18.じいじ、勘違いをする
「じいじ、アバターってなに?」
「んー、キャラクターもアバターとは言われているけど、ここではコスチュームのことかな?」
ハルキはアバターのことが分からず首を傾げている。
ゲームのキャラクター自体をアバターと呼ぶことがある。
だが、見た目をカスタマイズするという意味合いが強いのだろう。
わしは分かりやすく説明するために、もらったベヒモス装備のアバターを着ることにした。
「わぁー、ベヒモス装備ってポンの着ぐるみなんだね!」
『にゃ……』
鏡に映るわしはポンと同じ模様の着ぐるみを着ていた。
着ぐるみと言っても顔の部分はフードのようになっているため、しっかりわしだと認識できるぐらいだ。
「どうだ、これでポンとお揃いだぞ!」
ポンは尻尾をブワッと膨らませて、大きく尻尾を振っている。
そんなにお揃いが嬉しいのだろうか。
イヌは嬉しい時に尻尾を大きく振っていたから、ネコも同じようなものだろう。
『にゃあああああああああ!』
ポンはいきなりわしに飛び込んできた。
『ギャフ!?』
だが、今のポンはわしよりも小さいため、ぶつかるとそのまま弾き返されていた。
ワールドボスでも小さくなると弱くなるようだ。
「僕もベヒモス装備ほしいな……」
これはお願いごとが発動しそうだな。
だが、その前にラブショターンには、一度ベヒモス装備を着ているところを見せる予定になっている。
「少し待っててくれ。彼女に見せたら、ハルキにあげるからな」
「やったー! これでポンと一緒だね!」
ハルキは嬉しそうにポンを抱きかかえる。
わしの時とは異なり、ポンはハルキの顔をペロペロと舐めていた。
「なんかわしの時とは……」
『にゃはあー』
ポンはわしの方を見て、呆れた顔をしていた。
さっきまで喜んでいたのに、本当にコロコロと態度が変わる。
ネコって思ったよりも気分屋のようだ。
――コンコン!
わしは隣の部屋の扉を軽くノックする。
「着替えてきたぞ!」
「ぐへへへ……早速、可愛いハルキくんとご対面……」
扉を開けたラブショターンと目が合うと、彼女はパチパチと何度もまばたきをした。
あまりにも似合っているのか声すら出ないようだ。
「どうじゃ! ベヒモスじいじ、ここに爆誕じゃ!」
ずんぐりとしたシルエットがベヒモスの可愛さを引き出している。
そして常時アバターとなっているからか、腹巻きと装具だけは、ベヒモス装備の上から表示されている。
「……あれ?」
ここは何か反応があると思ったが、ラブショターンは何も言ってこない。
わしが着ると、着ぐるみを無理やり着せられた遊園地の年配スタッフに見えるのか?
「なっ……」
「なっ?」
耳が遠くなったのか、わしは耳を近づける。
「なんであんたが着ているのよ! このピーじしい! お前なんて早くピーでピーしてピーしろ!」
なぜか途中から音が鳴って、何を言っているのか聞こえなかった。
ラブショターンの顔が真っ赤に染まっている。
あまりの嬉しさ興奮しているんだな。
「いやん♡」
わしはわざと胸を隠すポーズをする。
「いやん♡じゃねーだろ!」
ラブショターンはわしのベヒモス装備を無理やり脱ぎ剥がしてきた。
男に襲われるヒロインってこんな感じだろうか。
「これはハルキくんのためのアバターだ!」
「ん? ハルキのやつなのか?」
あの時わしに渡したはずだが、まさかハルキに渡したものだとは思いもしなかった。
「こういうのは保護者に渡すものでしょ!」
どうやら名前に似合わず常識があるようだ。
誤解を招かないように、祖父のわしに渡したのを勘違いしたのはわしだった。
「すまない、わしが勘違いしていたようだ」
「はぁー、わかればいいのよ。このままじゃ、私が悪者になっちゃうじゃないの……。これはハルキくんのだからね!」
部屋に戻ろうとしたら、扉の隙間からハルキとポンが覗いていた。
「あわわ……ハルキくんに嫌われる……」
かっこ悪い姿を見せてしまったようだ。
だが、わしよりもラブショターンの方があたふたとしていた。
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