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ようこそ妄想の時間へ~Welcome to the time of delusion~  作者: Lalapai
第1章HOW TOの時間(続)
39/47

天才もアホも紙一重の時間

2週間ぶりくらいの投稿です。

32.天才もアホも紙一重の時間


「紹介しますね。こちらが部員の菅 ハラノ(すが はらの)さんです。」


新しくできたボランティア部。もとい、《彷徨える現実》の研究を目的とした部。

まず1人目、部長の虎嶋 カルク。現生徒会長かつこの部の設立者である。2人目は、有無を問われず部員とされた神崎 マスト。そして最後、カルクの執事のじぃ…ではなく。突然入ってきた謎の菅 ハラノという男。


「なんだお前は?」


部室に入ってきたハラノがソファーで優雅にくつろいでいるマストを見て目を細める。


「それはこっちのセリフだろ」


マストは相手に負けじと睨み返す。マストはハラノのような頭が良さそうな冷たいやつは昔から嫌いだ。どうしてもこういう奴を目の前にすると意地を張りたくなってしまうのだ。


「さっきカルクさんから紹介していただいただろ。聞いてなかったのか?」


「それだけじゃわかんねぇよ」


この険悪な空気を察してじぃがわざと大きめに咳き込んでピリオドを打ってくれた。


「ハラノ様。立ち話もなんですからどうぞお座りください。」


「すまない。」


マストの向かいにあるもう一つのソファーをじぃは示してハラノをそこへ座らせる。ハラノは浅くソファーへ腰掛けじぃの入れたコーヒーを味わう。


「マスト様、ここは私が詳しく…こちらは2年特別組、またの名を怪物クラスの学級委員長の菅ハラノ様でございます。とにかく英明な方でI.Qはゆうに140はあると言われております。」


「えっ?!コイツがあの化け物クラスの委員長!?」


説明しよう。この学校には特別組というクラスが存在する。いわゆる優待クラスだ。いろんな家庭の事情があるか、ずば抜けた才能を持った人だけが入ることの出来るクラスである。実はカルクもそのクラスになり得たのだが…それはまた後ほど。

そんなクラスの学級委員長を務めるなどものすごい才能の持ち主だ。それにじぃの言葉が正しいのならI.Q 140はまさに化け物。I.Qの世界ランキングがあるとすれば100番以内には入れるだろう。そんな逸材が本当に存在しているなど知る由もなかった。


「何が化け物だ。あんなのポンコツクラスに過ぎねぇよ。」


目をまん丸にして驚くマストを見てハラノが少しイラついた顔で言った。


ーあのクラスをポンコツ呼ばわり出来るとはなかなかヤベェ…


マストは瞬時に敵に回すべき敵ではないと判断した。


「ま、まぁなんとなくは分かった。」


「それはどうも。」


緊張した空気はじぃのおかげで和らいだもののまだ和み切ってはいない。和むなどは無理かもしれない。どうやってもどうあがいてもこの天才とは仲良くなれるとは思えない。


「そういや、お前はなんてカルクに言われてこの部に誘われたんだ?」


マストはI.Q 140に衝撃を受け過ぎすっかりこの部活に入ることになった経緯を聞くのを忘れていた。見た感じ、こんな感じのプレイヤーはいなかった筈だ。だとしたらなぜ誘われたのか、どうやって誘われたかますます気になる。もし、本当の事をカルクが伝えて誘ったのなら普通の人なら信じないし、ましてやハラノのような硬いやつはなおさら信じてくれなさそうだ。

しかし、帰ってきた答えは意外だった。


「そーだな。お前らがテストの時間、意識だけ異世界に飛ばされると聞いて来た。」


マストはその答えを聞いてカルクの方を見るとうんうんと満足げに頷いていた。


「なら、お前はそんな冗談を信じているのか??」


「冗談?ふざけんな。本当なんだろ?」


何故かハラノは全てを知っているかのような目でマストを睨みつける。睨みつけられたマストはあまりの烈度に言葉を失う。

戸惑うマストを見てハラノが続けて話す。


「カルクさんがわざわざ俺のところまで伝えに来たんだ。どこに疑う要素がある。そもそも、冗談の理由で俺を部活に誘ったところでなんの利点があるんだ?ないだろ。本当に冗談ならすぐに帰るからな」


