I Might Be Wrong
廊下を見回すがゾンビはいないようだ。
部屋から見える船首側の階段付近には武器を持った人間が集まり防衛している。
エントランスの方に小走りに向かう。
エントランスではオリベさんの前に3人、集まり指示を受けていた。
スズキさんとタニグチさんとオオモリさんだ。
「もどりました」
「うん、この3人と5階の確認を頼むわ」
「わかりました、よろしくお願いします」
そう言いながら顔を合わせると3人はタニグチさんスズキさんオオモリさんだった。
「誰かと思ったら!よろしくお願いします」
「あれ?イチゴさんは留守番ですか?」
「ヤマダさんでしたか!」
知っている顔ばかりだった。
タニグチさんとオオモリさんが盾でスズキさんが弓に俺が槍かバランスが良さそうだ。
挨拶や隊列陣形の打ち合わせも程々に7階への警戒が続くエントランスの階段から5階へと下りて周りを確認してつぶやく。
「エントランス周りは大丈夫そうだな」
「そうですね」
スズキさんが後ろから返事をくれる。
盾持ちのタニグチさんとオオモリさんが前列を進み、その直ぐ後ろに俺が続き少し離れてスズキさんがついてくる。
前列の2人にどこからまわるのかを伝える。
「まずは廊下を船首側にまわろう」
「そうですね」
前列2人も「わかった」と言い客室が集まる船首側へ。
ひらけた空間のエントランスから、肩が触れ合わずにすれ違える程の幅しかない廊下を進む。
廊下には人影もなく船の運行音だけが聞こえていた。
「・・・静かですね」
スズキさんが後方を警戒しながらぽつりと言った。
「そうですね」
そう返すが静けさと思い出したようにときおり傾ぐ船の揺れを不気味に感じる。
「いやぁぁぁっ あっ」
通り過ぎた客室のドアから寸切れになった女の悲鳴が聞こえた。
「おいっ!」
そう一言、発すると前列2人も頷き返す。
急いで悲鳴の聞こえたドアまで戻る。
ドアを叩きながら声をかける。
「大丈夫ですか!」
しばらく間が空き激しくドアを叩く音だけが返ってくる。
━━━ドンドンドンッ━━━
「遅かったか!ドアを壊そう!タニグチさんオオモリさんお願いします!」
そう2人に言い放つと周囲のドアからも勢いよくドアを叩く音が重なって聞こえだした。
━━━ドンッドンドン━━━
━━━ドンドンドンッ━━━
━━━ドンドンドンドン━━━
━━━ドンドンドンドンッ━━━
「え?」
一瞬何が起こっているのかわからず間抜けな声が口から漏れた。
振り返るとスズキさんも青い顔をして目を見開いている。
ドアに近付き準備していたタニグチさんオオモリさんもこちらを振り返り青い顔をしていた。
何部屋からドアを叩かれているのか正確に把握できないが、一部屋や二部屋にゾンビが発生しているわけじゃないだろう。
ドアを叩く音は徐々に増えている。
ゾンビがドアを破って出てくるのは時間の問題だ。
そこまで考え自分の顔からも血の気が引いていくのを感じながらみんなに指示を出す。
「おい!一旦退いて報告するぞ!」
「はいっ!」
タニグチさんと俺で後列を守り、スズキさんは真ん中、オオモリさんを先頭にしてエントランス方向に後退りする。
いつゾンビが飛び出してくるかわからない状況に怯え固まりそうな身体を動かしながらジリジリと下がる。
━━━ドンドンドンッ━━━
━━━ドンドンッバンッ━━━
数歩進んだところで一つのドアが弾け飛んだ。
中からは2体のゾンビがドアを破った勢いで廊下の壁にぶつかりながら、こちらに向かい2体もつれるように駆け寄ってくる。
「う゛ぁぁっぁぃぃぁぃぇぇぉぉお」
「ああぁぁぅぅううぃぇぇええ」
スズキさんが1体のゾンビの頭にクロスボウを放つ。
俺とタニグチさんの間を矢は通り短く風切り音が通り過ぎ向かって右側にいたゾンビの眼窩に吸い込まれるように刺さる。
それでもゾンビは動きを止めない。
残り2メートル程まで近付いてくる。
「こっちにも出た!」
先頭を進んでいたオオモリさんがこちらに向けて叫ぶ。
「止めれるか!?」
「3体!厳しい!」
「タニグチさんスズキさん前をっ!」
そう怒鳴りながら迫るゾンビの頭にランタンハンガーを突き入れゾンビの眼窩にランタンハンガーを置き去りに隣のゾンビに渾身の前蹴りを叩き込む。
両手は突き出したままゾンビがたたらを踏む、左手でゾンビの手を打ち払い眼窩に突き刺さる矢を掴み奥に押し込む。
矢を掴む俺の腕に噛みつこうとするゾンビの下顎をプロテクター入りのグローブを装着した掌で思いっきり引き倒す。
ブチっと嫌な音を立てながら頭が顎に引きずられ倒れる。
矢で脳漿をかき混ぜ、後ろを振り向くと3体のゾンビをタニグチさんオオモリさんが腰を落として押し返すところだった。
スズキさんはクロスボウを片手に回りこもうとしているが視線を外さないゾンビがいて上手く射線を確保出来ていないようだ。
タニグチさんオオモリさんはゾンビを押し返すと警棒を片手で振り伸展させるとゾンビの頭に向けて振り抜く。
1発当てただけではゾンビの動きに変化などなく、両手を突き出して再度2人に向けて襲いかかってくる。
俺はその間にランタンハンガーを回収してタイミングを計りながら盾の横に回りゾンビの耳穴にランタンハンガーを突き入れる。
2人が盾でゾンビを押し返すのに合わせて2人の後ろに隠れる。
「後ろ2体は終わりました」
「さすが!あと2体もお願いします」
オオモリさんが言葉少なく返す。
「スズキさん後方の警戒お願いします」
「はい!」
盾の後ろに隠れながら押し返すタイミングで1体ずつ仕留め、2体目もほどなく倒したが慌ててスズキさんが報告してくる。
「後方よりゾンビ1、2!えっ?いや多数!ゾンビ多数ですっ!」
その声に振り向くと複数のドアが破られゾンビがこちらに向けて叫ぶところだった。
「ぉぉおう゛ぅぅぁぁあう゛ぁぁ」
「ぁしぃぃう゛ぁぃぃえぉおおしぃぃ」
「ぉぉぅぅぁぁがぁぁぃぃえぁぁぅ」
見える限り6体以上、4人で相手するには場所が悪い。
「おい!階段まで逃げるぞ!」
「はい!」「はい!」「はい!」
エントランスまで走りソファーを引きずる。
俺がソファーを持ったのを見てタニグチさんとオオモリさんも意図を組んでくれ3つのソファーを階段前に無造作に重ね簡易なバリケードを即席に作る。
タニグチさんオオモリさんに前を頼みゾンビに備える。
「スズキさんオリベさんに報告行ってきて!」
「はい!」
廊下からゾンビが一斉に飛び出してくる。
1、2、3・・・8体のゾンビがこちらに向けて駆け寄ってくる。
階段の幅は2メートル程で船の揺れに対するものか手すりの下は金属が複雑に絡まるようなデザインだ。
階段からの侵入さえ防げば何とか持つだろう。
ゾンビが走り寄ってきてソファーに足を取られ3体、階段に下顎を打ち付けるように転んだ。
その後ろからやってきたゾンビ達は倒れているゾンビを踏み越え階段に群がる。




