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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり11人目㉝

お久しぶりです。

忙しい時期も抜けたので、とりあえず今まで通りに更新していけるかと思います。

「ぬぅ……多勢に無勢か」


 散々俺たちに辛酸を舐めさせてきたバイレンド傭兵団の総団長。

 先ほどまで纏っていた殺気が薄まり、視線が忙しなく動いている辺り、俺とカナエ、ジェーン、フリスと対峙する不利をどうこうというよりは、逃げる方向に思考がシフトしていそうだ。

 だが、ここでヤツを逃がすと後々に何があるかわからない。

 ここで確実に仕留めるべきだと直感が囁く。


「まさか、ここで逃げるなんて言わないよな? ま、逃がすつもりは無いけど」


 挑発するように声をかけてみれば、決まりが悪そうに総団長は顔を顰めた。


「主様の敵は逃しません。後の禍根となるのなら、ここで討たせていただきます」


「そんじゃ、誰がアイツの首を獲るか、競争と行こうぜぇ!」


 ジェーンの声をきっかけに、全員が総団長を討ち取るべく動き出す。


空間隔離壁ウォールイソレイション


 俺以外の3人が総団長に攻めかかったのを見て、俺はまず周囲10メートル程度の範囲を魔術の壁で覆った。

 俺が解かない限り、外部からの影響を完全にシャットアウトするとびきりのやつだ。

 万が一にも総団長を逃したくないし、タイラン侯爵の反乱の時のように、よくわからん勢力から横槍を入れられるのも勘弁だしな。

 逆に言えば、俺が解除すれば逃げる事もできるので、状況によっては解除から即時撤退も視野だ。

 とはいえ、カナエ、ジェーン、フリスの3人が挑みかかっているので、俺は後方で状況確認をしつつ魔術で援護する形がいいだろう。

 あまり同じ相手を攻める人数が多くてもやりにくいだろうし。


雷刃閃断剣(らいじんせんだんけん)・ライトニングスマッシュ!」


 特大検に紫電を纏わせ、大きく薙ぎ払う魔戦技(マジックアーツ)を使って、ジェーンが先制攻撃を仕掛けていく。

 受ければ雷によって感電すると見て、総団長は伏せるようにして一撃を躱す。

 そこへ、姿勢を低くしながら駆け寄るフリスが追撃をかける。

 彼女の右手には、見えざる刃が握られていた。


不可視の一瞥インビジブル・グランス


 駆け寄った際の勢いを乗せた見えざる刃が、戦技(アーツ)によって強化された一撃となる。

 しかし、総団長はしっかりと反応し、握っていた大剣で防御を試みた。

 あの薄っぺらい刃では、分厚い大剣とぶつかり合った時点で折れてしまうのではないか、と思った俺の心配を他所に、フリスは一撃を止まる事無く振り抜く。

 何も音が鳴らず、一撃を振り終えたフリスは後方に大きく飛び退くが、それは許さんとばかりに総団長が片手で大剣を薙ぐ。

 しかし、薙がれた大剣はその刃が殆ど失われており、ほぼ柄と鍔しか残っていない。


「バカな……俺の剣を斬っただと……!?」


 ちらりと見えた大剣の断面は恐ろしく滑らかで、鏡のようだった。

 見えざる刃の斬れ味、とんでもないな。

 多分、少しでも刃を立てる角度がズレるだけで、あの薄っぺらい短剣は折れてしまうだろうに。

 恐ろしいまでのフリスの技量の高さが垣間見えた瞬間だった。


「むん」


「ごあっ!?」


 フリスの後詰で大盾を掲げ、突進してきていたカナエの体当たりを受け、総団長は地面を転がる。

 それでもすぐに受け身を取って体勢を立て直すのは流石の一言だ。

 とはいえ、そろそろ年貢の納め時だろう。


瞬雷の閃刃ライトニングフラッシュ!」


 一撃の威力を重視するために両手で大剣、ルナチェイニを握り、我が身に雷を奔らせ、一筋の雷となって戦場を駆ける。