「わかった、わかった。俺が悪かった。」


再び重い空気になってしまう。これ以上質問をしたとしても愚問だと返されるのが目に浮かぶ。


「マスト様、ハラノ様お代わりは…」


「俺はいい」


「俺もいい」


この重い空気、もう長くは耐えられない。


「これで部活の申請ができます。お二方ともありがとうございます!」


流石はカルクだ。頭はポンコツでもこう言った空気の読み方は最高だ。と、思った自分が恥ずかしい。


「でも、ハラノさんもマストさんも仲が良くて嬉しいですわ。ねぇ、じぃ?」


何を見てどこを聞けばさっきのやりとりが仲が良く見えるのか、そして急にふられたじぃも困って苦笑い。


「あ、あれですな。喧嘩するほど何とやらですな。」


「いつ喧嘩したのよ?あれは場を盛り上げるマストさんの劇なのよね?」


「いや!劇じゃないし、それにそんな事しても盛り上がれねぇよ?」


「そうだったのですかマスト様。てっきりじぃは喧嘩かと…申し訳ない。」


「いや、喧嘩…?だから!安心して!?」


脳内お花畑のカルクとじぃにマストのツッコミなど聞こえていなかった。


「それでだカルクさん。今後の活動は?」


「お前良くこの流れで真面目な話題振れるな。てか、ツッコムの喉乾くなぁ。じぃ頼む。」


ツッコミに疲れじぃにコーヒーを注がせながら話は進む。


「これで部の申請の件は片付いたので次は更なる部員集めですね。」


「それってつまりはプレイヤーを誘うって事だよな?」


ハラノは例外として、向こうの世界について研究するにはやはりそれに関わる人間。つまりはゲームに参加しているプレイヤーを集める必要がある。


「そうですね。でも、プレイヤーの特徴なんてあまり覚えてませんの」


無理はない。プレイヤーは仮面を被り、皆同じ制服を着ている。髪型や身長などは手掛かりになるにはなるがそれだけでは足りない。


「俺が覚えてんのはまず、"金髪の男"だろ?そんで"肌の焼けた女"、"厨二病の男"そんで…最後は。。。」


最後の1人を思い出した時、マストの口はそれ以上声を発しなかった。

最後の1人は顔を実際に見ている。ヒョロ眼鏡の事だ。マストの頭の中でその顔が浮かび変な思いが込み上がってくる。


「最後は?…って聞かない方がいいのよね。あの時共闘したくらいだから何か知ってそうだけど、、またおいおい聞くわ」


「ああ、そうしていただくと助かる。」


このやり取りの中、なかなか話の内容が把握できてなさそうなハラノがそわそわしていた。無理もない。事前に伝えられた情報はテスト中に妄想の世界という所に飛ばされるという情報のみだ。


「すまんが状況が見えない。説明してもらえるとありがたい」


「分からなかったの?」


「いやいやカルクさん?I.Q 140とはいえ分からないでしょうが」


マストの言葉でカルクの期待に添えなかったかのように聞こえてしまいハラノのプライドに火がつく。


「いいだろ。最低限の情報でいい。」


「そうねー。私とマストを含めてこの学校の6人は向こうの世界のプレイヤーなんです。さっきの話からするとその他のプレイヤー情報はマストさんがおっしゃった通りです。」


「いくらなんでも最低限すぎるだろ」


まぁ予想はしていたがそれ以上にざっくりしすぎた情報を提供したカルク。全く状況説明として足らない。


「プレイヤー、、、かぁ…」


そう言ってハラノは顎を指でつまみ瞑想を始める。するとその場がハラノを中心として静寂が冷気のようにじわじわ満ちていく。この集中力、尋常ではない。


「なる、ほどな。」


ハラノはソファーから立ち上がると指を鳴らしマストを見つめる。


「どうかしたのか??」


「いい事を思いついた。」


「見たらわかるよ、そりゃ。で、何を思いついたんだ」


「な、い、しょ、だっ」


そう乙女のような口調でそのまま部室を出てしまった。


「なんだあいつ。気色悪っ」


「何かいい事って言ってたんだし、ここで待ちましょう」


カルクはそう言いながら椅子に深く腰をかける。そして頬を机にぺったりつけてだらけだす。


「なぁカルク。暇だ」


既にソファーの上でだらけているマストがあくびを交えながら言った。


「そうねえー」


「まだこの2人はこのあと起きる悲劇を知らないのであった。」


2人のだらけにじぃがアニメのナレーターのような口調で告げた間もない事だった。


「ジャンジャジャーンッ!!!」


ガラリと勢いよく開いたドアから出てきたのはいかにも幼稚な女。これは見た目もだが登場の感じからしてまさしく幼稚。


「なんだこのアンジャッシュ児嶋が児嶋だよっ!以外のボケをした時のような静けさわっ!?」


「なんだこのやかましい女は!?」


「私かっ!?私の名はニコっ!!」


こうして2人の悲劇が始まるのだった。

読んでくださりありがとうございます!

これからは投稿ペースを上げるつもりです。



P.S.

1番幸せだと思える時間は、クーラーがガンガンに効いた部屋で布団にくるまる時です。

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