真実
幾つかの支流を流れ、本流へと辿り着く。ノクターンの情報網では暗殺者が雇われた形跡はない。それに暗殺者ならば、人目の付きにくい場所で行動を起こすはずだ。だとするとイブレオ男爵絡みの者か…。騎士や冒険者などが、橋を落とした犯人だと推測する、
もうここには、川で漁業をする者も現れ始めた。となれば…町も近いのか?
しかし何度考えても答えが見つからない。オーゼスフェスタ大公は、ギュレン派のイブレオ男爵の三女エルダリスと、私を結婚させたい。しかし、その過程には、一切手を出させない。何が正解で何が不正解なのか、まったくわからないわね…。
船着き場をいくつか通り過ぎ、エミリアは町と反対方向の森の中を選択する。
***** ***** ***** ***** *****
怪我を治し、火をおこし…野営の準備をする。それも魔法で…だ。それに悪漢から、私を連れ、船を漕ぎ、逃げる…普通の女の子には、到底無理だ。そもそも、なぜ? このエミリアは、逃げるのか? エミリアも何者かから逃げているのならば、話はわかる。だとしたら…私を置いて一人で逃げるはず。つまりは、私を守っているのか? しかし、なぜ…私が狙われていると知っているのか?
聞くに聞けないまま、二人は抱き合って眠る。理由は寒いからだ。でも寒いならば…なぜ裸なのだろうか? もう…わけがわからない。何処まで逃げても、いつか…誰かに殺されるのだろう。それだけは、わかっている。逃げられるはずもないのだ。何から? 知らないわ。何も知らないまま、殺さるのだろう。だからかな? こんな非現実的な…エミリアという…名前しか知らない…女の子の体温が匂いが…私を幸せにさせるのだ。
熟睡している無防備なエミリアの裸抱きしめると、自分の胸になにか硬い物が当たった。それはペンダント…。
「これは…。デリマリート家の紋章…。はっ!? ま、まさか…エミリアって…。エミリア・デリマリート?? なんで? なんで? もしかして…私を助けに来てくれたの?」
点と点が線になる。エミリア…。ありがとう…。ここ最近、眠れなかったエルダリスは、エミリアの寝息に合わせるように…ゆっくりと眠りについた。
***** ***** ***** ***** *****
殺意。エミリアのまぶたがゆっくりと開かれた。目に映るのは、素朴だが優しい寝顔の少女。エミリアはエルダリスを起こさぬように、そっと起き上がる。
そこには少女の裸を見て興奮するゴミどもが六匹ほど立っていた。
「こりゃ…お楽しみの……グフェッ!?」
エミリアは”魔導の母の指輪”の指輪に封じておいた2つの魔法を解放した。一つは骨折した左腕の代わりに弓を持たせるための”幻腕”だ。幻腕は、腕を増やす魔法であり、今は、左の脇腹から腕が生えて弓を握っている。二つ目は”弓矢”だ。弓矢は、魔法の弓矢を召喚する。それを詠唱無しで瞬時に顕現でき、セットされた矢をゴミが話し終える前に射ったのだ。
ゴミ共が反応できたのは、四匹目が死んだときだ。残り二匹が剣を抜き構えると、エミリアは弓を下ろした。
「へへっ…。どうした? 今更…降参しても…無駄だぜ? こっちは仲間が4人も殺されてんだからなっ!!」
「エ、エミリア!?」流石に物騒な音と声に気づき起きたエルダリスだが、なぜか弓を下ろしてしまったエミリアを心配する。
「困ったわね。ここで…ノクターンを紹介するつもりは無かったのに…」
犬亜人のマータンと兎亜人のキバスが、残り二人の心臓を抜き出し殺し終えたところだった。




