ワケあり10人目⑪
2026/1/12
なんか本文がとんでもない事になってたので修正しました。
ちょっと内容を弄ってます。
話の方向性に変更はありません。
「壮観な眺めですね」
バイレンド傭兵団が国境を越え、教国内に侵入してくると予測されていた日になって、俺たちは敵を迎え撃つべく待機していた。
地形は国境付近の山岳部、絶壁の谷に通る一本の道。
谷の上に魔術師兵と弓兵を配置し、谷の一本道を抜けた先に俺たちリベルヤ家の全兵力を配置しており、寡兵で大勢を迎え撃てる構えを取っている。
広くはない道を通ろうとする敵に、上から一方的に魔術と矢を浴びせかけ、命からがら通り抜けた先に精鋭兵が待ち受ける格好だ。
総指揮官たる俺は、最初の威圧を行うために崖上に待機中。
あとはバイレンド傭兵団が現れるのを待つのみ。
エスメラルダが影と諜報部隊を動かして得た情報では、あと30分もすれば姿が見える頃合いらしい。
「私はともかく、ヴァルキア代表まで戦場に来る必要は無かったですよ?」
俺の隣で立派な葦毛の馬に跨り、手で目庇を作って崖上から景色を見下ろすヴァルキア代表に、俺は溜息を吐きたくなるのを我慢しつつ反応を返す。
絶対に勝って見せると啖呵を切った手前、俺は全力で相手を叩くために総指揮官として戦場に立つわけだが、俺以外の代表者が来る意味は薄い。
むしろ、リスクヘッジを考えるのなら俺以外はサンクリドで待ってていいくらいなのだが。
「これでもエルフの大精霊魔術師ですから、足は引っ張りませんし、自分の身の安全くらい守れますのでご心配無く」
当のヴァルキア代表は、こちらの都合などお構い無しとばかりに澄まし顔である。
近くの護衛の人から何とかしろと視線で訴えられるが、一国のトップが決めた事を覆す権限など持っていないわけで。
結局のところ、本人にその気が無い以上は俺の立場上からは強制できないのだ。
一応、王国の全権代理人という事で、立場上対等ではあるものの、さすがに年齢も経歴も浅い俺から強く文句は言えようはずもない。
「ハイト! おいでなすったぞ!!」
地平線にバイレンド傭兵団の姿が見え始め、ジェーンからお呼びがかかる。
さて、これからの威圧で上手く相手が退いてくれればいいが。
「では、私は先制をかけてきますので、勝手に出陣などしないで下さいね」
くれぐれも勝手に動かないように、とヴァルキア代表に釘を刺してから、俺は崖下から自分が見えるような位置に立ち、敵軍がある程度寄って来るのを待つ。
最初は黒い塊にしか見えなかった敵軍が、時間を経るごとにその威容を現していき、10分もする頃には屈強な傭兵たちが男女入り混じって整然と進んでくるのが見えた。
よほど自分たちに自信があるのか、斥候等は放っておらず、ただただ真っ直ぐに進んでくるのみ。
「そこの軍隊、止まれ!」
拡声の魔術で敵軍に届くように声をかけると、彼らはピタリと動きを止め、声の元である俺を見据えてくる。
大多数の視線が集まるのを感じながら、次の声かけのために大きく息を吸い込む。
「何の目的があって教国の地を踏むのか! 答えられるなら答えてみよ!」
何が目的か、と誰何の声を上げれば、僅かな沈黙が場を満たす。
無視されるか、と思った矢先に、一人の大男が単独で前に出てくる。
「我らバイレンド傭兵団! 依頼を受けた戦場に赴くために通行を許可されたし! あくまで通さぬと言うのなら、力尽くでも押し通るのみ!」
あくまで、依頼の戦場に向かうため、と建前を前面に出しての訴え。
堂々としたもので、後ろめたさなど欠片も存在しない。
とはいえ、平気で略奪を行う彼らを、はいそうですかと通すわけにもいかないのもまた事実。
わかってはいたが、交渉の余地は無しといった所か。
