ファースト・コンタクト
二頭立ての幌馬車は、8人乗りだ。商業都市オハロまで比較的近いといえども、やはり荷物が少ないのは、不自然だったのだろうか? 中年の男性が話しかけてきた。
「お嬢ちゃんは、手荷物もないのかね?」
「うん? あぁ、荷物ね。買い付けた穀物と一緒に運んでもらうの」
「ほう? 買い付けたぁ、そこそこのお嬢様だったか、すまねぇな」
「お嬢様ってほどじゃないよ。この服装だもんね。見てわかるでしょ?」
そこそこのお嬢ちゃんか…。馬鹿にされても気にしない。笑顔で乗り切った。するとエルダリスは、私には話しかけてこないでぇと言わんばかりに、狸寝入りを始めたのだ。
まぁ、この中年男性が声をかけてきたのも、 犬亜人のマータンが「馬車、くっさ!」と異様な雰囲気を醸し出しながら呟いていたのが原因だろう。少しでも場の雰囲気を良くしようとしていたのだ。
まったく…このワンコロは…。
出発までの時間が近づくと、業者らしき人物が、チケットの確認と説明に来た。
「えぇ…本日の御者兼護衛を勤めさせて頂きます。ハロウズでございます。今回は、二頭立ての幌馬車が4台での運行となり、比較的安全な運行になるでしょう」
今回の馬車は国が運営する、ちょっとだけ高めな馬車であり、業者には国が銃を扱う許可を出しているのだ。銃の欠点と言えば、装弾のタイムラグだが、銃を扱う人数が多ければ多いほど、互いにフォローが出来るため安全になるのだ。
「全行程、5日間ですが、途中3度の野営が入ります。水と食料はご自身でご用意ください。また火に関しては、こちらでご用意いたします。あとは…そうですね。夜が冷えますので、無料で毛布を貸し出しますのでご利用ください。出発まで、あと30分です。水と食料は、チケット販売所にもありますので、ご利用ください」
「そっか。水と食料ね。買ってなかったわ」
私が買いに行くのを見て、狸寝入りしていたエルダリスと、騎士のニーズも、チケット販売所に向かった。なんと犬亜人のマータンは、ちゃんと用意していたのである。
「だっさ…」
チケット販売所で列んでいると、エルダリスから話しかけられた。
「こんにちは。私はエルダリス。同い年ぐらいかしら?」
エルダリスが、家名を名乗らなかったので、私も簡単な自己紹介にした。
「こんにちは。私はエミリアよ。13歳よ」
「まぁ、偶然ね。私も13歳よ。あっ…エミリア?」
「うん? 私の名前がどうかしたかしら? それほど珍しい名前じゃないわよ?」
「あっ…。うん、ごめんなさい。何でも無いわ。それより、馬車隣りに座っても良い?」
「それならば、私と席を交換しましょう。私はニーズという者です。商業都市オハロには帰省するところです」
二人は突然の申し出に驚いたが、きっちりとお礼を言った。
どう? 中々の演技力でしょ?




