2 + 2 = 5
盾を構えたタニグチさんとオオモリさんは階段の足場が悪い状態でも足を開き腰を落としてしっかりと耐えている。
盾の2人で押さえてもらっているうちに1体のゾンビの頭に向けてランタンハンガーを突き刺す。
「燕三条万歳っ!」
倒れ込むゾンビに引っ張られないように急いでランタンハンガーを引き抜き、2人の後ろに隠れる。
「う゛ぁぁんぇぇぇぇえええん」
「う゛ぁんぉぉぃぃいい」
「ぃいぅうう゛ぁぁぁあああ」
1体減らしたくらいではゾンビの圧は減らず、ゾンビの前に突き出された手が邪魔をする。
「くっそ!数が多くて押し返せない」
「押さえてる間にどうにか数を減らしてくれ!」
前列2人が必死にゾンビ達にジリジリと押されながら叫ぶように話す。
「おおっ!」
俺は答えるように叫びながらゾンビの頭に向かってランタンハンガーを突き入れた。
これで2体、はじめに倒れた3体も階段周りで這いずり、こちらに向かって両手を突き出し白濁した両目を剥いて鳴き続けている。
「ぃぃいいぅうぁぁぃぃいい」
「あぁぇぇえぉんぇええう゛ぁぅ」
盾と盾の隙間からランタンハンガーを突き出しさらに1体のゾンビを仕留める。
「うわわ!わぁぁ!」
這い寄ってくるゾンビに足を取られタニグチさんが階段に尻餅をつく。
立っているゾンビのうち残り2体が倒れるゾンビを踏みつけてタニグチさんが倒れた穴に殺到しようとする。
「うぉおおおおっ!」
オオモリさんが2体のゾンビに向けて思い切りジュラルミンの盾を叩きつける。
ジュラルミンの盾を使ったシールドバッシュ、腰を落として前方に向けて盾を使い全身を使ったチャージだ。
たたらを踏んだ2体のゾンビ、そのうちタニグチさんに近いゾンビに向けてランタンハンガーを突き入れる。
オオモリさんの方を横目で見るとたたらを踏むゾンビに向け、再度シールドバッシュを決めて転ばせているところだった。
タニグチさんは足下に這い寄るゾンビに向けて足蹴をしながら立ち上がっていた。
床に転がり不気味に鳴くゾンビに向けてとどめを刺していく。
「お待たせしましたぁぁ!」
終わった頃になってスズキさんが階段を駆け下りてくる。
後ろには武器を持った数人の人間とを連れている。
「遅いよー」「スズキさーん!」
タニグチさんとオオモリさんがそれぞれにスズキさんに話しかける。
「スズキさん、上は大丈夫そう?」
近くまで駆け寄ってくるスズキさんに尋ねる。
「間に合わなかったです、すみませぇん」
スズキさんが両手を合わせながら続ける。
「上の状況は変わらないみたいです、ただゾンビの発生は5階と7階ばっかりみたいでした」
「俺達はこのまま5階の巡回続けるのかな?なんか聞いてる?」
「はいっ!追加の人員はエントランス周りの警備で、負傷がないならさっきのメンバーで再度、5階の見回りをして欲しいって事でしたー!」
「りょーかーい、タニグチさんオオモリさん聞こえてましたか?」
「おぅ」「・・・遺憾ながら」
4人で隊列を組み廊下を進む。
先程、ゾンビが出てきた部屋まで進むと5部屋のドアが破られていた。
━━━ドンッドンドン━━━
そして一つの部屋からは未だにゾンビらしい者がドアを叩き続けている。
「タニグチさんオオモリさんでドアを破って確認しよう」
「はい!」「了解です」
2人でドアを蹴破って貰うと中には男性のゾンビが1体いた。
盾で押し込んで貰いランタンハンガーで仕留める。
「ふぅー」
「1体2体なら楽なんですけどね」
大きく息を吐くとオオモリさんが話しかけてくる。
「ですねー」
ランタンハンガーをゾンビの衣類で拭いながら返事をする。
隊列を組み直して廊下を進む。
船首側に着くと廊下の周りに2人警備に立っていた。
「お疲れさまです」
声をかけると安心したのかほっとした顔をして話しかけてきた。
「お疲れさまです!見回りですか!」
「そうです、異常はないですか?」
「今のところ階段周りは異常ありませんね」
「ありがとうございます」
会釈して別れ見回りを続ける、階段から離れ船首側からエントランス側に進むとドアの中から悲鳴が聞こえる。
「いやぁぁぁっ!あなたぁぁどうして!?誰かっ誰か!助けてぇ あっ!」
直ぐ近くのドアに走り寄りドアを叩くが反応は無い。
ドアに耳を当てると息が漏れるような「あっあっ」っという声が聞こえていたがすぐに聞こえなくなり「ぴちゃ、ぴちゃ」と水音に似た音が断続的に続いていた。
タニグチさんとオオモリさんに目配せをしてドアを蹴破って貰う。
