19.じいじ、セクハラを疑われる
「じいじ……」
勘違いしていたわしは今すぐにでも、井戸があったら中に隠れたいぐらいだ。
「私はなんて醜態をハルキくんに見せてしまったのだろうか。もうこのまま感覚最大にして、剣で自害すればそのまま死んで――」
わしもラブショターンの方がダメージがデカそうだ。
今にも死にそうになっているラブショターンの肩に触れる。
「大丈――」
「セクハラだ!」
ああ、なぜかわしだけ冷たくないか。
「いや、わしは……」
慰めたはずなのに、昔と比べてセクハラと言われるんだな。
わしまで落ち込んできた。
「僕、じいじは似合っていると思うよ。ポンとお揃いだったし、すっごく可愛かったもん!」
優しいハルキはわしが似合ってないのかと思って慰めてくれているようだ。
だが、わしが落ち込んでいるのはセクハラと間違われたことだ。
「ねぇ、ポンもそう思うでしょ?」
『にゃ……』
ポンも困っているのか、見たこともない複雑な表情をしている。
「ほら、ポンも似合ってるって言ってるよ!」
『にゃにゃ!?』
勝手に決めつけられたことにポンは驚いている。
ハルキは周りが見えていないようだ。
優しさは時に人を傷つける。
学校に行かなくなったのも、何か小さな問題があるのだろう。
「ねぇ、僕もこれ着ていい?」
やはり気になってたのか、ハルキはベヒモス装備を指さしていた。
「えっ……いいの!?」
落ち込んでいたラブショターンは一瞬にして立ち上がり、ハルキにベヒモス装備を手渡す。
さっきまで死にそうな勢いで、落ち込んでいたのはなんだったのか……。
「ちょっと待ってね!」
ハルキはポンとともに部屋に戻り着替えてくるようだ。
「おじいさん、私も言いすぎてしまってすみません。ベヒモス装備似合って……くくく」
ラブショターンはきっと思い出し笑いをしているのだろう。
着ぐるみを着ているじいさんって、探しても中々いないからな。
だが、元気になってよかった。
「着替えてきたよー!」
ハルキはポンを抱えて、ゆっくりと扉から出てきた。
「ぐへへへへへへへ」
「おぉーー!」
つい声が出てしまうほど、ハルキのベヒモス装備は似合っていた。
わしの時とは違い、ちょこんと頭に載った耳が愛くるしく、尻尾をぴょこぴょこと動かせられる仕組みになっている。
わしが着た時は尻尾も垂れ下がり、老体のネコだったからな。
「じゅる、ハルキくん! ぜひ、写真を撮ってもいいかな?」
ラブショターンはよだれを啜ると、ハルキに写真撮影を求めてきた。
「じいじ、大丈夫?」
「あー、悪用しなければいいぞ!」
ハルキはわしに写真を撮ってもいいのか聞いてきた。
ネット社会は何があるかわからないからな。
「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!」
ラブショターンは壊れたかのように祈っている。
そこまでして写真が撮りたかったのだろう。
「おー、ハルキくん可愛いね! ハイ、視線をこっちにくれるかな! ぐへへへへ、世界一可愛いよー」
撮影アイテムを取り出すと、ハルキを中心に全方向から撮影していた。
まるでコスプレヤーの撮影会みたいだな。
だが、それと同時にラブショターンが女性なのか気になってきた。
だって、昔のわしにそっくりだからな。
わしも亡くなった妻と出会ったきっかけは、撮影会だ。
だから、推し活が生き甲斐になるのは、わしも理解している。
「ふぅ、これで死んでも悔いはないわ!」
ラブショターンはやりきったのか、イキイキとした顔をしていた。
撮影を終えると、わしはハルキとともに部屋に戻る。
「じいじ、楽しかったね!」
「わしもハルキと一緒で楽しかったぞ!」
ゲーム初日としては充分楽しめただろう。
ハルキがずっと笑顔なら、わしも嬉しくなる。
「じゃあ、お母さんにじいじと遊んだことを伝えるんだぞ」
「うん!」
わしと遊んでいたことを伝えないと、娘も心配するからな。
わしらはベッドに入ると、そのまま眠りについた。
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