Paranoid Android
自動販売機コーナーから出るとシブヤさんが入れ替わりに入ってくるところだった。
「おう、お前らも酒か?」
「違いますこれです」
「これでーす!」
そう言ってイチゴと2人手に持った飲み物を見せる。
「おぉう、こんなとこで飲めるビールとか、そうそう無いから飲んどかないと損だぞ?」
「キンキンのビールっ!」
「ああ、しかも発泡酒じゃない銀色の缶だぞ?」
「・・・ゴクリっ」「ごくり」
「まっ、ただ酔っぱらうほどは飲むなよ?
気付いてるかも知れないけどゾンビに感染というか、発症する人間が多いみたいだ。
聞いた限りじゃ船内でゾンビ化したのは体調が悪かった奴ばっかりみたいだ」
話しながらもシブヤさんはアルコール飲料の自販機に硬貨を投入してビールやおつまみを購入して、ビール2缶を片手で持ち脇におつまみを挟む。
「ゾンビに噛まれていたとかじゃないんですか?」
「ああ、発症した奴は噛み跡は見つかってないらしいな」
「え?じゃあどうやって感染したんですか?」
「そこだよなー?わっかんねーけど気を付けろよ!」
シブヤさんはさらにアイスを買うとビールと反対の手で持つと部屋の方に歩いて行く。
「マサシ、私もアイス買う」
「ああ、うん、どうぞ」
イチゴはチョコミントアイスを買うと包みを開けて美味しそうにかじりだすと、こちらにアイスを差し出す。
「一口食べる?」
「うん」
そう言って一口貰うとミントの清涼感にチョコの香ばしさアイスの甘味と複雑な味わいを感じる。
「なかなかチョコミント食べないけど美味しいな」
「ふふーん!マサシはチョコミントがわかるんだね」
なぜかご機嫌になるイチゴとナカムラさんの分のアイスも買い5階へと戻る。
5階に着く頃にはエントランスホールに散らばったゾンビの片付けも終わっていた。
人気の無くなったエントランスのソファーにカワカミさんとナカムラさんが座って何か話している。
「事後処理も終わりましたか?」
そう話しかけながらナカムラさんにメロンソーダとショートケーキ味のアイスを手渡す。
「ああ、とりあえず片付けは終わりだね」
「わーアイスだ!ありがとうございます」
ナカムラさんは嬉しそうにアイスを受け取るとメロンソーダをカワカミさんに渡す。
「それにしてもゾンビ化する人がハウステンボスの時に比べたら多いですね?」
カワカミさんも苦い表情で答える。
「そうだね、一日で2件、ハウステンボスに避難していた時を考えると比べものにならない数だよ」
「感染者の確認はしてなかったんですか?」
「各避難所で確認して報告していたんだけどね」
「うーん」「うーん?」
「まぁまぁ悩んでも仕方が無い。
今夜は保安の歩哨も増員したし、ゆっくり休んで明日以降に備えよう」
「はい」「はーい」
カワカミさん達も部屋の方に戻っていった。
俺たちも乾燥が終わった洗濯物を持って部屋に戻ろうと歩き出す。
僅かに揺れる船の中は人気が無く不気味で、いつ横合いから発症した人間が出てきてもおかしくはない。
そう思いながら階段を上ると6階のエントランスには保安をしている武器を持った2人組が立っていた。
軽く挨拶して通り過ぎる。
部屋に戻りベッドに腰掛け大きく息を吐く。
「疲れたねー」
イチゴが洗濯物を直しながら話し出す。
俺も洗濯物をザックに直しながら答える。
「ああ、疲れたなーそろそろ寝ようか」
「うん」
刀にクッキングペーパーを使って血脂を拭い手入れする。
ランタンハンガーやナタも手入れして手の届く場所に置いてベッドに横になる。
イチゴもストリンガーを使い弓から弦を外すが、ストリンガーは付けたまま手の届く場所に置いてベッドに入ってきた。
何かあってもすぐ行動出来るように明かりは落とさず目をつぶった。
イチゴは真横で身体をくっつけ寝息をたてている。
俺もゆっくりと意識を手放し眠りについた。
夜半、ドアを叩く音で目が覚めた。
━━━ドンドンドンッ━━━
「助けてっ!!助けてっ!」
━━━ドンドンドンッ━━━
その音に気付いて飛び起きる。
イチゴも起きたらしく急いで準備している。
ドア越しに声をかける。
「どうしたっ!何かあったのか!?」
ドアを開けるとメグミちゃんが1人でドアの前にいた。
その後方2メートルには女性のゾンビが迫っている。
メグミちゃんを部屋の中に押し込めドア枠に手をかけ力の限りゾンビの胸の辺りに前蹴りを見舞う。
ゾンビは床に倒れ直ぐにも起き出そうとするがランタンハンガーを構えて右の眼窩に向けて突き入れる。
「燕三条万歳っ!」
そのままゾンビの頭越しに廊下の奥を見やると逼迫した雰囲気でエントランスの方が騒がしい。
痙攣するゾンビからランタンハンガーを赤黒い糸とともに引き抜いて、ゾンビの衣服で穂先を拭い部屋に戻る。
ドアを閉めて中を見るとアーチェリーを片手のイチゴに、メグミちゃんが抱きついているところだった。