 大剣を振り終えて動きを止めるまでが一瞬で、遅れて確かな手応えと、全身を雷が灼く痛み。

 ぐるりと振り返ってみれば、首を失った総団長の身体がぐらりと傾き、どさりと倒れる。

 そこに遅れて、宙に舞っていたであろう、総団長の頭が落下。

 地面に転がった総団長の頭は、驚愕の表情を浮かべていた。


「よし、俺たちの、勝ちだ!」


 首を落とせば、いかに怪物じみた強さの人間とて、さすがに死んだだろう。

 とはいえ、念には念を入れて、俺は魔術で総団長の身体を跡形も無く焼く。

 首の方は討ち取った証となるので、残しておく事になる。


「当主様ー! ご無事ですかー!?」


 総団長を討ち取ったのを確認して、空間隔離壁を解いた所へ、オルフェさん率いる騎兵隊が駆け込んで来る。

 パッと見では損耗していなさそうで、全員が無事にこの戦場を乗り切ったようだ。


「ハイト、最後に無茶した」


「いだっ!? わかったから、触るな!」


 俺が自傷効果のある魔戦技を用いたのに気付いたのか、不服そうな声色でカナエが俺の脇腹を指で突く。

 全身にダメージを受けている俺は、たまらず声を上げてその場に座り込んでしまう。


「オルフェ、ハイトに治療」


「全く、当主様はどうしてこう、ご自身を労われないんですかね」


 俺たちのやり取りを見て、状況を察したのか、オルフェさんは呆れた表情で俺の側に来ると、回復祈術(きじゅつ)をかけてくれた。

 激しい損傷ではないからか、オルフェさんの回復祈術でゆっくりと全身の負傷が癒えていく。


「兵士たちの方は、損耗無しか?」


「はい。誰も欠けていません。少々の掠り傷を負った人もいますけど、概ね無傷と言っていいです。連合国の方も数的を不利を押し返して、ほぼ掃討戦に入っていますよ」


 治療を受けながら、情報共有をしてみれば、連合国側が戦局を押し返しているという。

 ここにバイレンド傭兵団の総団長並びに部隊長たちが討ち取られたと伝われば、敵は瓦解する事請け合いだ。


「誰か、総団長の首を掲げてバイレンド傭兵団が壊滅したと大声で伝達してくれ。それで今回の戦は終わる」


 騎兵隊の中で余力のありそうな者を選出し、槍の先端に総団長の首を晒した物を持たせ、バイレンド傭兵団の壊滅を喧伝させに向かわせる。

 これで連合国の士気は青天井で上がり、敵の士気はドン底だ。

 もう、負けるなんて事はあり得ないだろう。


「ふー、疲れた疲れた。戦後処理とかはあるだろうけど、おおよそこれで終わりだな」


 やる事が片付いたので、俺は行儀悪く戦場の地面に寝転がった。

 衛生的な場所ではないけど、ここまでずっと強行軍で動きっぱなしだったのだ。

 いかに身体がまだ若いとはいえ、疲れるモンは疲れる。


『我が友であろう者がだらしない。だがまあ、我も久々に暴れる事ができて満足であったぞ』


 ブルル、と軽く嘶きを上げながら、労うように鼻先を寄せてきたヴァルツの頭を撫でる。

 物言いこそ尊大だが、何だかんだで俺の事を労わってくれているようだ。

 こいつ、以外とツンデレなんだよな。


「とりあえず、俺たちは撤収だ。もうやれる事はやったからな」


 ここから敵軍に追撃をかけるのは連合国に任せておけばいい。

 あまり俺たちが戦功を上げすぎるとパワーバランスが崩れるしな。

 さっきバイレンド傭兵団の壊滅を喧伝させに行った兵士が戻ってきたら、連合国軍が戻ってくるまでは休憩だ。

 一番大変な場所を受け持って作戦を成功させたのだから、多少のサボりは許してほしい。

 しばらくして送り出した兵士が無事に戻ってきたので、とりあえず撤収用意だ、と身体を起こし、俺たちは戦場を後にするのだった。

バイレンド傭兵団との戦いはこれで一段落。

まだ伏線回収もあるので続きます。

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