慎重に中に入ると50近い男性が同じくらいの年の女性に覆い被さり、その腹に噛みつき、赤黒い染みを床にまき散らしているところだった。
四足獣のような動きで貪っていたゾンビが、こちらに気付いたのか首だけをこちらに向けて鳴き声をあげる。
「ぁぁあぃぃいあぇぅぇぃいあぅう」
タニグチさんとオオモリさんが盾を構えゾンビを押し込む。
壁に叩きつけ動きが止まる。
そこにランタンハンガーを眼窩に向けて突き入れ、ゾンビを仕留める。
床に倒れていた女性がゆっくりと生きた人間とは違う不自然な動きで立ち上がり目玉をぐるり反転させ白目を剥くと、こちらに向けて迫ってくる。
「う゛ぃぃいいいあああぁぁ」
オオモリさんが盾を構えて受け止める。
ゾンビは破れた腹部から腸をこぼしながら両手を振り乱し右に左にと激しく動く。
「えぇぇえぅううぃぃいああ」
横からタニグチさんが回り込み盾2枚で挟み込み動きを止める。
そこにランタンハンガーを突き入れ仕留めた。
その後も数体のゾンビが発生するたびに処理を続ける。
エントランスに戻り念のため同じ場所を回るが1度目には異常の無かった部屋にも2週目ではゾンビが発生していた。
「それにしても切りが無いな」
そんな言葉が口から漏れる。
「そうですね、次から次に・・・」
スズキさんも警戒を続け疲れてきているようだ。
「まだ行けますけど一度休憩を取らないと神経が持たないっすねー」
前を歩くタニグチさんもボヤくように言う。
「そうだなー、この1周が終わったらエントランスで休憩を入れようか」
ゾンビを数体、片付けてエントランスに戻る。
狭い廊下を抜け、5階から7階まで吹き抜けた広い空間のエントランスに入ると大きく息をつく。
階段近くのソファーに座り飲み物の自販機を視線を巡らせて探す。
見張りに立っていた人間も交代をしているようだ。
何人かが6階に向けて階段を上っていた。
「ぁぁぁあああまぁぁ」
突然、2人で見張りに立っていた1人がうずくまると呻き出した。
隣に立っていた見張りが慌てて叫ぶように話しかけながら横に屈み込む。
「おいっ!大丈夫か?おいっ!」
横に立った彼には見えていないが、こちらからは見張りの目玉が白目を剥くのがはっきりと見えていた。
「おいっ!そいつはもう駄目だ離れろ!」
俺は叫ぶように男に言うとランタンハンガーを持って走り出す。
「えっ?」
見張りの男は間の抜けた声を上げ、こちらを向く、その瞬間にうずくまっていた男はゾンビになると無防備になった見張りの首に噛みついた。
「くそっ!遅かったか」
走る勢いのまま鉄芯入りのブーツでゾンビの首を蹴りつける。
ゾンビも噛みつかれた男もバランスを崩し床に倒れ込む。
倒れながらもゾンビは首に噛みついたまま離さない。
闘犬のように噛みつき首を振るゾンビの耳穴に向けてランタンハンガーを気合いとともに突き入れる。
「燕三条万歳っ!」
素早くランタンハンガーを赤黒い糸とともに引き抜きながら構え直し、噛みつかれた見張りの男を見ているとすぐに呻き声を漏らし始めた。
「ぅぅぇええんう゛ぁぁあぁん」
動き出す前に、白目を剥いた眼窩に向けてランタンハンガーを突き入れる。
頭蓋の裏に当たり穂先が止まる。
泥に棒を突き入れてかき混ぜるような感触を感じながら脳漿をかき混ぜランタンハンガーを引き抜く。
後ろを振り向くが異常は無いようだ。
すぐにスズキさんに指示を出す。
「オリベさんに報告を!見張りより1体ゾンビ発生、さらに見張り1名感染、見張りの代わりを」
「えぇえぇ?はっはい!」
スズキさんは真っ青な顔をしながらも6階に向けて走り出す。
「タニグチさんオオモリさん代わりがくるまで見張りしますよ」
「・・・うぃっす」「・・・了解です」
「え?なんか俺おかしい?」
「いやおかしくないです」
「いや、すげぇっす」
3人で見張りを続けていると直ぐにスズキさんが見張りの交代を連れて戻ってくる。
「戻りました!」
「ご苦労さま」
「ヤマダさんオリベさんが一旦巡回も交代だそうでした!」
「おお!」「やった!」
タニグチさんとオオモリさんが小さく声を漏らしていた。
「はーい、よし戻ろうか」
「あ!それとヤマダさんオリベさんが巡回の報告をして欲しいそうでした」
「あーわかりましたー」
見張りの交代と巡回の交代の人への説明を3人に任せてオリベさんの所に戻る。
階段を6階に戻るとエントランスに近い場所でオリベさんが立って待っていた。
「お待たせしました」
「いえ、私はここで指示を出していますので」
周りには警備や巡回をしていた人間が座り込み休憩をしているようだった。