「堕ちる双小陽」
以前、内乱時に威圧で見せた上級魔術を同時に2つ起動。
圧倒的な熱量を持った小太陽を空中に浮かべ、いつでも撃ち出せるようにして留め置く。
「力尽くでも押し通ると言うのなら、こちらも迎撃を惜しまない! この上級魔術に焼かれたくなければ、即刻引き返せ!」
少しでも魔術に造詣のある人物ならば、この小太陽に晒された人間の末路は、容易に想像できるだろう。
相手が特に返事を返す事は無かったが、バイレンド傭兵団の面々は、ゆっくりと後退を始めた。
どうやら、こちらとやり合うのは分が悪いと悟ってくれた模様。
さすがに背中に上級魔術を撃ち込まれてはかなわん、と警戒はしているようだが、後退の足並みは綺麗に揃っている。
「……ふう。どうにか退いてくれたか。とはいえ、様子を見てまた来ないとも限らないしな。しばらく警戒は必要か。エスメラルダ!」
バイレンド傭兵団の動きを探らせるべく、エスメラルダを呼び出す。
彼女はどこからともなく姿を現すと、既に手の者に追わせている事、今回の侵攻部隊以外の人員の動きも追っている事を教えてくれたので、バイレンド傭兵団の状況についてはこのまま任せておけば大丈夫そうだ。
その他の確認を諸々と終えてから、哨戒の兵士を残してサンクリドに引き上げようとしていると、こちらをジッと見ているヴァルキア代表と目が合った。
どこか、畏れを感じているような目線である。
「リベルヤ伯爵……あのような魔術を使えるのですね」
「まあ、魔術はそれなりにできる部類だと思いますよ。結構魔力量に物を言わせてる所はありますが」
側妃様辺りから、俺の情報はある程度知ってそうなもんだけどな。
なんて思ったものの、ヴァルキア代表の表情は硬い。
「ちなみに、あの規模の魔術を何回使えますか?」
「そうですね……10発は厳しいと思いますが、6発くらいはいけると思います」
さすがにトンデモ魔力バカとはいえ、無限の魔力があるわけではないからね。
限度というものは一応ある。
まあそもそもの量が多すぎて、微増したところでわかりやしないのだが。
多分、日常的に魔術は使ってるし、何だかんだで大量消費する事もあるから、去年より増えてはいると思うけども。
「なるほど……あの子が警告してくるはずですね。戦略的にリベルヤ伯爵を送り込まれたら、私たちは降伏する他ありませんから」
1人で納得したように苦笑いを浮かべるヴァルキア代表。
多分、彼女の言うあの子というのは側妃様の事だろう。
「敵になったらそういう未来もあるかもしれませんが、今の陛下ならその心配は無いですし、急に侵略戦争に舵を切ったら殴ってでも黙らせますよ。私も好き好んで人間兵器扱いはされたくないですから。まあ連合国側がよほど倫理に悖る事をしなければ、そんな未来にはなりませんよ」
「そうですね。リアムルド王国とは、良き隣人でありたいものです」
ちょっとだけ微妙な空気になりながらも、俺たちは1度サンクリドへ引き上げるのだった。
ちょっとだけ読者の皆さんに質問があります。
このワケありと平行してもう1作品連載を行うとしたら、皆さんは見たいですか?
当然、そうなると1つの作品の更新速度は今の半分くらいになってしまうのですが。
一応、構想というか雛型はもう出来上がっていて、割とお待たせせずに連載は開始できる状態なのですが、ストックはありません。
コメントで皆さんのご意見を聞かせて頂ければと思います。
一応、ざっくり説明するとワケありとは同じ世界観で、時間軸で言うと過去のお話になります。
新作の主人公は既に伏線として、ワケありにも一度登場していたりします。
こっちよりはシリアス度強めな作品になるかなーと思いますが、結構バチバチにバトルするタイプのお話ですね。




