。
紋は消えた。
アルバートが会場に浮かぶ紋に黒魔術を掛けると全て消えた。
親子は男の側に戻り、男の上に浮かんだままの白魔術の紋を男に落とした。
「さあ語って下さい。筆頭魔術師の事を。愛し子様に何をするのかを。」
男の体に紋が吸い込まれると、男が語り始めた。
あり得ない内容を。
〈我が主は言ったのだ。
世界を救うのも、平和な世界にするのも我が主の率いる者達だと。
主は愛し子はいらない。女神等居なくとも世界は成り立つ。
それを成し遂げる為に、愛し子を排除すると。
ここには植物を魔物化する魔術を施した。
だが、失敗した。
ただ、それだけだ。〉
侯爵が聞く
「貴方の主は、聖国の筆頭魔術師ですね。
彼は生きている。そうですね。」
〈そうだ。〉
まさか!!
女神様に処罰されたのではないのか?
何故生きて入れるのだ?!
「彼は処罰される時に何者かに護られた。そして生き延びている。」
「他国で瘴気や魔物が増えているのは、その者達の仕業ですね。」侯爵が問う
〈そうだ。〉
「筆頭魔術師を護ったのは何者ですか?彼はどこにいるのですか?」
〈誰かは解らない。主が何処に居るかも解らない。〉
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「とりあえず、こんな感じですね。
これ以上はこの男の体に負担が掛かります。」
一同頷く。
「彼は私の屋敷に連れ帰ります。
詳しく調べて差し上げますよ。」ニコリ
侯爵のニコリは否は無し。の意味である。毎度毎度⋯⋯。
それと⋯⋯
「罪人を1人用意して下さい。伯爵が帰らなければ家族が心配します。
伯爵は王宮で頭を打ち昏睡状態。王宮で様子を見ると家族に伝えます。
罪人には拘束魔法と変身魔法で伯爵の身代わりで寝てて貰いましょう。」
(侯爵の思考の速さに付いて行けないが、付いて行くしかない。)
「解った。侯爵に全て任せる。」
「皆疲れたであろう。夜にでも大司教の部屋にて集まろう。良いか?」
陛下が提案されたので了承した。
「気になったので1つ質問をしても?」
殿下が侯爵に話しかけてきた。
侯爵は頷き殿下と視線を合わせた。
「侯爵とアルバートが会話をする姿を初めて拝見したので。
先程あの黒い紋の所で何を話していたのかと。高度な魔術はお二人しか使えないのですか?
高度な魔術は訓練しても無理でしょうか?
侯爵から見て私は無理でしょうか?」
矢継ぎ早に侯爵に話しかけている。
「殿下は高度な魔術に興味がお有りですか?」
頷く殿下。
「そうですね。魔術には余り魔力量は関係無いのはご存知ですか?」
「魔術は魔力量が少なくとも使えます。術式や紋を覚えれば良いからです。
しかし、高度な魔術は魔力量も必要とします。魔力は王族ですから豊富でしょう。しかし、魔術のセンスは実際見ないと解りません。」宜しいですか?
「私は愛し子様のお役に立ちたい。
その為に必要な事は何でもやりたいのです。」
魔術にも興味があるし⋯。
「解りました。使えるようになるかは解りません。ですがお教えしますよ。
そ〜ですね。愛し子様の選定者達もお教えしましょう。」
陛下達は、有り難いと侯爵に感謝する。
「アルバートと何を話していたかですが⋯⋯。アルバートが私に全て押し付けようとしたので止めたのです。愛し子様の側に行きたいからと。
それを嗜めていただけです。」
愛し子様大好きなアルバートが解っただけだった。
「ですので、私は里奈さんの所に行きますね!」
と、天門を出すアルバート。
首根っこを掴まれ天門も消された。
「アルバート愛し子様の安全はどうでも良いと?」
侯爵の言葉にハッとし、姿勢を正した。
一同、はぁ〜である。
「夜までアルバートは殿下と居なさい。大人達はそれぞれの処理を。」
解散と、ようやくなったのだった。
〜❀〜
里奈は王妃の私室に居た。
里奈は紅茶と大好きなジャムのクッキーを頂いていた。
さっきの出来事は誰も触れない。
「里奈さん。お茶会の後に会わせたい者がいたのですが、今から紹介しても?」
里奈はお菓子から姿勢を外し、姿勢を正して頷いた。
扉から若い男女が入って来た。
あ!ベール!と焦る里奈に
「この者達は愛し子様付きとなります。
ですから、ベールは無くとも大丈夫ですよ。」
紹介が始まる。
ギルベルト・ライオット公爵令息
(金髪に薄金目)
カール・スタンリー侯爵令息
(緑髪に薄緑目)
カルロ・シュセル伯爵令息
(青髪に薄青目)
「男性は里奈さんと同じ18歳です。」
ナタリー・シュセル伯爵令嬢
(青髪に少し薄い青目)
キャロル・ミシエ子爵令嬢
(焦茶髪に薄茶目)
エミル・トリス男爵令嬢
(茶髪に薄茶目)
「女性は里奈さんより1歳下になります。」
6人は横に並び、膝を付き儀式の礼をとる。ギルベルトが
「愛し子様にご挨拶致します。
これからこの6人が側付きとなります。不作法等な⋯」
里奈が挨拶を遮った
「待って。側付きってずっと一緒に過ごすのでしょ?
なら、普通にして欲しいです。出来たら女の子は、お友達の様に仲良くなりたいです⋯⋯。」
ダメかな〜?と不安気に見つめる。
ダメな理由が無い。
王妃が「里奈さんの好きな様にされますように。」と、口添えも貰った。
全員了承し、6人も一緒にお茶をする。
全員が学園に通っている。
男性陣は来年卒業だそうだ。
日本と似てる。私は行ってないなぁ〜。
カルロ伯爵令息とナタリー伯爵令嬢は兄妹だった。顔立ちは似ていないかな。
準備が整ったら私の宮に来てくれるみたい。
楽しみが増えた!!
沢山話しをしていると、ふと違和感に気が付いた。それに気が付くと居心地が何だか悪い。
少しソワソワする里奈に気が付いた王妃が、里奈から話しを聞いた。
「里奈さん。アルバート殿がいつも一緒でしょ?いつも居るアルバート殿が居なくて寂しいのではないですか?」
(寂しいのか。この違和感は寂しいからなのね。)うんうん。と納得した。
「私も陛下から聞いた話ししか知りませんが、側付きになる貴方達はこれからある光景を目にします。
が、気にしたら負けらしいわよ。」
6人は聞き返しはしなかった。
いずれ解るのならその時にと。
だが、6人は少しだけ後悔する。
前もって聞いていれば衝撃と言う名の攻撃を受けなくて済んだ事を。
次に会う時、アルバートは衝撃的な発言を里奈から貰う。
アルバートが暴走するまで後2日。




