快進撃 その3
蛮族の第二部隊を打ち破った…この功績は大きい。史上初の快挙だ。しかし残る第三部隊に対して、質も量も傭兵部隊は劣っていた。
「くっ。せめてホヴァイザかレギの部隊が参戦してくれれば…」
フレンガーは撤退の判断に躊躇しているみたいね。愚かな…ここまでの功績で判断を鈍らせるなど…。でも、こっちには好都合なのよ。
ここまでの戦いで、まともな蛮族がまともな魔法を使っていない…。魔法を使えないならば、バレードの求める魔法の書は、蛮族の街にある…。
ホモンクルスなので体力的には問題ないが、この傭兵たちがどこまで持ちこたえられるか…。
その矢先、冒険者中心の傭兵団が撤退を始める。
「暁の傭兵団、防衛ラインまで撤退だっ!!」
まずいわ…このままでは、蛮族の第三部隊との開戦が…。
同じことを考えたのか、フェレクターは小規模爆破の魔法を敵部隊の中心に発動させ、敵の移動を抑制する…。爆発の威力よりも…砂埃による目隠しが目的だ。
浮遊する三本の魔槍と共に、敵陣に突っ込む。
動揺している敵を、砂埃で視界を遮られている敵を、戦闘態勢に入る前の敵を、次々と4本の槍で貫いていく。
早く…出てきてっ!! 敵の幹部クラスと戦わなければ、魔法の書の有無はわからないのにっ!
やがて不意打ちの効果も薄れ、私は四方を蛮族に囲まれる。どうにか魔槍のおかげで、複数の的にも対処できるが、そろそろ限界だろう…。背後からの攻撃は、背中の腕により、短剣を投擲して対応している。召喚した腕には、専用武器の制約はないようだ。
最悪なことに…魔法の継続限界時間になり、魔槍も腕も、腕技UPも…全ての効果が消えた…。
蛮族の同時攻撃により、傷がどんどん増えていく。なんて単純なミスをしてしまったの…。
右肩に石斧が食い込む…。左足が切り払われ切断され、地面に倒れてしまう。
「おい、あのお嬢ちゃんを助けられないのかっ!!」
「馬鹿、無理だ。死にたいのかっ!!」
くっ…。なんてこと…。試験管の中から遠隔操作しているため死ぬことはないが、貴重なホモンクルスの体をここで失うのは厳しい…。
そのとき光の閃光が、蛮族の部隊を切り抜いた…。
「あれは…王都リゼンの防衛戦に参加しているはずの…サシエスッ!?」傭兵の誰かが叫ぶ。
金色の鎧を纏った黒髪の少女が戦場に現れたことにより、蛮族は撤退を開始した。
私は、蛮族が後退していくのを…ただじっと見ているしかできなかった…。
「あなたは…ホモンクルス!? 彼の他に…いたなんて…」
俺を見下すように立ち金色の鎧を纏った黒髪の少女は呟いたのだった。




